弁証論治:

0225:閃輝暗点を伴う頭痛の弁証論治

33歳、女性 事務職
身長:166cm、体重:57kg
家族構成:夫

主訴・・・①偏頭痛、②生理痛

..【主訴について】

①偏頭痛・・・高校生の時に原因不明の頭痛が続き、脳の検査を受けた が、異常はなく、鎮痛剤を処方され、服用しているうちに治まる。20歳を過ぎ た頃から生理の前後に頭痛が時々起こるようになったが、それほどひどくは無 かった。

28歳で初めて閃輝暗点を伴う頭痛が起こった。以降、頭痛の前には必ず 閃輝暗点が起こるようになった。閃輝暗点が30分して落ち着くと頭痛が起こ る。今は閃輝暗点が起こると頭痛薬を飲むおかげか、頭痛は3時間ほどで治ま る。痛む部位は側頭部。閃輝暗点は視界がぼやけてチカチカ光が眩しくなり、 ギザギザが見える。

28歳から数年間は年に2~3回だったのが、徐々に悪化し、現在は多いときで月 に2~3回。生理前後、季節の変り目、忙しい時、夕方、疲れやストレスが溜ま った時、体調の悪い時、肩が凝っている時、目が疲れている時に起こることが 多い。朝から起こることもある。ただ休みの日はほとんど頭痛は起こらない。

生理前には喉が渇いて水を飲むが、トイレは近くならずむくむ。そういう時に 閃輝暗点が起こることが多く、閃輝暗点が起こるとすぐに頭痛薬を服用する。 30分後、頭痛が起こると、トイレが近くなり、下痢もする。生理前は無性に冷 たい炭酸飲料を飲みたくなり、飲み過ぎると翌朝に頭痛が起きる。

また毎回ではないが、偏頭痛の始まる前は首筋に違和感、生欠伸、空腹感が起 こることがあり、偏頭痛が始まるとトイレが近い、下痢の他に、吐き気が起こ ることがある。

春から3ヶ月ほど鍼灸治療に週に1回通い、その3ヶ月間は偏頭痛がしたのは1回 だけだったが、事情があって治療を止めた。

夏から漢方医に掛かると、神経質で胃が原因の頭痛だと言われ、黄連湯を 処方してもらうが頭痛は良くならなかった。胃痛は無くなった。胃痛は前から 頻繁ではないがたまにあり、鍼灸治療を受けていた間もあった。

胃痛から始まり、下痢をすることもある。中学生の頃に過敏性胃腸炎で整腸剤 を飲んでいた。

②生理痛・・・15歳から生理痛が起こるようになり、25歳の頃に生理痛がひど くなったので病院に掛かると、子宮筋腫、内膜症、腺筋症の診断を受ける。30 歳くらいから生理の量が多くなり、生理の終わり頃にはふらつきなど貧血の ような症状が出るようになった。

生理痛は更にひどくなり、貧血のふらつきが 生理に関係なく起こるようになったので、32歳の時に子宮筋腫の摘出、内膜症 を剥がす手術を受ける。この手術で生理の量、生理痛ともにだいぶん軽くなっ たが、最近徐々に生理血の塊の量が多くなっている。

生理痛は生理の1週間前から徐々に痛くなり、生理2~3日目にピークとなる。 生理血の量は多く、手術前には出産かと思うような塊が混じっていた。

..【同時に起こるようになった体調の変化】
耳鳴り・・・閃輝暗点を伴う頭痛がするようになってから、夜寝る時やお風呂 に入っているときなど静かな時に、脈打つようなドクンドクンという耳鳴りが するようになった。耳鳴りは右の耳だけに聞こえる。ひどい時は週に1回くら い起こり、無い時は1ヶ月ほど耳鳴りが無いこともある。生理の前後、疲れた 時、横になった時に起こる。鍼灸治療を受けている間は、耳鳴りはあまり気に ならなかったが、たまにあった。

足のむくみ・・・生理前じゃなくても夕方には足のむくみを感じる。生理中も むくみが酷く、ふくらはぎが痛む。

体のだるさ・・・筋腫の手術をする1年くらい前から感じるようになる。手術 をしてほとんど感じなくなる。

ふらつき・・・生理の終わりの頃に貧血で立ちくらみがしてふらつく。手術を して、生理終わり以外のときはふらつくことは無くなった。

..【その他の治したいこと】

飛蚊症・・・30歳の冬からひどくなる。それ以前か白い壁とかを見ると見えて はいた。
顎関節症・・・32歳春頃から左顎が痛み、顎関節症の診断を受ける。生理の前 に左顎が痛むことが多い。
光がまぶしい・・・最近、視力が低下していて、コンタクトの度が強いせい か、光がまぶしく感じる。

