カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代前半 不妊 一般の症例集 虚弱体質・疲労

極限までの疲労とストレスで不妊、口内炎、こり、吐き気(32歳出産)

概要

極限までの疲労を重ねながらも、頑張って日々をおくっているため「妊娠」まで身体の余力が回らなくなっていたという症例です。

(この症例の弁証論治→不育、不妊、強い肝鬱弁証論治
【case:0046】

ご相談内容

不妊について
「26歳で結婚、27歳から妊娠を希望し始めました。タイミング指導、人工授精5回を経て、現在、体外受精を検討しています。高温期11日目頃に、妊娠検査薬において弱陽正反応が出るのですが、1~2日で陰性になり、継続しません。弱陽性反応が出る日は、吐き気、不眠もしくは早朝に目が覚める、ということが起きています。

高温期11日目夜にはおなかがぐるぐるとせわしなく鳴るのですが、翌朝にはぴたっと治まり、ここ2年ほどこれを繰り返しています。3、4日後に生理がきて、やっぱり妊娠出来なかったんだなあと思います。」

身体の凝りや不調について
「仕事や結婚によって生じた人間関係などとてもストレスになります。また日々の日常生活をこなすことも「なんとか頑張って」こなしている状態で疲労が強いなあと感じます。また疲れると呼吸がしにくい感じがしてぐったりします。凝りについては、背骨を中心に、特に左側がよく凝る。イライラしたとき、仕事が忙しいときがとくに辛いです。」

東洋医学的診立て

しっかりと気を張って生活をなさっている方だと思います。ご本人にとって、そういった『気を張る』ことが日常であり、特別なことではないとお感じでしょう。

子供のころから、コロコロと首を回さないとダメというように、気の滞りを生じさせやすいタイプですね。またご自身が疲労のサインと感じる状態は、呼吸がしにくく普通に座ることもできないほどぐったりとなっている状態です。これは、まともに座れないという非常に弱った状態になるまで『疲労』という腎気(生命の土台の力)の弱りを感じることができないということです。疲労していないのではなく、気を張って火事場の馬鹿力で乗り切ろうとがんばっちゃっているわけです。

火事場の馬鹿力は、本当に危急存亡であるときに出すべきです。日常でそういった身体の使い方、エネルギーの出し方をしていれば、ご自身のキャパシティーをいつも超えた状態で日々をおくっていると言うことです。それは無理な話です。疲れ切ってしまいますね。

お身体を拝見すると、『しっかりと気を張る』『火事場の馬鹿力で乗り切る』に見合う土台の力が不足しています。そのために色々な症状を引き起こしていますし、生命の余力である『妊娠』にもなかなか至らないのではないかと思います。赤ちゃんを授かるためには、西洋医学的な不妊治療、不育治療の役割も大きいと思います。そして、その治療をしっかりと前向きに成果のあるものにするためには、身体の土台の力はとても重要ですし、過剰に『気を張っている』今の状態は妊娠そのものへの妨げにもなるということです。

鍼灸では、身体の土台の力をつけること(腎気を益す)、気の張りすぎをとる(肝鬱を張らす)ことの二本立てで進んでいきたいと思います。ご自宅での養生としては、しっかりと土台の力を養うために毎日のお灸をしてください。また、ご自身が『当たり前』と思われる『気の張り』『ストレス状態』も、過度にならないように注意を払う必要はあると思います。テンションをあげなくても、ご自身の落ち着いた心持ちのままに日常生活や仕事がおくれるようになると、身体への負担が非常に軽くなります。気をつけていたければと思います。

年齢がお若いです。これは不妊治療にとってはなによりの助けとなります。一緒に頑張って行きましょう

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚肝鬱 子宮を養う任衝脉の滞り
論治:疏肝理気、益気補腎、養任衝脉
治療方針:非常に強い肝気を払い、腎気への負担を取り去る。腎気をあげ、妊娠のできる子宮の状況にして行く。子宮を養う任衝脉への滞りを取り去り養う