弁証論治:

0224:側弯、不妊、イボの弁証論治

症例集→子宮内膜症、チョコレート嚢胞、側湾、なんど体外受精しても妊娠できない(42歳出産)【case:0224】

..39才 女性、身長159センチ、体重46.5キロ
…主訴 不妊 イボ、脂漏性皮膚炎

湿疹は1年ぐらい前から週に1-2回甘いものを食べたときにおこる
自分では腎臓が弱いからではないかと思う。
医者に行って薬をもらったけど、甘いものをやめられないせいか、ほとんど効果はない

…普段の状態について
季節の変わり目に体調が悪い。食べるのは遅く食事は時々美味しく感じる。時々胸焼けがする。総菜パンなどの間食を週に1度ぐらい。甘いものは適宜。

舌はときどき乾く、粘ることはめったにない。
大便は1-2日に1回、お腹がはることもない。出きらない感じは時々、
便は太い、細い、コロコロ、こぶし大。付着することはない。

小便は1日に3-4回、残尿感はない、
ここ1,2年時々夜間排尿に起きる(3時か4時ぐらい)
睡眠は11時に寝て7じにおきる。
寝つきはよい、夢はみない、寝起きは悪い(すべてむかしから)
時々翌日に疲れが残る。

…婦人科の状況
35才 生理痛 子宮内膜症、チョコレート嚢胞と診断される
38才子宮内膜症のためにリング装着、片側の膿疱処置→生理痛軽減
初経は16才、28-34日型
生理前の2-3日から胸が張り、イライラする、
高温期に出ていた症状は生理がくるとおさまる。
生理初日と二日目に鈍痛、色は濃く、固まり、粘った膜。
(チョコレート嚢胞の処置前は2日ぐらい前からうずくまるほど痛かった)

…時系列 不妊治療歴

10代 ハウスダストでくしゃみ鼻炎(現在も継続)
   高校時代から腰痛がある。側湾もある
20代は30-40日周期ぐらいで生理が来ていた。
 ストレスで下痢っぽいこともある(現在も継続)
32才 妊娠希望
    タイミング指導、人工授精などを受ける。
35才 子宮内膜症、チョコレート嚢胞と診断される
38才 採卵 4つ凍結
   3月から7月にかけて 3回の移植 すべて妊娠出来ず。
   頭から皮膚炎が始まる、唇の皮がむける、顎関節症になった
   重いものを持ってから腰痛発症→継続(いろいろな治療を受けて現在は少しよい)

38才 リング装着、膿疱処置 →生理痛の軽減
   11月 移植ー妊娠出来ず
   12月 採卵ー 2段階移植 妊娠出来ず。
  気持ちを切り替えるために、体外受精の治療を休む

39才 ビッグママ治療室受診

…切診
脈は全体に輪郭が甘い
舌薄白苔 淡白 白膩苔 歯痕あり、紅点なし、舌裏怒脹太い
左脾募めくれあり、脾募全体に薄くアリ
臍は引いてくる感じあり、
気海やや抜け、関元明瞭に抜け
少腹急結左は抜けた感じがあり、圧痛、右は抵抗感があるが圧痛はなし。
掌の皮膚乾燥して薄っぺらい感じ。
右太淵 腫れ
左合谷こそげ
左外関 動きが悪い
霊道こそげ 右<左
爪の根元が少し暗い感じ
左大都空き、
左公孫大きい陥凹
左湧泉 冷え
左三陰交冷え、大きな陥凹
左復溜 冷え、陥凹
足三里 少し陥凹
陰陵泉 つっぱり

上背部 少し腠理の疎、細絡、うぶ毛アリ
腰部は側湾(右にやや凸?前後にも不安定感あり)
骨盤部冷え(背中はオン)、皮膚が薄く硬い
大椎少し発汗
右風門大きく陥凹
左肺兪陥凹
右心兪大きく陥凹
左右脾兪、胃兪 大きく陥凹
右の腎兪こそげ、筋腹がない感じ
左の腎兪 点でぐっと深い
右の次髎つまり

