弁証論治:

0114:妊娠中に悪化する子宮内膜症の強い痛み、不妊、産後。

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…<問診>

33歳、女性 医療職
身長:158cm、体重:78~80kg、血圧:110~120/60~80
家族構成:夫、子供、両親

肉親の病気の遺伝的傾向:母がDM、父がHT

主訴・・・産後よりだるくて疲れやすい、肩こり

..【今一番つらい症状について】
前からよく起こった。徐々に起こった。朝、常時つらい。
今回の症状が起こった原因は、産後の疲れとホルモンバランスの変化だと自分では思う。
全身的な体調の変化に合わせて変化するかはよく分からないが、仕事で疲れがたまっている時に起こることが多いと思う。
朝、体がだるい。
32歳から妊娠するまで鍼と骨盤整体を受けていた。

…【今回の症状と同時に出てきた症状】
夕方の下肢のむくみ

..【その他に治したいこと】
不妊症(内膜症)。

..【ふだんの状態について】
…(体調の悪い変化)
夏、秋、冬、季節の変わり目、夕方、深夜、肉体疲労時、睡眠不足の時
…(体調の良い変化)
記載なし
…(風邪)
風邪をひくと、扁桃腺炎、喉痛、肩こり

…(食事)
食べる量は普通。
食事時間は、朝:6~8時、昼:12時、夕19~21時。
30分以上かけて、よく噛んで食べる。
食事前の空腹感はよくあり、いつもおいしく食べられる。
食後にお腹が張ったり、胸焼けは時々。
よく食べるのは、白米、パン。
間食はよくとり、甘いものを食べる。

…(水分)
1日に、100ccのコップで1~2杯以上、200ccのコップで2杯以上、合計800cc以上飲む。
日本茶を飲む。
口、舌、喉の渇きは時々。
違和感は無い。

…(飲酒)
20~30歳まで10年間、月4~5回。

…(タバコ)
記載なし。

…(大便)
2日に1回出る。
便秘でおなかが張ってつらいことは時々で、時々薬を使う。
マグラックスを服用すると便通は改善する。
薬を服用しないと便は硬い。
便が出切らない感じはめったにない。
便は太くてバナナ。
便器に付着することは時々で、臭いは普通でいつも臭う。

…(小便)
1日6~8回。
残尿感、尿切れが悪いことはない。
尿の色は黄色。
昔から2~3時頃に1回は夜間排尿に起きる。

…(睡眠)
就寝23~24時、起床5:30。
寝付きは普通で、眠りは深く、寝起きは悪い。。
翌日に疲れが残ることは時々。

..【婦人科の状態】

今一番つらい症状は、排卵前後と生理前に関連していると思う。

初経12歳。
生理期間は7間で、周期は28~32日で、時々不安定。
生理血は濃く、小指大の塊が混じる。
量は普通で、生理2日目が多い。

生理に伴う体調不良はよくある。腰痛、下腹部痛。
生理3~4日前から、胸の張り、イライラ、疲れ、きつい頭痛(前後)。
生理が来るとこれらの症状は治まる。
排卵時期には右下腹痛がある。
右下腹部の癒着は、夜に痛む。痛みは温めると楽。
生理痛は、生理2日目に鈍痛がある。

30歳で結婚し、妊娠を希望する。
不妊検査で、卵巣嚢腫、排卵障害、黄体機能不全と診断される。
31歳から自然周期で数回採卵、ポリープ切除をしなければ移植が無理といわれ
他院にて手術。その後32歳の時、初めて移植した卵で妊娠。

妊娠中夜間に右の下腹部(手術痕があり硬く引きつれている部分)を中心とする痛みがきついので5ヶ月より入院。
計画分娩となりなり、帝王切開で出産。
母乳はあまり出ない。

