カテゴリー : 不育 不妊・婦人科 東洋医学 コラム

不育症~東洋医学から考えてみよう!

3)Nk細胞活性と流産 ピシバニール

このNK細胞活性と流産については、不育症を扱う先生方の間でも見解がわかれるところであり、このあたりはクリニックによってかなり考え方、取り扱いが違うところで はないかと思います。どちらの考え方も読めば納得しますが、比較検討して結論を患者側が出すということは、どちらの先生を信じるかというような、信心を試されるような境地になってしまいますねえ。まあ、これはどんな医療でも立ち位置、考え方でおこることで、患者の選択ということになるんですけどねえ…。

さて、NK細胞活性で使うピシバニール。かなり痛い注射らしく、辛かったというお声を聞きます。それでも効いてくれればなんていうことはないということですね。

私にとっては忘れられない症例があります。流産歴は9週以上で2回、爪の根元が赤黒く、これはなんらかの血液凝固系の検査でひっかかるのではと思ったのですが、杉ウイメンズクリニックの検査ではまったくの白。通院、治療の必要なしとの診断でした。患者さんからそれを伺ったときに、『うーーーん、そうなんだあ。納得がいかないなあ』と首をひねりましたが、検査は丁寧且つ充分なもの。そうなのねえと思いました。

しかしながら検査のあと12週の流産があり、「今わかっている検査の範囲外の出来事かもしれないね、次回の妊娠時にはフォローしていきましょう」という結論になりました。そして次回の妊娠時の前に、その方は別のクリニックでNK活性の診断を受け、ピシバニールを使い無事に妊娠、無事にご出産へと経過されました。

不育症の治療は、次回無治療であってもかなりの数字で妊娠ー出産に結びつきます。つまり、その治療が有効であるかどうかを本当に検討するのはなかなか難しいことなのです。だからこの一件をもって、NK活性の問題であったという結論をつけることは本当は難しいことです。でも、患者にとっては、「その治療が有効であるかどうか」よりも、「いま、この妊娠を継続させたい」という一点につきるわけで、私はいろいろ対応してダメなときの次の一手を求めることを否定はしませんし、私が患者さんだったら、やはりできる限りのことはするだろうと思います。

2016年2月14日の杉先生のTh1/Th2、NK細胞活性検査についてのインフォメーションです。ご参考まで。
Th1/Th2、NK細胞活性検査について。(杉ウイメンズクリニック)

4)糖尿病と不妊MEC食 血糖値の管理

不育症という一つのカテゴリーなのですが、大きく、広く広がります。また、東洋医学的に考えると違う側面も見えてきます。つまり、血液凝固系の異常という観点から考えると不妊の問題も絡みますし、また妊娠したあとの赤ちゃんへの栄養系の問題も絡んでいくわけです。

『EBMに基づく不育症診療の実際』20ページより、「糖尿病:妊娠初期の血糖値の高さは流産率のアップとなるも、コントロールすればOK」。

いま、MEC食というのが不妊治療をなさる方の間ではやっています。ミート(肉)エッグ(卵)チーズをしっかり食べて妊娠をめざそうということですが、このMEC食は、結果として血糖値に大きく係わる糖質が相対的に減り案外血糖値のコントロールにも貢献しているのではないかと思われます。食べる順番が大事ですので、食物繊維を摂取し、このMECをしっかりとり、糖質はあとにするなどの工夫も有効ではないかと思います。

食事記録を書いていただくと、炭水化物が非常に多く、タンパク質が少ない方が多いです。また、ヘルシーを目指して肉抜き、牛乳抜き、卵抜きと。制限食の場合、なんらかの理由があると思われますのでそのこと自体はなんともコメントいたしませんが、食事バランスガイドの図表と比べ、ご自身の食事がどんな栄養素が不足しているのか考え、制限しているものの代替を考えていく必要があると思われます。低栄養で不安定な体になってしまい、東洋医学で言うところの気が立ちやすい(ガッツが入りやすい、テンションが上がりやすい)体になってしまっては本末転倒。

また、タンパク質が少ないのではないのですか?とアドバイスさせていただきますと、『豆腐を食べてます、油揚げ食べてます、湯葉を食べてます』と大豆タンパクばかり挙げる方がいらっしゃいます。やはりこの点も見直したほうがよいかと思います。特に大豆タンパクの取り過ぎは子宮内膜症や筋腫の方には危険であると思います。大豆タンパクを減らし、タンパク質を肉、魚、卵、豆類とバランスよく摂取することが大切だと思います。

なんだか糖尿病の記載からこんなところに考えが広がってきました。つながっているのでしょうかねえ。