弁証論治:,

0190:二人目不妊 体外受精 男性不妊 産後 断乳 疲れ 風邪を引きやすい

<問診表>
34歳 女性
身長:160㎝、体重:61㎏(BMI:23.83)
仕事:専業主婦
家族構成:夫、子供1人

主訴:1、二人目不妊、2、疲れやすく、風邪を引きやすい

【主訴について】
1、二人目不妊について
26歳結婚。妊娠を希望して数か月で第一子を妊娠した。ただ妊娠5ヶ月で
切迫早産気味になり自宅安静になった。38週で2820グラムの子を出産。

母乳はよく出た。子供の夜泣きがひどくて自分がぐっすり眠れず、それ
が辛くて産後2年半(30歳)で断乳する。断乳後から2人目を希望してい
る。産後は1年経たずに生理が再開しているが、生理周期が30~50日と長
くなって乱れが大きいのでタイミングを取りづらい。

病院でタイミング指導や人工授精を受けたが妊娠せず。不妊検査で、女
性側は排卵は遅いが自分で排卵できている状態で特に大きな問題はな
く、男性側は精子の運動率がとても低いと言われた。

2、疲れやすく、風邪を引きやすい
4年前(30歳)に断乳した頃から疲れやすく、風邪を引きやすくなった。
当初は気が緩んだのかと思ったが、その状態がずっと続いている。産後6
年経っているので体調自体は回復していると思うとのこと。

産後、生理前に必ず喉が痛くなり、それがひどくなると熱が出るという
のが続いている。喉が痛くなって、あっ生理前だなと分かるようになっ
た。(注:この生理前の喉痛と発熱が風邪を引きやすくなったとい
うことです)風邪を引くと、喉痛、発熱、頭痛、肩こりがする。

また産後、生理周期が長めに乱れるようになった、生理の出血がスッキ
リと始まらず、ごく少量の出血が数日続いてから出血するようになった。

【その他問診で分かったこと】
体重の変化について・・・20代は59kgくらいで推移し、妊娠して7kgほど
体重が増え66kgで出産を迎える。産後すぐに体重は5kgほど落ちて、授乳
をしながら産後1年経つ頃には50kg前後の体重になる。断乳して徐々に体
重が増えて、現在61kg。

【ふだんの状態について】
(体調の悪い変化)
記載なし。

(風邪について)
主訴2参照。

(食事)
食事時間は規則的で、朝8時、昼12時、夕18時。
食事時間は15分で普通に噛んで食べる。
空腹感はよくあり、よくおいしく食べられる。
食後にお腹が張ったり、胸焼けすることはめったにない。
よく食べるのは玄米、お味噌汁、ヨーグルト。
好きな物は鶏肉、梨、お菓子。
嫌いな物は梅干し、レーズン。
間食は毎日。

(水分)
1日に飲む量は200ccのコップで5杯、約計1000cc程度。
飲むのは、麦茶、時々ノンカフェインの紅茶やコーヒー。
口喉などの渇きは時々で、違和感は無い。

(飲酒)
ほとんど飲まない。

(タバコ)
吸わない。

(大便)
昔から2日に1回出る。
便秘でお腹が張ってつらいことは時々あるが、薬は使わない。
便が出きらない感じはめったにない。
便の形は、バナナ状で、量は多い。
便器に付着することは時々。
臭いは普通。

(小便)
1日6回。
残尿感、尿切れが悪いこと、夜間排尿は、ない。
尿の色は黄色いことが時々。

(睡眠)
就寝24時頃、起床7時。
寝付きは悪く、夢をよく見て、寝起きは悪い。
翌日に疲れがいつも残る。
夢の内容は、仕事の締め切りなど何かに追われている夢が多い。
寝付き寝起きが悪く、疲れが残るのは産後だと思う。

