弁証論治:

0024:耳鳴、頭痛、口の中が熱い、肩こり。

…病因病理

若い頃から、さしたる体調の悪さもなくしっかりと働ける身体だったというご本人の談より、もともとの素体にはそれほど問題がない方であったと思われます。

それが、67才4月のころ、少し腎気が落ちて、夜中に耳鳴りがした1週間後に精神的なショックにより強い肝気鬱結状態となり耳鳴りの音が強くなり頭の中で蝉が沢山いるような感じになってしまっている。

強い肝気鬱結状態は、熱をもち、口の中が熱くて氷で冷やしたいほどになったり、強い肩こり、耳鳴りを継続させ、喉に痰がからんだりするようになったものの、耳鼻科で処方された小柴胡湯加桔梗石膏エキスの継続服用で、ある程度、上焦の熱鬱による熱が冷まされ耳鳴りが軽減し、翌年68才3月には睡眠導入剤を飲まずに眠れる程度の状況に回復することができた。

しかしながら、68才4月に歯医者にいって治療が始まり、仮の歯をいれたところ肩こる、締め付けられる感じがする、イライラするなどの肝気鬱結状況が悪化し、歯をいれられない状況となる。主訴の1)-4)の状況である。

お体の状態をみると、左右目窓に熱感があり、また後頭部の天柱から風池にかけて、ぼこっとふくらんだ上に熱感、発赤をともなっており、頭部に強い鬱滞と鬱熱がある。

それに比して、大椎付近は大きく盛り上がっているものの、陶道部はゆるみであり盛り上がりの下限あたりの身柱はゆるみ冷えがあり、肺兪は発汗している。左の肝兪はのっぺりとし、筋縮は冷えて動きが悪い感じになり、その左肝兪の下側の左脾兪、左胃兪は大きく陥凹し、左右腎兪はやや陥凹している。

これは、上焦におこった強い肝気鬱結を支えるために腎気は消耗し腎兪の陥凹となり、大椎付近では上焦を支えるための気があつまり形となり盛り上がりとなっているものの腎気が今一歩足りず、陶道の付近の冷え、身柱のゆるみ冷えとなってしまっていると思われる。

強い肝気鬱結状態と消耗し続ける腎気を助けようと、脾胃もがんばっているが、これも左の脾兪、胃兪のおおきな陥凹をみるとだいぶ無理がかかっている上に、その上ののっぺりした肝兪、動きの悪い筋縮をみると、上焦の強い肝鬱状態に対して、かなり継続に無理がかかっているため、素体として支えきれなくなり始めている可能性も示していると思われる。

強い肝気鬱結、鬱熱状態を呈している上焦を疏通させ、全身の負担を取り除くこと、全身を支える腎気を起てることが急務である。

…弁証論治

弁証:肝鬱気逆上焦の瘀滞、腎虚
論治:上焦の疎通降逆、益気補腎

上焦の強い鬱滞を疏通させる。上焦を支えるための腎気をたてる。

…生活提言
精神的なショックから、身体の上部に強く鬱滞がおこっているために苦しく辛い症状となっています。また、入れ歯をいれることなどが、より鬱滞を強くさせてしまうために症状がきつくなってしまっています。

鍼治療では、身体の上部にたまっている鬱滞を取り除くことをまず第一と考え治療していきます。また、身体の上部を支えるためには、身体の土台の力もとても大切です。

身体はしっかりと支えることの出来る土台があって初めて、暢びやかに過ごすことができるのです。いまは、強い症状のため身体の上部に注目が行きがちですが、急性症状がとれたのちには、しっかりと土台作りをしておかないと、再度同じ症状を起こすことになりますし、次に同じ症状をおこしたときには、加齢による土台の消耗も加わりますので、もっと治りがたいものとなってしまいます。

カテゴリー: | 投稿日: 2018/08/02 2018/08/02