弁証論治:

0004:右下肢の眠れない痛み。全体が痛い。百会、合谷、右の環跳

..病因病理

1年ほど前に大きな一ヶ月あまり続くイベントで、精神的な無理、肉体的な無理を重ねたことがきっかけで右足の痛みが発症しています。病院で念のため検査をしてもらい、ヘルニアと診断されるものの、そのまま経過。9ヵ月後の夏、ストレスのため3kgやせてしまうこと。足のためと勧められプールや体操を無理してがんばったものの、冷やしてしまったことなどから、長く歩けなくなるほどの、非常に辛い痛みとなっています。その後、温泉に入ると少し痛みが軽減するためなるべく温泉にいくものの、あまり改善せず、現在に致っています。

若いころから、義母との関係でストレスが多い生活を送っておられ、悪阻がひどくやせてしまうほどだったり、胃が急に痛くなりガスが出て治るなど、肝気犯胃をくり返していたことが伺われます。また、ひどくやせてしまうほどの妊娠ー出産は、腎気をひどく痛め第一子の出産後は右下肢のヘルニアになり、手術を受けるほどになっています。

しかしながら、腎気が割合と充実している人であるせいか、重いつわり、ヘルニアなどを経験しつつも腎気の問題が引きずられることはなく、第二子の出産後は母乳が捨てるほど出、ヘルニアも手術によりスムーズに回復するなど、もともとの素体の充実感をあらわしています。

40代ころから、胃痛が軽減するも、眠りが継続しがたくなるという状態になっています。眠りが継続できなくなるのは、気が裏にきちんと戻ることができないということで、肝の根の弱さがうかがえます。ストレスがなくなったわけではないのに、胃痛が軽減していることをあわせると、肝気犯胃がなくなったというよりも、肝の陰陽両虚により、肝気犯胃となる強さが弱まったり、裏に帰ることができなくなったのではないかと考えられます。これは子宮筋腫による、貧血も引き金となり、この段階で素体の器を一段小さくしてしまったのではないかと思われます。

その後、生命力が補われることなく経過し、大きなイベントがあり、精神的、肉体的な無理を重ねたため、主訴の右足の痛みの発症となっています。イベントという肝気を非常に脹る状態であったのに、肝の陰陽が弱く、腎気に大きく負担をかけたために、下肢の腎経、膀胱経に愁訴の出る経絡経筋病となったと思われます。

主訴の痛みはイベントの疲労により腎気を落としたことでの発症なのですが、さほどきつい痛みではなく、季節の変わり目のいつもの体調悪化にともない下肢の状態もそれにつれて痛みが増すという程度でそれほど悪化せずに経過していました。

しかしながら、9ヵ月後の夏、脾気がストレスでかなり痛めつけられたのか体重が3kgほど落ち、足を治すためとプールや体操でがんばったことで、いためていた下肢にかえって強く負担をかけ、耐え難い痛みとなり現在にいたっています。無理を重ねてしまい腎気を落としての主訴の発症ですが、さほどきつくなく経過できたものが、脾気の弱り、冷えの入り込み、弱った経絡経筋への直接的な負担で耐えがたい痛みとなってしまったと思われます。

..弁証論治

脾虚、経絡経筋の冷え、弱り
..治療方針
益気補脾
下肢の経筋経絡の温陽通絡
まず脾気をたて、生命力の充実をはかります。
また温陽して、いためた経絡を暖め、気を導き痛みの軽減をはかります。

..生活提言

もともと土台のしっかりした丈夫なお体だと思います。しかしながら、数々の日常的なストレスにより胃腸に負担がかかり、身体の力を落としてしまったことが、一番の問題だと思われます。

胃腸の状態をよくすることが、足の痛みの軽減、全身状態の好転、季節の変わり目に体調が悪くなってしまってい状態の改善につながります。食後におなかが脹らない程度の食事量になるように気をつけ、間食もできるだけ控えるようにしてみてはと思います。便通がすっきりとすることが目安です。

また、冷えや、弱った下肢に強い負担をかけるのは、症状を悪化させます。まず冷やさないように注意し、全身状態をよくすることで、痛みの改善を図りましょう。

カテゴリー: | 投稿日: 2018/06/27 2018/06/27