弁証論治:

0021:子宮が小さい、卵巣機能不全、4回の体外受精からの自然妊娠、出産

0021:卵巣機能不全、子宮が小さい、4回IVFT撃沈、自然妊娠出産弁証論治 治療経過あり

…28歳 女性 主婦 身長153センチ、体重53kg
主訴:不妊
副主訴:肩こり、背中の痛み・こり(背中~腰まで)、腰痛、冷え性(腰から下が冷える、手は指先)

…問診
…不妊について
23歳結婚
25歳妊娠を考える
H病院に行く(避妊をやめたのと同時に病院へ行く)
ーークロミッドhmg,hcgなどによりタイミングなど2年
27歳Y病院に行く
ーーAIH4回
ーーIVF-ET(体外受精ー胚移植)
1回目ー採卵できず
2回目ー分割途中で止まる
3回目ー排卵済みになってしまいAIH
4回目ー採卵ー受精ー翌日変性卵になってしまう。
28歳現在
冷え性や肩こりなどの副主訴は以前からだと思うが、特に最近意識するようになった。
卵管の通過障害なし
卵巣機能不全、子宮が小さいとの指摘あり

…生理について
初経は10歳、もともと26日型5日間であったが、現在不安定。
生理痛は初経から、生理前に腰・下腹部に鈍痛、イライラあり。
生理は、出血したときの濃色、小指大の塊、血液

…普段の状態について
…食について、
食欲は普通(お菓子をよく食べてしまう)、時間は規則的15分、
空腹感あり、いつも美味しい、腹脹胸焼けよくある、間食はよくある(お菓子) 烟草なし
飲酒 ビール2本・月四五回(20歳の頃から8年間)
飲み物1000cc以上、お茶、水、牛乳
舌喉が燥くことは時々、違和感はない

…二便
便通は1日1回でる。バナナ、多い。時々臭う。
小便は1日4,5回、残尿感、尿切れ、夜間尿めったにない。
…睡眠
寝つきはよい、0時に寝て6時におきる
夢は見ない、寝起きは普通、翌日に疲れが残ることがよくある。

…切診
….脈
全体に脉幅が小さい
尺位が少し細い

….舌
やや淡紅、歯痕なし、舌裏怒脹なし

….腹診
心下つまりなし
季肋部湿痰左右あり、
季肋際 左右つまり
中脘奥に冷え
気海抜け
右少腹動き悪い詰まった感じ
両大巨冷え
肝の相火なし

 

….経穴診
右内関緩み
右合谷硬結
右外関 亀裂冷え
左右申脈冷え
右臨泣冷え動き悪い
左臨泣動き悪い
左公孫冷え
両湧泉寒え左>右
左太衝熱感
右肺兪陥凹
左脾兪大きく抜け
右胃兪大きく抜け
右三焦兪抜け大きい
右腎兪抜け
左腎兪抜け大きい
…五臟の弁別

….【肝】
生理が不規則になった
生理前に腰、下腹部に鈍痛、イライラ、小指大の塊あり
季肋際左右つまり
右少腹動き悪い詰まった感じ
右臨泣冷え動き悪い
左臨泣動き悪い
左太衝熱感

….【心】
右内関緩み

….【脾】
間食でお菓子をよく食べる
腹脹胸焼けがよくある。
飲み物1000CC以上
季肋部湿痰左右あり
中脘奥に冷え
左公孫寒え
左脾兪大きく抜け
右胃兪大きく抜け

….【肺】
右合谷硬結
右肺兪陥凹

….【腎】
生理が不規則になった
翌日に疲れが残ることがよくある
尺位が少し細い
両大巨冷え
右外関亀裂冷え
左右申脈寒え
両湧泉寒え左>右
右三焦兪抜け大きい
右腎兪抜け
左腎兪抜け大きい
気海抜け

…病因病理

赤ちゃんが欲しいという訴えの28歳女性です。

25歳から病院へ行き、タイミング、人工授精、そしてIVF-ET(体外受精ー胚移植)とステップアップするも
赤ちゃんの希望がかないません。治療歴を拝見すると、体外受精をし採卵しても卵の質自体に問題が
あり、採卵しても移植できずに終わることが多く、妊娠に致るよい受精卵自体ができにくいという、
非常に困難な状況になっています。

日ごろの仕事が非常に忙しく責任も重いハードな仕事をなさっている日々のなか、頑張って不妊治療に
通いステップアップするという心身ともに厳しい状況というなか、お体を拝見すると心下のつまりもなく、肝の相火の
張りもなくストレス状況がさほどきつくあらわれてはいません。

しかしながら、生理が不規則になったり、翌日に疲れが残ることがよくある、両大巨の冷え、脉状での
尺位の細さまた特に背部腧穴の左右腎兪の抜け、右の三焦兪の抜けの大きさは腎気の弱さを思わせ、
日ごろの生活や不妊治療そのものからもかなり腎気を消耗しているのではないかと思われます。
年齢がお若いので二便の状況には影響が出るほどではありませんが、妊娠にとっては支えとなる腎気の
弱さは、子宮が小さいとの指摘があるように、もともとの一源三岐の源である子宮の脆弱さともつながります。

また子宮は、任脉衝脈より気血が注がれることによって成長します。
この任衝脉は脾胃の力によって養われる経脉です。

中脘の奥の冷えは脾気の弱りを示していますし、季肋部に湿痰があり、左の脾兪、右胃兪が大きく抜けている
状況は現段階で脾気が弱り湿痰を溜め込んでいる状況を示しています。これでは、脾胃の余気で養われていく
任衝脈の充実がはかれませんし、結果として子宮(胞宮)への養いも小さなものとなります。

湿痰が季肋部に大きく乗るほど貯めこめられるということは、脾気そのものの弱りが強いのではなく間食などで
脾気に負担をかけていることが脾気をいためていることにつながっていると思われます。間食と、多すぎる飲水が
脾胃に負担をかけ現段階で背部腧穴の中で一番問題を感じさせる脾兪、胃兪の大きな抜けと
なっていますので、間食、飲水に気をつけながら脾気を養うことが大切だと思われます。

弁証:腎虚、脾気の弱りによる任衝脈の虚弱
論治:益気補腎、益気補脾、養胞宮

治療方針、鍼灸治療では、脾胃の負担があれば補いながらも、腎気をあげることを中心に治療をしていく。
子宮胞脉の健やかな養いのため、脾胃の負担を日ごろの食生活を正すことしていただく。

…生活提言

不妊の状況は、良好な受精卵自体がIVF-ET(体外受精ー胚移植)でもできないという厳しい状況ですが、
年齢が若いということは、不妊治療にとっては最大の強みです。

腎気という身体の土台の力の不足が思われますので、鍼灸治療でしっかりと土台の力をつけていきましょう。

また、子宮を養うのは、胃腸の力が大本となっています。この胃腸の力が子宮を養う力へとつながって
いきますので、間食や過度の飲水をやめ食生活を正すことで、子宮を養い赤ちゃんが元気にやってきてくれ
るようにしましょう。

…初診
1)右後谿+ミニ灸、臍温石+ミニ灸 、中注(7)、関元ミニ灸
足三里灸頭鍼+ミニ灸、復溜灸頭鍼+ミニ灸、左臨泣ミニ灸
2)(右三焦兪、腎兪)温石+ミニ灸 中膂兪+ミニ灸
施灸指示 右後谿、右外関、大巨、関元、復溜、三焦兪、腎兪、中膂兪

…初診より11ヶ月 35診にて自然妊娠