…五臓の弁別
…【肝】
生理前の2,3日から胸が張りイライラ→生理で納まる
手術前はうずくまるほどの生理痛
生理周期が28-40ぐらい
子宮内膜症、チョコレート嚢胞などがある
舌紅点なし、舌裏怒脹太い
少腹急結左は抜けた感じがあり、圧痛、右は抵抗感があるが圧痛はなし。
…【心】
霊道こそげ 右<左
右心兪大きく陥凹
…【脾】
甘いものを食べると湿疹が出る
季節の変わり目に体調が悪い
食事は時々美味しく感じる、時々胸焼けがする
間食は総菜パンを週に1度、甘いものは適宜
大便が出きらない感じは時々、コロコロ、太い、細いなどが混じる
ストレスで下痢っぽいことがある
頭からの皮膚炎、唇の皮がむける皮膚炎と同時に顎関節症になった
舌薄白苔 淡白 白膩苔 
左脾募めくれあり、脾募全体に薄くアリ
左右脾兪、胃兪 大きく陥凹
左大都空き、
左公孫大きい陥凹
左三陰交冷え、大きな陥凹
足三里 少し陥凹
陰陵泉 つっぱり
…【肺】
10代からハウスダストでくしゃみ鼻炎
頭から皮膚炎、唇の皮がむける
掌の皮膚乾燥して薄っぺらい感じ。
右太淵 腫れ
左合谷こそげ
上背部 少し腠理の疎、細絡、うぶ毛アリ
大椎少し発汗
右風門大きく陥凹
左肺兪陥凹
…【腎】
ここ1,2年夜間排尿におきる
翌日に疲れが時々残る
高校時代から腰痛、側湾
気海やや抜け、関元明瞭に抜け
左外関 動きが悪い

左復溜 冷え、陥凹
左湧泉 冷え
腰部は側湾(右にやや凸?前後にも不安定感あり)
骨盤部冷え(背中はオン)、皮膚が薄く硬い
右の腎兪こそげ、筋腹がない感じ
左の腎兪 点でぐっと深い
右の次髎つまり

…【気虚】
脈が全体に甘い
舌 歯痕あり、
臍は引いてくる感じあり、
掌の皮膚乾燥して薄っぺらい感じ。
爪の根元が少し暗い感じ
上背部 少し腠理の疎、細絡、うぶ毛アリ
腰部は側湾(右にやや凸?前後にも不安定感あり)
骨盤部冷え(背中はオン)、皮膚が薄く硬い
     

…病因病理
10代から腰痛や側湾、鼻炎があり、腎気の弱さを感じさせる素体であり、生理周期も30-40日ぐらいであったが大きな問題もなく成長していた。
結婚後32才より妊娠希望はあるもののなかなか妊娠せず、6年後の38才より体外受精をはじめるも、妊娠出来ず。

体外受精をはじめてのちに、頭からの皮膚炎、唇の皮がむける、顎関節症になるなど、脾気への負担、上焦の鬱熱などの症状が出ている。これは不妊治療の負担が腎気に影響し脾気への負担となったのではないか。また腎気の不足とストレスそのものにより肝気が立ちやすくなり上焦に熱がこもりやすくなったのではないかと思われる。この皮膚炎は甘いものを食べると出てくるので、直接的には脾気の弱さが原因だが、体外受精を始めてから出現しているので、全身の器がひとつ小さくなったことにより脾気へのバックアップがおちたこと、肝気も立ちやすくなったことで症状が出現していると考えられる。

初診時にお身体を拝見すると、皮膚全体が薄く少し荒れており、また背部の脾兪、胃兪、腎兪が大きく陥凹し、中央にある背骨が側湾(だけではなくねじれているような不安定さがある)しており、上背部は少し腠理の疎があり肺兪風門は、陥凹、骨盤部の皮膚は冷え、薄く固い。そして末端の経穴反応はあまりめいりょうではない。脉状も全体に甘く、舌は淡白歯痕胖大であり、脾腎を中心にした弱さのなか、皮膚、末端の養いが不足していると思われる。

脾腎の器が非常に小さいので、甘いものを少し食べると脾気への負担となり内湿を生じ、腎気への負担ともなり肝気が立ちやすくなり上焦への熱感となりやすい。この状態で大きな愁訴がないのは、ご本人がそれなりに、睡眠、食事、無理のない範囲での生活と心がけているからだと思われる。

