弁証論治:

0001:頭痛、目の奥が痛い

..病因病理

目というのは上焦にあります。この目という場は、しっかりものを見るという気血が集中する場であり、気血が充実していることが求められます。本症例の女性はもともと精神的に緊張しやすく、脾気が弱いため高校生時代から過敏性大腸炎という下痢の続く状態でありました。

脾気の弱さはそのまま20代になっても続き、全身的に気虚気味でありました。全身的な気虚であるということは、鬱滞をおこしやすく、一度鬱滞がおこると、その解消がとても難しくなります。常におこしがちな精神的な緊張は上焦の動き難い肝鬱となり、目という場に充分な気血が循る事が困難となり、目の奥の痛みという腎気の養いが足りないための症状が出現しました。

腎気の養いが足りない目の状態が続いたので、25歳ごろ身体は腎気をより消耗し、腰をこわばらせることでなんとか支えようとし、腰に痛みが発症。上焦で陽気が偏在し肝気が鬱結するため、下焦は相対的に冷えてしまい腎の陽虚をおこしているという状態になりました。

結婚の前後にストレスがあり、一時期脾気がより弱まり体重の減少となるも、精神的に落ち着き、食生活もより充実したため体重も戻り、下痢の頻度は減りました。

しかしながら、2年前の流産により、腎気を落とし、より下焦の場の虚損が進み、常に右の下腹部に鈍痛を感じるようになり、卵管造影の負担がかかったあとは、より痛みが明瞭になりました。腎虚がひとつすすんだわけです。これによって、目の奥の痛みもさらにきつさをまします。

生理の7日前から肝気の上逆のため、イライラし、脾気がついていけず吐き気がおこり、生理の三日前から肝気を支える腎気の弱さが露呈し、右の太もも、下腹、腰が痛く、主訴である右目奥の頭痛が発症し、生理3日後まで続いてしまっています。痛みなどの症状は腎気の不足からおこっているので、生理がきて肝気の高ぶりがおさまってもすぐには収まらず、生理後3日まで続くものであると考えられます。

腎気を補うことで、流産前の状態まで持ち直すことが期待できます。またもともとの脾気の弱さを立て直し気虚をすくうことで、肝気が鬱滞しにくくなり、もっと目の奥の痛みの頻度も低下することが期待できると思われます。

..弁証論治

弁証:脾腎両虚
論治:益気補脾補腎

..治療指針

まず第一に腎気を救い、第二に脾気をたて気を増す。

..生活提言

病因病理、読んでいただけましたでしょうか。東洋医学の言葉がたくさんちりばめてあって、少しわかりづらいですね。解説をさせていただきながら、症状の緩和について、今後のお体作りについて話をさせていただこうと思っています。

痛みを考えるときに、東洋医学の世界では、ものが集まり鬱滞して痛むことと、ものが不足し足りないために痛むものとを弁別して考えます。今回の目の奥の痛みは、頭というからだの上部に、気が鬱滞して凝り固まり痛みになっているように感じられると思います。しかしながら、お体の状態などを拝見するとこの症状は、身体の生命力や体力が弱いためにおこってきたの「生命力の不足のための痛み」であると判断できます。不足のための痛みであるので、頑固で、治りにくく、また流産というからだの力を一段と落としたことでより症状の悪化とつながるわけです。

ですので、まず身体の生命力をあげていくということがとても大切になります。身体の生命力をあげるといったときには、東洋医学では、胃腸の力と、土台の力と二つの考え方をしています。今回の症状の場合、流産をしたことで土台の力(腎気)を落としたことで、症状が一段と悪化しています。

妊娠を考えるときにも、この土台の力(腎気)はとても大切です。まず初めの段階として、腎気をたかめ、流産前までのお体に戻り、症状の軽減をはかること。そして妊娠とつながるような身体作りをしていきたいと思います。

次の段階としては、もともと弱い胃腸の力を高めることによって、食べ物からしっかり栄養を取り込み、体力気力のあるより充実した身体作りを考えていただきたいと思います。

長い目で人生を考えたときには、この胃腸の力をつけてより充実した身体にしていくことがとても大切です。心がけていただければと思います。胃腸の力、土台の力をつけていくのに、ご自宅でのお灸はとても力になると思います。ぜひ、継続して毎日がんばってください。