カテゴリー : 講演記録

2007年 山下湘南夢クリニック講演「不妊と鍼灸治療」

東洋医学で考える妊娠

東洋医学で考える身体の臓腑

五臓六腑という言葉を聞いた事がありますか。

東洋医学では、五藏(肝、心、脾、肺、腎)という中心になる臓と、六腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)という腑でからだ全体が構成されていると考えています。

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よく、東洋医学は自然の力を利用してといいますが、私はもう少し踏み込んで考えて頂きたいと思っています。東洋医学も医学です。

たんに「不妊によい」という治療があるのではなくて、

 「あなたの不妊の状態にはこの治療がいい」ということがあるのです。

不妊と言えば当帰芍薬散ではなくて、

あなたの不妊には当帰芍薬散、

あなたの不妊には補中益気湯

というように、まずあなたの身体をしることが、東洋医学で始める第一歩です。

『妊娠に致る一連のシステムがスムーズにおこる』ことが一番大切

妊娠というのは、非常に沢山のステップが積み重なり、その上に成立するものです。

一番難しい卵と精子の出会いを応援してもらう体外受精ですね。その応援の力を借りながら、この一連のシステムをスムーズにおこるように考えていきましょう。

このシステムを一番下支えするのが先ほどお話しした土台の力(腎気)の部分です。土台の力に支えられて、暢びやかな心身が精子と卵子の出会い受け止め、働き、動くことで受精卵となります。その後数日をかけて受精卵が大きくなり、開かれた母体との出会いである着床となります。

不妊でお悩みの方は、何が悪い?どこが悪い?という発想になりがちですが、この巧妙なシステムがスムーズにおこることもとても大切な要素となります。取り立てて問題となるような原因がないと病院で言われた方の場合、このシステムに何らかの不調がでスムーズに発動していないのではと私は考えています。

とくに、IVF-ETしても上手く着床しないというときには、卵ちゃん自体の生命力も大きく関与するのは当然ですが、母体の腎気の弱さ、気の欝滞との関連が大きく考えられます。

本来、リラックスして大きく開かれ受け止められるべき存在である母体が、緊張や腎気(生命力)の不足により、固く閉ざされていることと関連が強いのです。

排卵を促すホルモン治療を受けて、沢山の排卵が確認されている。

精子の状態もよい。

ましてや体外受精でよい卵も戻している。

そんなときに妊娠が成立しないときは、一番考えて欲しいポイントがここです。ひとつひとつが悪いのではなく、全体のシステムがスムーズに動いていないのです。

全体のシステムがスムーズに動くようにしてあげる必要があるわけです。これには、土台の力をつけること、身体のストレス状態を取り除くことです。私が冒頭であげたかたが、泣きはらしたことで妊娠されたのは、この身体のストレス状態が取り除かれたんだなあと思っています。

東洋医学で考える統一的観点がいきるところでもあります。