カテゴリー : 講演記録

2009年 徳島講演『不妊!大作戦』—攻めと底上げの二重作戦—

不妊治療の進み方、流れ-1

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一般的な不妊治療の流れでは、不妊治療は検査をしながら段階的に行うのが一般的です。

負担の少ない治療から、効果をみながら、負担の大きい治療へとステップアップしていきます。

以下に、原因不明不妊症の治療法の選択指針、生殖医療ガイドライン2007よりの考え方をご紹介いたします。

【第一段階】
☆30歳未満かつ不妊期間1年未満 
 →待機 タイミング指導 6周期

【第二段階】
☆第一段階で妊娠しないもの
☆30歳以上または不妊期間1年以上
 →過排卵刺激+人工授精 6周期
 この段階で妊娠しなければ、35歳以上の方は体外受精胚移植の適応となります。

【35歳未満 第三段階】
☆腹腔鏡検査
 →腹腔所見正常、改善→→過排卵刺激+人工授精 6周期
 →卵管障害あり→【第四段階へ】

【第四段階】
☆IVF-ET(体外受精ー胚移植)受精、胚移植法

30歳以上であれば第一段階の待機の期間がありません。年齢要因は30歳から始まっているというのは、現代女性の認識とはかなりずれると思います。30歳からは卵管の動きが低下し、妊娠率が低下してくる年齢になりますね。また、35歳以上であれば【第三段階】もありません。

つまり、36歳で不妊治療をスタートした場合、半年程度の人工授精治療ののち、IVF-ET(体外受精ー胚移植)へステップアップというのがガイドラインに沿ったものなのですね。かなり早いイメージではないかと思います。

不妊治療には色々な負担があります。こうやってステップを並べると、高いステップのほうが負担が高いと思われがちですが、『負担』の意味が人によっては違うことがあります。

負担が大きいとされる高度生殖医療の方が、ホルモン剤などの負担では身体に優しく出来るケースもあります。人工授精でこれほどまでに? と思われるほどの排卵誘発を受けている方を見る場合もあります。

同じ人工授精、体外受精という治療でも病院、施設によって方法がとても、とても!!違います。病院選びがとても大切なのです。

不妊治療では『考え方』や『スタンス』がいつも問われます。正解はないのだなと私は感じます。

『どう選ぶか』という課題は、患者さんにもおおきな違いがありますが、ドクターによってもおおきな違いがあるという事実があります。このあたりをよく見極めて選択が出来るといいですね。

不妊治療の進み方-2 身体の中でおこることへの応援

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「タイミング、人工授精、体外受精の違いをご存じですか?」

体外受精が不妊治療にエントリーされる前は、身体の中でおこることを応援する治療のみでした。

すなわち、タイミング指導や、排卵を促す治 療。あるいは人工授精、通水、腹腔鏡などによる、『身体の中でおこることを応援する』治療だったわけです。

現代では、体外受精がくわわり、身体の中でおこることを応援する治療を一般不妊治療とよんで区別しています。選択肢が大きく増えたわけです。身体の中でおこることを一部取りだし、体外で確実におこない、身体の中へ戻すという治療は、いままでブラックボックス的であった部分を、確実にチャンスへとつなげてくれる場合があります。

現代を生きる私たちには、一般不妊治療の他に高度生殖医療という不妊治療が許されているということです。この違いを理解しておくことはとても大切です。

一般不妊治療は、身体の中でおこる排卵、受精、着床を助ける不妊治療であり、高度生殖医療というのは、身体の中でおこっている受精を体外で行い、受精卵を移植する医療です。『不妊』のなかで、一番大きな障害になる、精子と卵子の出会いを確実に体外で行わせることが出来る医療ですね。

精子と卵子の出会いが出来ていなかった人には大きな朗報となる医療なのです。

体外は出会いのサポートなのです。

『不妊と呼ばれるとき』

不妊とはどういった状態の時に呼ばれるのでしょうか?

産婦人科的には「定期的な性生活を送り、とくに避妊などをしていないのに、2年以上妊娠しない場合」です。

妊娠は

 通常の性生活ー年以内に約80%
 2年以内では約90%が妊娠

という事実があります。

しかしながらこれは20代の場合ではないかと考えられます。

年齢が30歳を越えていれば1年をまたずに、病院にてチェックを受けた方がいいですね。不妊の原因は男女双方に考えられますし、男女の組み合わせ的な相性もあるようです。

婦人科的には、卵管の障害(精子と卵子が出会えていない)が妊娠のシステムの一番大きな障害と考えられています。これには、クラミジアなど感染症、子宮内膜症などや、排卵障害の要因として、卵子が育たない、排卵できないなどのホルモンのアンバランス。また子宮の問題としては、着床できない、流産、内膜症、子宮筋腫、子宮の形の異常。また不育因子も考えられます。 

男性側の因子としてはセックスできない、精子がいないなど。

男女間の問題としては、夫婦の適合性が悪いといった抗精子抗体の問題です。

以上、いろいろな不妊につながる要因を考えてきましたが、原因が不明という病院で調べても、「原因は見あたりません」というタイプの不妊の方も多いですね。

逆に、原因がみあたっても、さらっと妊娠することも多くあります。

これまた魔訶不思議ですね。

妊娠したいという人が、妊娠しやすい日を考えていくと、一ヶ月のうちに卵子が出てきたほんの12時間しかないような気がしてしまいますよね。一瞬のピンポイントを逃さないのがタイミングのコツだと。でもね、逆に、避妊をしたい人が妊娠をしないようにするには? という情報をみていると、妊娠しない絶対に安全な日を探すことさえ無理に思えます。『すり抜け排卵』なんて言葉があって、予定外の日にすうっと排卵し、妊娠するってわけです。

妊娠しない人からみると、妊娠出来るときは、ほんの一時。

避妊したい人からみると、妊娠しない安全日など存在しない。

うーん、妊娠の魔訶不思議ですねえ。

妊娠したい人はあまり、ぐうううう~っと目をこらすのではなく、目を開いて、気楽に外の風を感じ、ご夫婦の楽しい時間を過ごしてください。ピンポイントだったタイミングがもっと広がるのかもしれませんよ。