カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 不妊

つらいホルモン剤、アトピーの悪化を押さえて体外受精で妊娠(39歳出産)

概要

重度のアトピー性皮膚炎があり、身体の素体的には数々の困難がありましたが、ご本人の努力と鍼灸で不妊を乗り越え、妊娠中も頻度多めに手入れすることで無事の39歳出産となりました。

(この症例の弁証論治→重度のアトピー、ホルモン剤での不調、体外受精での妊娠出産
【case:0008】

ご相談内容

『36歳で結婚してから妊娠希望して2年38歳になりました。卵管狭窄といわれたり、大丈夫と言われたりしていますが、去年、加藤レディースクリニックにて体外受精に初挑戦してみました。ホルモン剤の服用で体調が低下し、アトピーも急激に悪化してしまいました。内側からじくじくする感じです。

子供の頃からアトピーはひどく、脱ステロイドを試して入院したこともあります。断食道場にいったこともあります。アトピーの状態は自分としては落ち着いていると思うのですが、不妊治療を進めることでアトピーが再度悪化して不安です。

こんなに体調が悪いままで妊娠できるのでしょうか? そして妊娠しても元気な赤ちゃんを産める自信がありません。』

東洋医学的診立て

お身体を拝見すると、10代からはじまった、子宮内膜症や筋腫によって下焦(骨盤内臓器のある身体の部位)を中心として、かなり瘀血(おけつ)と言われる固定的な不要物がたまり痛みや辛さの原因となっているようですね。

子宮内膜症による痛みは出産によって軽減することが多くありますが、妊娠中からの入院、出産は、ご自身の生命力そのものを落としてしまう状況になり、身体の回復がなかなかなされず、小さいお子さんの子育ても加わり、より痛みなどが辛い状況となってしまったと思われます。

身体の手入れをして、生命力を賦活させ、過ごしやすいお身体を作っていきましょう。

ホルモン剤の服用で体調の悪化が続く中、がんばって体外受精に挑戦したのに結果がでずとても残念でしたね。

Nさんのお身体を拝見すると、もともとの生命の器の小ささがあり、アトピー性皮膚炎とつきあう中で東洋医学の世界で言うところの『腎』に強く負担をかけていたんだと思います。不妊治療ではこの『腎』の力が大切で、腎に負担をかけながらもホルモン剤の投与をし、腎気を奮い立たせ排卵を促したり周期を整えたりしています。負担となっても不妊治療が成立し赤ちゃんと巡り会える確率が高いからこそ行う治療ですが、Nさんにはとてもきつい治療となってしまいましたね。

今後の妊娠のために、この『腎』の力の積み増しをしていきましょう。そして受精卵が着床し子宮でしっかり成長していけるような母胎作りをしていきましょうね。不妊治療に負けない身体作り、妊娠に充分耐えうる身体作りを目指します。一緒に頑張って行きましょうね。

東洋医学的弁証論治
弁証:脾腎両虚
論治:補腎健脾
治療方針:ホルモン剤の投与に耐えるように腎気をたてることがまず第一。IVF-ETによって、胚を戻した後は、腎陽を中心にたて、子宮を暖かく充実した場所となるようにし、着床を助け、初期の流産を防ぎます。妊娠が継続できたら、脾腎の器をたて、母体の充実、出産への備えを出来るだけしていきます。遠方からの来院ですが、週に2日の治療と、ご自宅での毎日の施灸を指導。