妊娠に関しては、採卵して受精卵そのものは良好の状態で出来ているが、移植しても妊娠しないということである。現時点の体表観察からは背部腧穴にうかがわれる弱りが非常にきつい。脾腎を中心に子宮への生命力をあつめていき、妊娠、妊娠の継続をはかりたい。

弁証論治
脾腎を中心とした気虚
益気補脾 補腎温養 温養子宮

治療方針
器が小さく色々な愁訴をもちやすいが、脾気を養い気虚をすくうこと、
腎気を温養し下焦を養い妊娠出産出来る身体作りをしていく。

初診時の施術

初診 ビッグママ治療室初診 週に一度の鍼灸治療、自宅施灸

1)左外関、足三里、左公孫(鍼してミニ灸)、左三陰交灸頭鍼 
 ミニ灸左復溜、左湧泉 温灸気海、関元
2)左肺兪 右心兪 ジオン
3)脾兪、胃兪、右腎兪 鍼して温灸
右の腎兪はこそげて筋腹が極端にない感じ。10番で鍼して温灸を充分にいれる。
☆側湾部の背部腧穴に対しては、ゆるみの大きい方を取ることが多い。

3ヶ月後 少しづつタンパク質を増やすように、ウオーキングをするように指導

4ヶ月後 朝食を食べるように指導

5ヶ月後 皮膚の弾力がアップしてきている、白膩苔が薄くなる

8ヶ月後 採卵→2つ胚盤胞へ凍結できず

9ヶ月後 イボが出来てウオーキングが出来ないと白膩苔が出てくる

10ヶ月後 採卵→ひとつ胚盤胞に凍結出来た
     背中辛い

11ヶ月後 移植 妊娠出来ず。ただ、いままでで一番妊娠判定時のホルモン数値はよかった。

13ヶ月後 採卵→空砲 14

ヶ月後 採卵 成熟卵が3つ 未熟が1つ 胚盤胞2つ凍結

15ヶ月後 移植→妊娠

妊娠後 

 9w つわりがひどい
 11w 耳がぼーっとする

 13w はきすぎてけいれんするほどだ
   背骨の側湾がきつくなっていっている。皮膚の薄さもます

 15w 妊娠糖尿病と診断され食事指導を受ける

 21w おっぱいマッサージをしたら、お腹が痛くなってしまい動けなくなった。
   背骨の不安定さ↑

 29w 右足のふくらはぎがつる、息があがっている
   治療院への通院は遠方(2時間ほどかかる)ので終了とする。
   なるべく安静をこころがけるように指示 

 35w 血圧が高くなり入院→退院後自宅安静指示が出る

 40w 無事に自然分娩にて3000㌘弱のベビちゃんを出産。おめでとうございます。

治療経過
39才
△月 ビッグママ治療室初診 週に一度の鍼灸治療、自宅施灸
△+3月 少しづつタンパク質を増やすように、ウオーキングをするように指導
△+4月 朝食を食べるように指導
△+5月 皮膚の弾力がアップしてきている、白膩苔が薄くなる
△+8月 採卵→2つ胚盤胞へ凍結できず
△+9月 イボが出来てウオーキングが出来ないと白膩苔が出てくる
△+10月 採卵→ひとつ胚盤胞に凍結出来た
     背中辛い
△+11月 移植 着床、妊娠出来ず。ただ、いままでで一番妊娠判定時のホルモン数値はよかった。
△+13月 採卵→空砲
△+14月 採卵 成熟卵が3つ 未熟が1つ 胚盤胞2つ凍結
△+15月 移植→妊娠→継続

妊娠後 
 9w つわりがひどい
 11w 耳がぼーっとする

 13w はきすぎてけいれんするほどだ
   背骨の側湾がきつくなっていっている。皮膚の薄さもます
 15w 妊娠糖尿病と診断され食事指導を受ける
 21w おっぱいマッサージをしたら、お腹が痛くなってしまい動けなくなった。
   背骨の不安定さ↑
 29w 右足のふくらはぎがつる、息があがっている
   治療院への通院は遠方(2時間ほどかかる)ので終了とする。
   なるべく安静をこころがけるように指示 
 35w 血圧が高くなり入院→退院後自宅安静指示が出る
 38w 出産直前まで自宅施灸を継続し、順調な経過で自然分娩にて2800グラムオーバーの 赤ちゃんを出産。おめでとうございます。