弁証論治:,

0194:顕微授精しかない!と言われた男性不妊の自然妊娠 巻き爪改善

主訴:顕微授精しか無理といわれた男性不妊 巻き爪

巻きづめについて
 31才の坂道を半年ほど歩いたことがきかけで巻きづめになった。
 雨の降る前や子供がぶつかってもとても痛い。
 肉芽腫が形成されてしまい化膿して痛い
 形成外科でも皮膚科でもこの状態ではなにも出来ないと言われてしまった。
 水田作業など汚ない水には感染が怖くて入れない

来院のきっかけ
 妻が鍼に通っていて、明るくなったのが自分でも嬉しくて気持ちが楽になった。

普段の状態について
風邪はあまり引かない、食欲は普通(規則的、15分ぐらいかけて普通に噛んで食べる、空腹感はいつもあり、食事はいつも美味しい、胸焼けお腹のはりはない。)玄米味噌汁、納豆などよく食べる。間食はお菓子1個、口はよくかわく、違和感はない。

ビール一本ほどの飲酒を週に4,5回
大便は一日一回便通の違和感、出切らない感じ付着などない。
小便は一日1回 残尿感、尿切れの悪さが時々、結婚してから夜間排尿が1日一回5時頃時々ある。
睡眠は11時30分頃寝て6時30分頃起きる、寝つきはよく眠りも深く、寝起きもよい
30歳過ぎぐらいから少し疲れやすい感じがする。翌日に疲れが残ることが時々ある。

切診
左尺位滑弦が明瞭
舌:淡紅から淡白  舌裏怒脹あり
腹診:右季肋部つまり、突っ張り、臍の引きあり、肝の相火なし、裏肝の相火あり、
経穴診:皮膚全体が柔らかく一体感がある。右大陵腫れ、右内関陥凹、右太淵腫れ、左合谷やや陥凹 左外関こそげ(時計している)、右神門硬結あり。左大都冷え 左公孫陥凹(左の拇趾爪内側側肉芽腫あり)。左復溜冷え、足三里陥凹右>左 陰谷ゆるみ右>左 裏陽陵泉こそげ
背候診:背中全体温 右肺兪心兪陥凹発汗 左肺兪心兪陥凹 膏肓筋張り 
右脾兪陥凹 左三焦兪陥凹、左腎兪陥凹(トップ)、右気海兪陥凹、左右大腸兪陥凹右>左。

..時系列
27歳 スノーボードで膝の骨折をし、以来寒いと膝がうずく(右膝全体)
29歳:
 体重73キロ
31歳:
 結婚 食生活が変化、外食が減る(だんだん減って37才現在62キロ)
 坂道の上にある家に引っ越しして半年ほど住んだ。坂を降るところを歩くことがきっかけとなり、左足の拇趾巻きづめとなってしまう。現在まで治らず。
32歳:
 第一子誕生
37歳:
 第二子を希望しているが精子の状態が悪く自然妊娠は無理ではと言われている

..五臓の弁別
…【肝】
左拇趾の肉芽腫巻き爪(肝経側)
妻が明るくなったら自分も気分が楽になった
舌裏怒脹あり
右季肋部つまり突っ張りあり。
裏肝の相火あり
裏陽陵泉こそげ
…【心】
右大陵腫れ、右内関陥凹
右神門硬結あり
右心兪陥凹発汗 左心兪陥凹 膏肓筋張り
…【脾】
結婚して食生活がかわり体重が減った(7年で10キロ減少)
雨の降る前に左肉芽腫が痛い
間食を毎日する
口がかわく
皮膚全体が柔らかく一体感がある
左大都冷え 左公孫陥凹(左の拇趾爪内側側肉芽腫あり)
足三里陥凹右>左
右脾兪陥凹
…【肺】
右太淵腫れ、左合谷やや陥凹
右肺兪陥凹発汗 左肺兪陥凹 
左右大腸兪陥凹右>左。
…【腎】
精子の状態が悪いといわれている
小便:残尿感、尿切れの悪さがある。30代前半から夜間排尿が時々
30過ぎぐらいから少し疲れやすい感じがする。
翌日に疲れが残ることが時々ある。
左尺滑弦が明瞭
臍の引きあり
左外関こそげ(時計している)
左復溜冷え
陰谷ゆるみ右>左
左三焦兪陥凹、左腎兪陥凹(トップ)、右気海兪陥凹
…【経絡経筋病】
左拇趾の肉芽腫巻き爪(肝経側)
右膝が寒いとうずく

