弁証論治:

0179:判定日hcg14、ガッツでフォロー!妊娠継続。38歳出産

36歳 主婦 身長161 体重54キロ
主訴:冷え性、不妊症
子供の頃から手足末端が氷のように冷たかった
高校生の頃から生理痛がひどく、吐いて下してしまう。身体が冷えると特に辛い(月に1,2日薬を飲んで対処、薬を飲んで生理痛が治まったり下痢で通じるとおちつく。とくに、20代のはじめに、生理痛の時の薬をロキソニンにしてからは、便もすうっと通じて楽になるのが早い)

大人になってからは冷えでお腹を下すことが多い,下痢になって通じるとすっきりと治る。(下痢は月に2,3日程度)
下痢が多いが、便秘も辛く1日出ないと詰まった感じがしてきて辛くなりイヤだという感じになってしまう。
冷えや生理で詰まってしまう感じが強くなると吐いたりとても気持ちが悪くなり、下痢で通じるとすっきりする。冷えが原因であっても下痢で通じるとすっきりする感じ。

冬は特に毎日冷える、就寝前や起床直後や冬は特に辛い。
足先の冷えは家にいるときに特に辛い。
外出時は逆に暑くなり、のぼせやすいことがある。
上背部を中心におできができやすい。

..普段の状況について
クーラー、季節の変わり目、冬、夕方、食後に調子が悪い
風邪を引くと、喉痛や左右の頭痛がおこることがある(あまり風邪は引かない)
お腹を下しやすいとき:外出直前や、車での外出中(旅行)、スーパーなどの寒いところ。下痢をするとすっきりする。

食欲は普通、食事は不規則で空腹感は時々、美味しく食べられる。胸焼けは時々。
間食は毎日。スナック菓子やチョコ、月に2回ぐらいはアイス。
飲み物は1000cc以上。
喉や口は渇かない、喉が時々粘ることがある。
酒たばこはしない。

大便は1日に0-2回、時々お腹が張って辛い
出切らない感じは時々、バナナ、細い、軟便、下痢状、
時々付着する。

小便は一日5,6回
残尿感はめったいにない、尿切れは時々悪い。時々
色が悪い(白濁、茶色、黄色)夜間尿はない

睡眠は0-1時過ぎに寝て5,6時間(夫の仕事の関係、不足気味)
寝つきは普通、多夢、寝起きは悪い
時々疲れが残る

..婦人科について
初経は13歳、28日周期5日間、
親指大の塊、小さい塊、量は普通。
生理の前2,3日頃から下腹の痛み、前頭部の頭痛→生理がくるとよくなる。
生理痛は昔からひどく、薬を飲まないと絶えられない。
排卵期には下腹部の張り、下痢気味になる。

32歳から妊娠希望
小さなポリープが子宮にあるが問題はないと言われた。
タイミング、人工授精などで2年。
体外受精は採卵2回移植4回するも妊娠出来ず。

..時系列
子供の頃から手足末端が氷の様に冷たい
高校のころから、生理痛がひどい(冷えると特に辛い)
20代の前半、生理痛の薬をロキソニンに変えてから、生理痛が非常に楽になった。
大人に成ってからは、冷えでお腹を下すことが大きい。
体重の変化なし
32歳から妊娠希望でタイイング、人工授精に2年
34歳から体外受精、採卵2回、移植4回するも妊娠せず
36歳 ビッグママ治療室初診

..切診
右の寸口から関上、少し甘い
左関上やや固い
舌 やや淡白 中央に膩苔、中央に裂紋 戦アリ、舌裏怒脹あり
心下はりがあり、
脾募ややアリ
肝の相火あり、右>左
右の上腹部胃経のラインも突っ張り
裏肝の相火きつい
臍周抜け
気海抜け
小腹急結右あり
内関陥凹
右外関陽池冷え
右太淵腫れ
右合谷腫れ、固い発汗
霊道 陥凹
左公孫陥凹
左大都割れ
三陰交こそげ
足三里 右大きな陥凹、左陥凹
陰陵泉、曲泉つっぱり
大腿胆経突っ張り
下腿胆経こそげ

