カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 40代 不妊 流産

バセドー病(甲状腺疾患)及び子宮筋腫、内膜症で体外受精での妊娠、出産(42歳出産)

東洋医学的診立て

不妊治療をし、体外受精にて妊娠するものの化学流産となることが多く、逆に動悸疲労感が強くなり持病が再発してしまうということを繰り返していますね。不妊治療や、妊娠の成立そのものが、ご自身の素体に強く負担となるためだと思われます。

お身体を拝見すると、身体の中心を流れ、妊娠ー出産にも大きくかかわる任脉という経絡のゆるみが明瞭です。また全身のくくりとされる臍周辺の弱りもみうけられます。臍、任脉を中心に、脉状や、舌の歯痕胖大、背部腧穴のゆるみ力のなさなど、全身のパワー不足がとても目立ちます。

妊娠そのものは体外受精の力を借りてちゃんと成立していますから、女子胞力はあると思います。ただ、その女子胞を支える全身の生命力が不足しているわけです。
しっかりと身体作りをして、妊娠を継続させ、赤ちゃんを産みましょう。

東洋医学的診立て
弁証:腎虚を中心とした気虚
論治:益気補腎 
治療方針:シンプルに腎気を救い、全身の補気をしていきます。生命力をたかめ女子胞を支え守り妊娠を継続させます。

治療経過

初診後、週に1-2回の鍼灸治療、毎日の自宅施灸。
4ヶ月後、体外受精の周期に入る。今までの中で一番FSHがよかった。

移植後4日目、10日目、17日目鍼灸治療。17日目妊娠反応プラス。
43日目、初めて胎嚢が見えた!! 50日目心拍確認
その後、脈拍数があがり、バセドーの状況が心配されたが専門病院にてOKと言われる。
妊娠7ヶ月から筋腫が大きくなり安静入院。無事に出産。

あとがき

この症例の患者さんの身体を整えていきながら、あるクリニックをお勧めしました。

そちらのドクターから、『これまでの経緯や、甲状腺疾患の状態などから、どの程度ご本人の治療効果が期待できるか不安ですが、ご本人の希望に添って治療を進めていきたいと存じます』とのお返事をいただきました。確かに状況は厳しいと私も思いましたが、もしワンチャンスあるのならばと身体作りをすすめ、そのワンチャンスをご本人が上手にいかし、妊娠中も腹を括ってゆっくりと過ごされ、かわいい赤ちゃんにめぐりあわれました。

期待を持ちすぎるのはやはり無理があることがあります。でも、やれることをして、できる限りのことをして、そしてあとは待つ。そんななかにワンチャンスがあるんだと私に教えてくれた症例となりました。