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生理、妊娠を東洋医学で考えよう 東洋医学で考える身体の臓腑 – 不妊!大作戦(3-2)

生理、妊娠を東洋医学で考えよう 東洋医学で考える身体の臓腑

五臓六腑という言葉を聞いた事がありますか。

東洋医学では、五蔵(肝、心、脾、肺、腎)という中心になる臓と、 六腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)という腑でからだ全体が構成されて いると考えています。

中心となる、肝、心、脾、肺、腎のは五臓。

5つに分けて考えていますが、私たちの体は、ひとくくりの生命をもって 日々生きています。五臓が、それぞれに役割をもって関連し合い生命活動をつくりあげて います。不妊や婦人科を考えるときにも、ただ、生殖器系統だけを取り出して考えるのではなく、すべての臓腑がからだを構成し支え、相互に関連しているのだという観点が大切です。

この点が、西洋医学的な不妊治療と考えを異にするところです。

東洋医学でも、生殖器系を考えていくときに中心となる臓腑、経絡はあります。

腎、三焦、子宮、一源三岐である衝脉、任脉、督脉などです。その経絡や臓腑を補ったり調整したりするということは、ひとくくりの生命を存在させる五蔵六腑すべてから考えていかなければならないということなのです。

それでは五臓それぞれについて、簡単に説明しておきます。

肝:肝は木にたとえることができます

人間を、大地に根ざし、天空に向かって手を広げる1本の「木」であると考えるのです。 しっかりと大地(脾腎)に根を張り、健やかな(肝)木が暢びやかにたちあがることによって、力強く天空(心肺)に手を広げることが出来ます。

この暢びやかな木は、『やる気、生きる意志』でもあります。 全身の気血の流れを調整し、生きる意思をもたせるものが肝気の力です。 どっしりとした肥沃な大地に根ざすことで、充分に暢びやかになり、しっかりと力強く天空に手を広げることができるのです。

ところが現代人は、暢びやかなやる気、生きる意思を支える大地が痩せていることが多々あります。土台となる脾腎の力が弱いのです。

痩せた大地に育つ肝木は、身体の上部である天空に助けをもとめます。人間においては、身体がキーキーとヒステリー状態となり、他者に助けをもとめて泣き叫んでいる状態です。その必死さによって、熱を生じ、その熱が他の臓や生命力を圧迫してしまいます。

この身体がキーキーした状態(肝気鬱結)によって不妊に陥っている人が沢山いるのです。ストレスが不妊にはよくないといいますが、ストレスとは、ご自身の内なる問題である場合が多く存ります。

一義的には肝木がキーキーと熱を持った状態と考えられます。またそのキーキー状態をより強くするのは、外的なストレスも関係しますが、その大本の原因は、痩せた大地(ひ弱な脾腎)なのです。

また、ご自身の大地の充実度(脾腎の状態)を無視して、肝の『生きる意志』だけが暴走している場合もあります。やせ細った大地にたった、もやしのような身体なのに、あれ もやりたい、これもやりたいと『やる気』の暴走、肝気だけでキーキーがんばっている方がいらっしゃいます。この状態を長く続けると、土台がよりやせ細り肝木を支えられなくなり、悪循環となります。この状態の結末は、どうしても肝木が立たない、つまりやる気がまったくでなくなるという状態です。ここまできてしまうと、建て直しが非常に難しくなります。身体を支える大地を充実させることの大切さを心に留めて置いていただきたいと思います。

大地(脾腎)を充実させること、肝気(生きる意志、自分の欲望)と折り合いをつけることが、生きていく日々を健やかに過ごすためには重要になるのです。自分の欲望とどう付き合うのかということが大事なのです。

また全身の血を蔵することにも、肝は関与しています。蔵するというのは蓄え貯蔵し、全身の血のめぐりを調整するという意味です。妊娠したいという女性に とって、血が健やかにあり、全身によくめぐるように調摂されてい ることは大事なことです。女性の生理の問題を『血の道』などと表 現することがありますが、肝と関係の深い言葉です。

心:心は火にたとえられます

人間の体には、二つの火が考えられています。それは、土台から暖めていく腎の火と、その暖かさを受け太陽のように燃え続ける心の火です。

心の火は、君主の官とも呼ばれていて、全身の状況を表現します。

肝のキーキーする熱などをを受けて燃え上がってしまうこともあり ます。心熱などといわれる状態です。

脾:脾は土、大地です

脾と胃をあわせて、脾胃と表現し、胃腸の機能をあらわしています。

私達が日々摂取する飲食物を消化吸収し、しっかりとエネルギーを摂取し、からだ全体に配布していきます。またそれをしっかりと蓄える倉庫でもあります。

生まれながらの生命力である先天の本(腎)に対して、日々生命をつないでいく胃腸の機能をあらわしますので、後天の本ともよばれます。

肝木はこの、肥沃な大地である脾胃に根をおろし養われます。肝は血を蔵すると言われていますが、その血を生成するところが大地である脾なのです。大地が肥沃であることは肝木の根がしっかりします。肝気がキーキーと暴れることを間接的に防ぐのです。 木には充実した根が大事だということですね。

肺:肺は天空です。心の火はそこにかかっている太陽です

人間の身体において、天空というのは、外界と内界をへだてる外郭、バリヤです。

脾が飲食物の摂取という役割で、外界と内界をつないでいますが、肺は、呼吸に よって外界と内界をつなぐ役目ももちます。

肺が弱くなるということは、外界に対する防衛力が弱くなるということです。

また、人間の命のまとまりとしての蓋の役割をしていますので、この蓋である肺 が充実していると、生命力がしっかりとまとまることになります。

腎:腎は身体の中心、生命力の土台です。子宮と直接つながります

人体の重心である最も深い位置にあります。そして東洋医学では生命そのもの の発祥の中心とも考えるので、先天の本とも呼ばれます。

東洋医学の世界で子宮は、生命力の土台である腎と直接的に関係していると考え ています。

女性の生命力の中心によって子供が育まれるということは、 種の存続の神秘でもありますね。女性の腎と直接つながるこの子宮の力こそは、次なる生命を生み出す門戸なのです。

「女は子宮で考える」という言葉があります。これは、女性は一番大切なものを、 生命の源とつながりから本能的にわかっているということなのでしょう。

腎と子宮、一源三岐である衝脉、任脉、督脉

人間が日々生きていくには、五臓の働きが必要です。

女性には、日々生きていくだけではなく、次の世代を生み出すための仕組みを担 い、身体にそのシステムを備えています。

これが、子宮を中心とする女性の生理の特徴です。

子宮に直接的に関わるのは生命力の土台である腎です。腎の力は生殖の力を左右 する大きなものです。

人間には、生命力の有余を大きく蓄える流れが用意されています。一源三岐と呼ばれる衝脉、任脉、督脉です。この一源三岐の経絡は女性においては直接的に子宮に注ぎ入り、有余の生命力を注ぎ込みます。生殖を支える大いなるエネルギーとなるわけです。

生理がおこるということは、腎気(身体の土台の力、下焦の力、 際下丹田の力)の主導のもと、肝気によって、血流が調整され、 脾によって、気血が作られ、余力である奇経の衝任脉が充満して、そのエネルギーが子宮に注ぎ入るということです。

腎気、肝気、脾気、衝任脉という沢山の臓腑や経絡が全体として 調和のある動きをしているということが、順調な生理につながる わけですし、妊娠の出来るからだのありようにもなるのです。

(男性にも衝脉、任脉、督脉などは存在します。ここでは特に子供を孕み、育み、 出産する女性の生理に大きく関わる側面としての衝脉、任脉、督脉を考えていっ ています)