上背部腠理の疎、発汗 上背部にはニキビ(昔から)
右の肺兪抜け陥凹大きい
右厥陰兪、心兪陥凹 抜け
左厥陰兪 心兪筋張り
右脾兪から腎兪まで筋張り 腎兪が根
左脾兪から三焦兪まで筋張り、三焦兪が根 脾兪は横にそれて陥凹
背中は温

..五臓の弁別
…【肝】
子供の頃から手足が氷の様に冷たい
生理痛がひどく吐いて下す状況、薬を飲まずにいられない
お腹を下しやすいとき:外出直前や、車での外出中(旅行)下痢で出るとすっきりする。
冷えで生じた下痢であっても下痢で通じるとすっきりする。
左の関上やや固い
戦アリ、舌裏怒脹あり
肝の相火あり、右>左
裏肝の相火きつい
小腹急結右あり
大腿胆経突っ張り
下腿胆経こそげ陰陵泉、曲泉つっぱり
陰陵泉、曲泉つっぱり

…【心】
心下はりあり
内関陥凹
霊道 陥凹
右厥陰兪、心兪陥凹 抜け
左厥陰兪 心兪筋張り

…【脾】
冷えでお腹を下すことが多い
クーラー、冬、季節の変わり目、夕方に調子が悪い
食後に胸焼けが時々する。
間食は毎日、飲み物は1000cc以上
便通 出切らない感じが時々、時々付着 形はバナナ、細い、軟便、下痢状
生理痛の時に前頭部の頭痛、生理痛は吐いて下す
1日でも便が出ないと辛く来てイヤな感じになる。
冷えで生じた下痢であっても下痢で通じるとすっきりする。
右の寸口から関上、少し甘い
舌 やや淡白 中央に膩苔、中央に裂紋 
脾募ややあり
右の上腹部胃経のラインも突っ張り
臍周抜け
気海抜け
左公孫陥凹
左大都割れ
三陰交こそげ
足三里 右大きな陥凹、左陥凹
陰陵泉、曲泉つっぱり
右脾兪から腎兪まで筋張り 腎兪が根
左脾兪から三焦兪まで筋張り、三焦兪が根 脾兪は横にそれて陥凹

…【肺】
足先の冷えは家にいるときに特に辛い。
外出時は逆に暑くなり、のぼせやすいことがある。
おできができやすい。
お腹を下しやすいとき:スーパーなどの寒いところ
右の寸口から関上、少し甘い
右太淵腫れ
右合谷腫れ、固い発汗
上背部腠理の疎、発汗 上背部にはニキビ(昔から)
右の肺兪抜け陥凹大きい

…【腎】
子供の頃から手足が氷の様に冷たい
身体が冷えると生理痛がよりひどい
冬は特に毎日冷える、
クーラー、冬、季節の変わり目、夕方に調子が悪い
起床直後が辛い
足の冷えは家にいるときに辛い(動かないから陽気不足が目立つ)
外出時は逆に暑くなり、のぼせやすいことがある。
おできができやすい。
睡眠不足気味寝起きが悪い、時々疲れが残る
排卵時に下痢気味
右外関陽池冷え
右脾兪から腎兪まで筋張り 腎兪が根
左脾兪から三焦兪まで筋張り、三焦兪が根 脾兪は横にそれて陥凹

..病因病理

子供の頃から手足が氷の様につめたいく、お腹が弱くひえにあたると下痢をしてしまうこと。また冬になるとより辛かったり、生理痛は冷えで悪化することから、腎気を中心として陽気不足が明瞭である。

家にいて動かないと足先の冷えがよりつらくなり、逆に外出すると暑くなってしまいのぼせやすい。腎気を中心にした陽気不足があるので、動かないと足先の冷えがよりつらくなりやすい。また外出して大きく動けばのぼせやすいのは、華蓋としての肺気が弱く気虚気味であるため、しっかりと気の動きを納めることができないことと、納まりどころとしての腎気の弱さがあるためではないかと思われる。

