カテゴリー : 講演記録

2010年 山下湘南夢クリニック ゲスト講演『不妊と鍼灸治療』

3つのキーワード

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このお話には、3つのキーワードがあります。

一つ目は、『35歳』

大学病院の先生が『35歳ですから、不妊治療は終了です』とおっしゃった時代は、IVF-ET(体外受精ー胚移植)などがなく、いまでいう『一般不妊治療』のみで行われていた時代です。

すなわち、排卵を多くさせたり、人工授精をしたりという身体の中でおこることを応援する治療です。不妊治療そのものが、年齢的な要因で大きく治療成績が左右されます。

残念ながら『若い』ということはとても大切な要素なのです。そして35歳までの『若い』方が、身体の中でおこることを応援する治療で成功しなかった場合、それ以上同じ治療を繰り返しても無理だということなんですね。妊娠に一番必要な『精子と卵子の出会い』そのものが出来ていなければ、いくら身体のなかでおこる排卵などを応援してあげても妊娠することが出来ないということです。

年齢要因ということを考えると、31歳までは妊娠率はほぼ横ばいですが、31歳を過ぎると徐々に妊娠率は低下していきます。つまりすでに年齢要因的な問題が出始めるといことです。このあとは特に35歳、37.5才とぐっと妊娠率が低下するといわれる年齢があります。

赤ちゃんの出来やすさは、『不妊治療歴の長さ』ともリンクします。つまり、ある程度の不妊治療の長さがあれば、同じ年齢でもこれから赤ちゃんが出来る可能性は低いと言うことです。

35歳でドクターが不妊治療終了とされたのは、それまでの長い不妊治療歴を踏まえ、年齢要因も加わった現状に対して、『これ以上医療的介入は意味がない』というご判断だったのでしょう。

医師による不妊治療終了宣言

この医師が「不妊治療終了宣言」をしてくれるというのは、厳しいことなのですが、ご本人にとっては、気持ちの切り替えはもしかしたらしやすいのか?と私は感じてしまうことがあります。

厳しい現実ですが、「生理があれば妊娠出来る」と漠然と思っている女性は多いのではないかと思うのです。でも、もともと妊娠しやすい人であっても、年齢要因が重なれば「絶対妊娠しないというわけではないが、妊娠しにくい」状況になります。ましてやもともと妊娠しにくい「不妊」の方であれば、「厳しく、難しい状態」であることは事実です。

この事実の中、ご自身だけで「不妊治療終了」を決断するのは無理なことではないかと思います。このときに医師から宣言してもらえることはある意味有難いことなのかもしれません。

そしてその上で、「私はもう少し治療したい」という希望が受け入れてもらえることも大事なのかと思います。

妊娠には思っても見ない奇跡があるのもまた事実なのです。確率、可能性をどう把えるかは、その方の人生の文脈の中で生きてくる事柄です。現状を踏まえ選択するということが重要なのではないかと思います。

「あきらめたら妊娠」

さて、「あきらめたとたんに妊娠」ということは、実はよく妊娠にまつわるエピソードとして聞かれることではないかと思います。もう無理だと治療をやめたら妊娠したなど、不思議なエピソードがよく聞かれます。

このあきらめたとたんに妊娠ってどういうことなのか、東洋医学的に考えてみたいと思います。