(婦人科の状態)
初経11歳。
生理周期は産後の生理再開以降は30~50日でタイミングを取りづらい。
もともと生理周期は35~40日と乱れがちだったが、産後はより乱れている。
生理期間は7日間。
生理血は濃い色で、時々塊が混じる。
初経から量はよく分からない。
生理の量が多いのは3~4日目。

生理2~3日前から胸の張り、下腹の痛み、イライラ、落ち込んで涙が出
るなどがある。これらの症状は10代の頃からあったが、産後は子供がい
て一人でじっくりと落ち込めないのでイライラが爆発することがある。

生理痛は、生理3~4日目に鈍痛がある。

<時系列>

11歳・・・初経。

10代・・・生理2~3日前から胸の張り、下腹の痛み、イライラ、
     落ち込んで涙が出るなどがある(現在まで)。

20歳頃・・・体重59kg。

26歳・・・結婚。

27歳・・・希望して数か月で妊娠。
     妊娠5ヶ月で切迫早産で自宅安静になる。

28歳・・・妊娠38週で出産(出産直前の体重66kg)。
     産後すぐに、体重61kgになる。
     子供の夜泣きがひどくぐっすり眠れない。
     寝付き寝起きが悪い(現在まで)。
     翌日にいつも疲れが残る(現在まで)。

29歳・・・産後1年経たずに、生理始まる。
     生理周期の乱れが大きくなる(現在まで)。
     生理前に喉が痛くなる(現在まで)。
     体重は産後1年くらいで50kg前後。
     
30歳・・・断乳する。
     徐々に体重が増える(現在まで)。
     第二子を希望する(現在まで)。
     疲れやすい(現在まで)。
     風邪を引きやすい(現在まで)。

34歳現在・・・体重61kg。

不妊治療歴
3年ほど前から自分たちでタイミングをあわせている。
1年半ほど前から 病院でのタイミング指導や人工授精を受けているが、なかなか妊娠しない。
ドクターから強く「ご主人の精子の状態も、顕微授精レベルのひどさだ! 一刻も早く体外受精をするしか方法はない」と断言されいま高温期のピル調整周期に入っているが、気持ちがついて行かない感じで、とても迷っている状態。

<切診情報>

【脈診】
全体に脈幅少ない
右尺 浮位が消える
左関 浮位が消える
右寸 浮いてて滑ぎみ

【舌診】
舌質 やや淡白
舌苔 やや膩苔
舌裏怒張 少ない

【腹診】
脾募 左大きい
肝の相火 左あり
神闕 少し引く
気海 やや抜け
関元 冷え
少腹急結 左あり

【経穴診】
前腕の皮膚 少し薄く甘い
右太淵 腫れ
左合谷 少し薄い
左陽池 冷えきつい
左外関 冷え
右後谿 冷え
右神門 硬結

左大都 陥凹
左公孫 陥凹
左陰陵泉 腫れ
右足三里 やや陥凹

【背候診】
上背部 ソウ理の粗、発毛あり、オ斑あり
右肺兪 陥凹
右胃兪 陥凹(2番)
左三焦兪 陥凹(1番)
大腸兪 やや陥凹
骨盤部 発毛きつい

<五臓の弁別>

【肝】
10代・・・生理2~3日前から胸の張り、下腹の痛み、イライラ、
     落ち込んで涙が出るなどがある(現在まで)。
29歳・・・産後1年経たずに、生理始まる。
     生理周期の乱れが大きくなる(現在まで)。

産後は子供がいて一人で、生理前にじっくりと落ち込めないのでイライ
ラが爆発することがある。
生理の量が多いのは3~4日目。
生理痛は、生理3~4日目に鈍痛がある。

左関 浮位が消える
肝の相火 左あり
少腹急結 左あり

【心】
前腕の皮膚 少し薄く甘い
右後谿 冷え
右神門 硬結

【脾】
29歳・・・産後1年経たずに、生理始まる。
     体重は産後1年くらいで50kg前後。
30歳・・・断乳する。
     徐々に体重が増える(現在まで)。