..【これまでにかかった大きな病気】
記載なし

…<時系列>

12歳・・・初経。

17歳・・・右卵巣出血、部分切除。

18歳・・・左卵巣嚢主、部分切除。

19歳・・・左卵巣全摘出。

20歳・・・子宮内膜症、腹空鏡でアルコール固定。
     子宮内膜症、試験開腹。

20代・・・体重60kg台。
     子宮内膜症の治療薬リューブリンを使い、少しずつ体重が増加する。

22歳・・・子宮内膜症、癒着剥離。

25歳・・・右骨盤骨折。
     湿気があると右坐骨神経痛が出る。
     普段は、歩くと左太ももが痛い。
     子宮内膜症の癒着で右下腹部が特に痛い。

30歳・・・結婚。

31歳・・・不妊治療開始。

32歳・・・卵管水腫、クリッピング。
     鍼、骨盤整体治療を受ける(妊娠まで)。
     運動をするようになり、少しずつ体重が減る
     (妊娠までに10kg減)。

33歳・・・内膜ポリープ切除。

33歳・・・初移植で妊娠。
妊娠五ヶ月過ぎから、右下腹部の子宮内膜症による腹部の痛みが強く(夜間に特に強い) 入院、硬膜外麻酔などで処置をしてもらい経過。

34歳二ヶ月、入院のまま計画分娩帝王切開にて出産。
34歳春現在・・・疲れやすい。
 妊娠中はコントロールされていた右下腹部の痛みがきついものの、今後の痛みの
 コントロールはペインクリニックにてと言われて産科から離れる
産後2ヶ月で生理が始まり再び生理時の痛みがきつい

…<切診情報>

..【脈診】
左尺~関 中位からすっと消える
右寸 中位から下はあるが、輪郭ない

..【舌診】
やや紅舌
中央に裂紋あり
舌裏怒張 あり

..【腹診】
脾募あり
兪府 陥凹
或中 冷え
中カンから下カン 冷え
右大巨 塊で冷え(手術痕)
左大巨 きつい冷え
下腹正中ラインに手術痕

..【経穴診】
右太淵腫れ
右内関 陥凹
右後谿 やや陥凹
左外関 こそげ、亀裂
右足三里 陥凹、冷え
右臨泣 つまり
左公孫 陥凹

..【背候診】
大椎 冷え
Th2 陥凹
風門 陥凹
右肺兪 腫れ
至陽 冷え
左脾兪 陥凹
左胃兪 陥凹
右三焦兪 陥凹
左腎兪 やや陥凹
右腎兪 二行
大腸兪 やや弛み

..五臓の弁別
…【肝】
生理前に胸の張り、イライラ、疲れ
生理前に頭の午前後にきつい頭痛
排卵時に右下腹部痛
やや紅舌
舌裏怒張 あり
右臨泣 つまり
至陽 冷え
…【心】
右内関 陥凹
右後谿 やや陥凹
…【脾】
夏、秋、冬、季節の変わり目に体調が悪い
食後にお腹が張ったり、胸焼けは時々
便秘でおなかが張ってつらいことは時々で、時々薬を使う。
便器に付着することが時々
20代でホルモン治療をしはじめてから体重がだんだん増える
脾募あり
舌 中央に裂紋あり
中カンから下カン 冷え

右足三里 陥凹、冷え
左公孫 陥凹
左脾兪 陥凹
左胃兪 陥凹
…【肺】

右寸 中位から下はあるが、輪郭ない
兪府 陥凹
或中 冷え
右太淵腫れ

大椎 冷え
Th2 陥凹
風門 陥凹
右肺兪 腫れ
…【腎】
産後よりだるくて疲れやすい
朝つらい、常時辛い(身体のだるさ)
仕事がで疲れがたまっていると身体がだるい
夕方下肢がむくむ
夕方、深夜、肉体疲労時、睡眠不足の時体調が悪い
昔から2~3時頃に1回は夜間排尿に起きる。
寝起きが悪い、翌日に疲れが残ることは時々
排卵時に右下腹部痛
母乳はあまり出なかった
17歳・・・右卵巣出血、部分切除。
18歳・・・左卵巣嚢主、部分切除。
19歳・・・左卵巣全摘出。
20歳・・・子宮内膜症、腹空鏡でアルコール固定。
     子宮内膜症、試験開腹。
22歳・・・子宮内膜症、癒着剥離。