..病因病理

主訴はとくにないが、ご夫婦の不妊の原因が男性側の精子の状態がわるく37歳の現在、自然妊娠が成立しないレベルということである。

27歳の時にスノーボードで骨折し以来寒いと膝がうずくが、膝の状態そのものには問題がない。

31歳で結婚し、32歳で自然妊娠第一子が誕生している。またこのころ坂道を下り靴の中で足の爪がぶつかることをきっかけに左拇趾に巻きづめが発症。半年ほどでこの坂道の歩行はなくなったが巻きづめはよくならず、肉芽腫も形成され腫れてしまっており病院での塗り薬を塗り多少は改善されるものの、炎症はいつもあり腫れがある状態が続いている。

結婚をきっかけに外食や飲み会が減り、体重が7年間で10キロ減っており、皮膚も一体感があり体調そのものはご本人が不調を感じないというように大きな問題はないと思われるが、30過ぎから残尿感、尿切れの悪さや夜間排尿などがあり、同時に疲れやすさも感じるようになっていることから、腎気の弱りがあるのではないかと思われる。

食欲や便通の状態が良好であり、食生活の改善によって体重が減少するなど、脾気の状態がよく、内湿も裁かれ負担が軽い状態であるのに、膝や爪などの四肢末端に1度おこってしまった経絡経筋の阻滞が外的要因(坂道の歩行)がなくなっても改善しきらないのは、尿の状態や疲れやすさなどが示すとおり腎気の弱りがあるために、外的な影響を受けやすい末端の経絡経筋を回復させる力が不足しているのではないかと思われる。

また、1度は自然妊娠が成立している状態なのに、37歳時点で男性不妊の状態を指摘されるに至っているのも、腎気の弱りの影響ではないかとおもわれる。

また、肺兪の状態、太淵の状態、合谷の状態などから風邪の内陥もうかがわれ、生命力への負担となっているかと思われる。脾気の良好な状態によってご本人が不都合がないと感じるような健康状態であるが、30代でありながら左の三焦兪、腎兪の陥凹は明瞭である。

..弁証論治
弁証 腎虚 風邪の内陥 左拇趾側の経絡経筋病
論治 益気補腎 疎風散寒  左拇趾側に気血を導く

治療方針
補腎をはかり、生命力をます。同時に風邪の内陥を取り去る。左拇趾側へ直接的に気血の巡りがよくなるように導びいていく。

..生活提言
奥様が鍼灸で体調がよくなったことで、気持ちがとても軽くなったとのこと、私も嬉しく思います。

ご結婚をなさってから、食生活が改善され、体重もBMIの適正値に落ち着くようなよい状態になっていますね。
奥様との新しい生活はご自身の健康にもとてもよく、ありがたいものになっていると思います。

このような状態にありながら、30代からの疲労感や、残尿感があり夜間排尿があるなど、お身体の底力はジリ貧状態になってしまっていることを
示しています。胃腸の状態は食生活で改善されているので、大きな問題にはなっていませんが、この底力が不足している状態は、
坂道の歩行という外的要因がなくなっても末端まで充分に気血の巡りが行き届かないということになり、治り難い肉芽腫を伴う巻き爪を
引き起こしています。

食生活や、精神的なありようをしっかりと支え合う奥様がいらっしゃることはとても頼もしく有難いことですね。
年齢的にとてもお若いいま、しっかりと底力をつけておけば、四肢末端までしっかりと気血がめぐることができ、
健康状態が改善され、安定感が出てくると思います。

1)睡眠をしっかり取りましょう
2)定期的な鍼灸治療を受けましょう
3)毎日の自宅施灸を行いましょう

身体に底力が出て安定感がでると、疲労感が抜け、残尿感なども減り、夜にトイレにいくこともなくぐっすりと睡眠がとれ、
底力が増すという良い循環が生まれます。新しい家族を迎え、きっと楽しい生活が迎えられるのではと思います。

.治療経過
受診前に奥様から精子運動率が、検査する度に下がって、5%ぐらいになってしまい、体外受精(顕微授精)でないと妊娠は出来ないと言われていると。

初診後、体調がよかった。
2ヶ月後、巻きづめのための交代温冷浴と巻きづめの局所の血流改善のためのポイントを積極的に治療していく。
4ヶ月後 妻、自然妊娠。巻きづめ、積極的に治療していく
7ヶ月後、巻き爪がかなりよくなってきた。
9ヶ月後、足の痛みがない