生理痛も吐き気を伴うほどの強い。これは、腎気の弱さがあるため肝鬱を生じやすく、強い気の上逆となり胃をついてしまうためである。また、強い肝鬱は肺気にも負担にもなりやすく、また肺気の弱りがあるために、肝気でカバーするということから気滞が生じやすくなるという悪循環も生じている。

お腹が冷えにあたると下痢しやすいということだが、通じるとすっきりして疲労感もなく痛みや吐き気の症状もおさまることから、冷えなどが素体に負担がかかると、身体が敏感に反応して、下痢によって調整できていることが理解できる。また、何らかの原因で便通が1日なくても全身が辛くなるも、通じることで解消している。気滞が生じやすく全身の負担と感じやすいことから、やはり腎気の弱さを中心とする全身の気虚、そしてそれにより肝鬱が生じやすいことが伺えるが、逆に外的な要因を敏感に受け止め、処理できていることがわかる。

肺気の弱さは上背部を中心におできができやすいことや、右の肺兪の大きな陥凹などからも伺える。また三焦兪、腎兪を根として脾兪までの筋張り陥凹から、腎の弱さが中心であり、脾胃まで及んでいると思われる。

腎気肺気を中心として気虚気味の素体であり、肝鬱を生じやすく、肝鬱が全身に負担をかけている。しかしながらも、現時点でなんらかの原因で生じた肝鬱も、生命力を活性化させ気滞を疏通させる方向で働いている。そのため脾胃の問題を広げるには致っていない。これは気虚気味の器でありながらも、ご本人が用心心身共に深く、それなりの大きさの範囲で生活ができているからではないかと思われる。

妊娠の希望に対しては、気虚気味であること、生活の都合上充分な睡眠がとりきれず、腎気に負担をかけていることも影響が大きいと思われる。

..弁証論治
腎の陽気不足を中心とした腎虚肝鬱 肺気の虚
益気温養補腎 補肺

治療方針
腎の陽気不足を補い、肺気の蓋をしっかりし、全身の気虚を救う
腎気の充実より女子胞力の充実を狙い妊娠に向けた治療とする。
肝鬱は問題としない。

鍼灸治療:初診
右内関ー左大都(SP2)、左公孫 三陰交 大巨(ST27)、
肺兪、右厥陰兪
右脾兪(BL20) 左三焦兪 右腎兪(BL23)

着床のころ
肺兪ー腎兪(BL23)ー次髎(BL32) 骨盤部冷え
臍 三里 三陰交 左外関

妊娠初期
臍 三陰交 左外関、陽池(冷え取り) 陰陵泉 陰谷
脾兪(BL20) 胃兪 氣海兪 次髎(BL32) 大腸兪(BL25)など。
妊娠初期の不妊治療ポイントの図

..治療経過
36歳
初診 週に1-2日の鍼灸治療スタート 自宅施灸スタート(全体に火傷ができやすい)
1ヶ月後ーHR周期2段階移植ーβhcg16(今までで一番数字はよかった)ー継続できず
3ヶ月後ー採卵ー採卵時の血流がよいと言われた。3日目でG5 胚盤胞は適応外
5ヶ月後ー食事指導 全体にタンパク質が少ない、リストから指導
37歳
6ヶ月後ー採卵 D3では卵が15個見えた 6個採卵3日目G3が2つ、胚盤胞G5に近い4
7ヶ月後ーメインディッシュに炭水化物が多いので指導
10ヶ月後ー転院 抗核抗体が高いと言われる
11ヶ月後ー採卵 成熟卵ー3cellで止まる 未成熟卵ー6日目胚盤胞
1年後 凍結胚盤砲移植 判定日βhcg14 ここから毎日鍼灸治療 →131→1600
妊娠12週までは週に3回の鍼灸治療を継続、その後は週に1-2回で出産まで継続
38歳 無事に3300グラムオーバーの女児を出産 胎盤が大きいと言われた。