間食は毎日
昔か2日に1回出る。
便秘でお腹が張ってつらいことは時々あるが、薬は使わない。
便器に付着することは時々。

舌苔 やや膩苔
脾募 左大きい
神闕 少し引く
左大都 陥凹
左公孫 陥凹
左陰陵泉 腫れ
右足三里 やや陥凹
右胃兪 陥凹(2番)

【肺】
10代・・・生理2~3日前から落ち込んで涙が出るなどがある
     (現在まで)。
29歳・・・産後1年経たずに、生理始まる。
     生理前に喉が痛くなる(現在まで)。
30歳・・・断乳する。
     風邪を引きやすい(現在まで)。

産後、生理前に必ず喉が痛くなり、それがひどくなると熱が出る。
風邪を引くと、喉痛、発熱、頭痛、肩こりがする。

右寸 浮いてて滑ぎみ
前腕の皮膚 少し薄く甘い
右太淵 腫れ
左合谷 少し薄い
上背部 ソウ理の粗、発毛あり、オ斑あり
右肺兪 陥凹

【腎】
10代・・・生理2~3日前から胸の張り、下腹の痛み、イライラ、
     落ち込んで涙が出るなどがある(現在まで)。
27歳・・・希望して数か月で妊娠。
     妊娠5ヶ月で切迫早産で自宅安静になる。
28歳・・・妊娠38週で出産(出産直前の体重66kg)。
     産後すぐに、体重61kgになる。
     子供の夜泣きがひどくぐっすり眠れない。
     寝付き寝起きが悪い(現在まで)。
     翌日にいつも疲れが残る(現在まで)。
29歳・・・産後1年経たずに、生理始まる。
     生理周期の乱れが大きくなる(現在まで)。
     生理前に喉が痛くなる(現在まで)。
     体重は産後1年くらいで50kg前後。
30歳・・・断乳する。
     徐々に体重が増える(現在まで)。
     第二子を希望する(現在まで)。
     疲れやすい(現在まで)。
     風邪を引きやすい(現在まで)。

産後の生理周期は30~50日と長め
産後、生理の出血がスッキリと始まらず、ごく少量の出血が数日続いて
から出血するようになった。
もともと生理周期は35~40日と乱れがちだったが、産後はより乱れている。
夢をよく見る
仕事の締め切りなど何かに追われている夢が多い。

右尺 浮位が消える
全体に脈幅少ない
舌質 やや淡白
気海 やや抜け
関元 冷え
左陽池 冷えきつい
左外関 冷え
左三焦兪 陥凹(1番)
大腸兪 やや陥凹
骨盤部 発毛きつい

<病因病理>

二人目を希望しているが、産後の体調が良くないとのことで来院される。

一人目のお子さんは、妊娠を希望して数か月で授かったが、妊娠5か月か
ら切迫早産で自宅安静となり、妊娠38週で出産した。産後、お子さんの
夜泣きがひどく、しっかりと睡眠を取ることができず、寝付きと寝起き
が悪くなり、いつも翌日に疲れが残るようになった。

正常な出産でもそれなりに気血を消耗するが、産後しっかりと睡眠を取
れなかったこともあり、なかなか腎気を回復することができなかったこ
とが窺える。ただ27歳という若さでありながら、妊娠5か月での切迫早産
を考えると、元々腎虚傾向にあったのではないかと推察される。

この切迫早産と10代の頃から生理前の胸の張り、下腹の痛み、イライ
ラ、落ち込んで涙が出るなどの肝気の昂りのきつさと、生理周期が長め
に乱れがちだったことを合わせて考えると、根である腎気が弱い傾向に
あった可能性は高いのではないかと考える。

腎虚傾向にはあったが、27歳という若さであったので希望してすぐに妊
娠することができた。ただ元々の腎虚傾向のために、出産での気血の消
耗を回復させられないまま、育児という日常的な腎気への負荷が大きく
なったことで、一段腎気を落としてしまい、不調が出やすくなったと考
えられる。