25歳・・・右骨盤骨折。
     湿気があると右坐骨神経痛が出る。
     普段は、歩くと左太ももが痛い。
     子宮内膜症の癒着で右下腹部が特に痛い。
33歳・・・妊娠五ヶ月過ぎから、右下腹部の子宮内膜症による腹部の痛みが強く(夜間に特に強い)
左尺~関 中位からすっと消える
右大巨 塊で冷え(手術痕)
左大巨 きつい冷え
下腹正中ラインに手術痕
左外関 こそげ、亀裂

右三焦兪 陥凹
左腎兪 やや陥凹
右腎兪 二行
大腸兪 やや弛み

…オケツ
排卵前後と月経時に全身状態が悪化(だるさなど)
生理に小指大の塊がまじる
排卵時に右下腹部痛
卵巣嚢腫と言われている
妊娠5ヶ月頃から右下腹部(手術痕があり硬く引きつれている部分)を中心に、夜間が特に痛みがきつくなる。
 (入院にて硬膜外麻酔などの処置をしてもらう、そのまま出産まで入院)
17歳・・・右卵巣出血、部分切除。

18歳・・・左卵巣嚢主、部分切除。

19歳・・・左卵巣全摘出。

20歳・・・子宮内膜症、腹空鏡でアルコール固定。
     子宮内膜症、試験開腹。
22歳・・・子宮内膜症、癒着剥離。
25歳・・・右骨盤骨折。
     湿気があると右坐骨神経痛が出る。
     普段は、歩くと左太ももが痛い。
     子宮内膜症の癒着で右下腹部が特に痛い。
33歳・・・妊娠五ヶ月過ぎから、右下腹部の子宮内膜症による腹部の痛みが強く(夜間に特に強い)

舌裏怒張 あり

..病因病理

もともと、10代より右の卵巣出血、左の卵巣摘出、子宮内膜症の症状が強くアルコール固定、内膜剥離などを繰り返すほど、下腹部のオケツの状況はきつい。
そのうえ、20代より内膜症のために使ったホルモン剤のために体重が増加、
内湿がたまり全身の気機へ負担がかかるようになった。その上、25歳で右の骨盤骨折。右骨盤を中心とする経絡経筋の損傷が加わり、湿気などが多くなると右の座骨神経痛が出るようになり、また子宮内膜症の癒着も右の下腹部が特に痛むようになってきた。
局所のオケツの状況が骨折により場の損傷が加わり弱ったために内湿など全身状態の影響を強く受けるようになってきたと思われる。

30代で不妊治療、手術によりなんとか妊娠するものの、
33歳での第一子妊娠5ヶ月から子宮内膜症の癒着による痛みが、夜間を中心にひどくおこり入院による痛みのコントロールでなんとか出産にこぎつけている。夜間に起こる固定制の強い痛みであり下腹部のオケツによるものではないかと考えられる。

妊娠中はなんとか痛みのコントロールはついていたものの、帝王切開で行われた出産後、いままで行われていた痛みのコントロールがなされなくなると、痛みは再度強くなった。

子宮を中心とするオケツの状況は出産により解消されることが多いが、産後、強いだるさ、肩こりを感じるなど、腎気が落ちてしまっていたため、生命力に余裕がなく、オケツの解消までには致らなかったのではないかと思われる。

..弁証論治
オケツ
腎虚

補腎、
活血化オ(下焦におけるオケツを生じやすくなっている骨盤内臓器に対して温補、
理気していく)

治療方針

腎気をあげ、下焦を中心に生命力の底上げをする
痛みの部位と思われる骨盤内臓器を中心とし、強く温補し気血を
動かしやすくしたうえで理気し活血化オしていく。

..治療経過
本格的な生理が始まり痛みが強くなるものの、鍼灸治療後より痛みが薬物なしにコントロールできるようになる。

1年2ヶ月後、二人目を妊娠
再びきつい右骨盤内の痛みに襲われる
積極的に鍼灸にて痛みの軽減をはかる。
 →再度入院にてコントロール
 入院と退院を繰り返しながら経過。退院時には鍼灸治療

無事に出産 おめでとうございます。