●一段落とした腎気のために、元々長めに乱れがちだった生理周期は更に
長く乱れるようになった。そして主訴である生理前に風邪を引きやすく
なったという症状は、元々生理前に昂ぶりやすかった肝気が産後の腎気
の落ち込みで生理前の気逆がよりきつくなって、頭痛や肩こりを起こ
し、更に上焦に鬱熱を起こしやすくして、喉の痛みやひどいと発熱する
までになってしまうものと考えられる。

●ご本人は風邪を引きやすくなったとのことだが、生理前だけに起こる症
状であることと、切診情報で上背部のソウ理の粗や右肺兪の陥凹など肺
気の弱さは窺われるが風邪が内陥している可能性は低いと思われる。た
だ、この肺気の弱さは肝気の昂りを抑えにくいという華蓋としての役割
を果たしにくくしている側面はあると考える。

●そしてこの状態は、断乳してもなかなか自力で腎気を回復することがで
きず、産後6年経った今も続いている。このように腎気の弱りがきつく
なったために、第二子をなかなか妊娠しにくい状態でもある。

<弁証論治>

弁証:腎虚
論治:補腎

<治療指針>
補腎で産後の腎気の弱りをまずは回復させたい。

生理前のきつい肝鬱気逆は、腎の根をしっかりさせることで徐々に治
まってくるようにしたい。ただ生理前にあまり肝鬱気逆がきつい時には
少し理気することも考えたい。

補腎と共に肺気も立てることで、肝気を収める華蓋としての役割を果た
せるようにもしたい。

<生活提言>
産後、ぐっすりと眠れず、生理前には風邪を引きやすくなり、体調がす
ぐれないことが多いのはお辛いことと思います。出産で落とした身体の
力が、睡眠不足や育児でなかなかうまく回復できていない状況ですね。

喉の痛みや発熱など風邪のような症状以外は、昔から生理前に起こって
いて、それらが産後ひどくなっています。お身体の状態を拝見すると風
邪を引いている感じがしないことから、生理前に起こっている風邪のよ
うな症状は、妊娠しようと頑張っている高温期のお身体の状態が産後過
剰に表れるようになってしまったものと思われます。

つまり、出産から睡眠不足や育児でずるずると身体の土台の力を落とし
てしまい、それでも身体は次の妊娠に向けて高温期の状態を維持しよう
と頑張っているということです。○○さん自身も二人目を望まれており、
身体もそのために頑張っているのですが、体力がそれに追いついていな
いと言えます。

鍼灸治療や自宅でのお灸で、落としてしまったお身体の力を出産前の状
態にまで戻していきましょう。そうすることで生理前の風邪のような症
状も徐々に治まっていくものと考えます。

身体の力を回復するためには、なんといっても睡眠です。今は寝付き寝
起きが悪く、翌日にいつも疲れが残っています。身体の力が無くなると
睡眠の質も悪くなるのですが、ご自身ができることとしては充分な睡眠
時間を取ることです。0時就寝をもう2~3時間前倒しにしても良いと思い
ます。それで朝早く目が覚めるなら、それはそれで構わないと思いま
す。早く起きて、家事をして動き、それで疲れたら昼寝をして体を休め
てあげましょう。家でお灸をすることで睡眠の質も少しずつ良くなって
くると思いますので、まずは睡眠時間を少し長くしてみてはいかがで
しょうか。

最後に、産後、身体の力が回復しきれていないので、お二人目も授かり
にくい状態だと考えられます。ただ上記しましたように、○○さんのお身
体はそれでも排卵して、周期は長めですが、次の妊娠に備え頑張ってい
ます。その身体の頑張りを支えられるように、鍼灸で身体の土台作りを
していきましょう。

ただ自然妊娠にはやはりある程度、ご主人の状態も関係してきます。病
院でも運動率の低さが指摘されていますので、ご夫婦で身体の力作りを
されることをお薦めします。ご夫婦で一緒にお灸しあうというのもよい
かもしれませんね。

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