..【筋腫の手術の前後における体調の変化】

…(良い変化)
生理の量、痛みともに軽くなる。
体のだるさがほとんど無くなる。
疲れもだいぶん減る。
生理の終わりの貧血のふらつきがましになる。

…(良いか悪いか分からない変化、変化なし)
偏頭痛は変化なし(引っ越して逆に増える)
お通じの頻度はそれほど変わらないが、出る便が軟便か下痢になった。
生理前の諸症状、耳鳴り、足のむくみ方、飛蚊症、生理前の左の顎の痛みは、 変化なし。

..【その他気付いたこと】
昔からお風呂で半身浴をしても汗をかかない。

..【ふだんの状態について】

…(体調の悪い変化)
季節の変り目、夕方・・・偏頭痛が起こりやすい。
肉体疲労時、気を使った後、睡眠不足のとき、風邪を引いた時

…(体調の良い変化)
記載なし

…(風邪の時)
喉の痛み、下痢、頭痛

…(食事)
食べる量は普通。
食事時間は、朝6:30、昼12時、夜20時。
30分以上掛けて普通に噛んで食べる。
食事前の空腹感はいつもあり、おいしく食べれる。
食後にお腹が張ったり、胸焼けは、時々。
間食はよくある。

…(水分)
水分摂取は1日に200ccのコップで3杯以上。
主に緑茶を飲む。
喉の渇きは時々で、生理前にある。

…(飲酒)
ほとんど飲まない。

…(大便)
2~3日に1回出る。
便秘でおなかが張ってつらいことは時々あるが、便秘薬を飲むことは無い。
便が出切らない感じは時々。
便は細い、軟便、下痢状で、量はこぶし大。
生理前から生理中は、同じ軟便だが、間隔があく。
便器に付着することはよくある。
臭いは普通。
もともと便秘気味で硬い便が出ていたが、手術した後くらいから軟便や下痢ぎ みな便になった。

…(小便)
昔から1日5回
残尿感、尿切れが悪いこと、夜間排尿はめったに無い。
尿の色が白濁なことは時々。

…(睡眠)
就寝23:30、起床6:00
寝付きは良い。
昨年あたりから仕事が忙しい時期に眠りは浅くなり、その時は寝起きは悪い。
そうすると翌日に疲れが残り、こういうことがよくある。朝起きて体が重い日 はたいてい頭痛が起こる。
仕事の夢をよく見る。

..【婦人科の状態】
初経13歳。
生理周期は31日型で7日間。

生理に伴う体調不良はいつもある。
排卵時期に、下腹部の痛み、頭痛。
高温期に、胸の張り、下腹部の痛み、吐き気、イライラ、不安になる、疲れ、 頭痛、めまい、食欲が増す。
生理が始まると疲れ以外の症状はほとんど治ま る。
生理前のこれらの症状は筋腫手術の前後で変わりはなく、逆にひどい時も ある。

生理の終わり頃、頭痛や立ちくらみが起こる。
立ちくらみは手術してだいぶん ましになる。
今年春以降、生理の最終日に必ず頭痛が起こっている。

生理血の色は出血した時の色で小さい塊が混じる。
生理の量は多い。
生理の量が多いのは、生理2日目と食後。

..【これまでにかかった大きな病気】 子宮筋腫、内膜症、腺筋症(上記参照)。

<時系列の問診>
中学生頃・・・生理痛が起こるようになる(現在まで)。

高校生頃・・・頭痛が頻発し、鎮痛剤で治まる。

20歳頃・・・体重50kg
    生理の前後に頭痛がするようになる(現在まで)。

25歳・・・子宮筋腫、内膜症、腺筋症が判明。

28歳・・・よく食べるようになり、体重が増え始める。
    閃輝暗点を伴う偏頭痛が起こる(現在まで徐々に悪化)。

30歳・・・結婚。
生理の量が多くなり、生理痛がひどくなる。
    体のだるさを感じるようになる。
偏頭痛の頻度が増える(現在まで)。
    飛蚊症がひどくなる(現在まで)。

32歳春・・・仕事が忙しいと眠りが浅くなる(現在まで)。
    生理の前に左顎が痛むようになる(現在まで)。

32歳夏・・・子宮筋腫、内膜症を手術し、生理の量、痛み共に減る。
    体のだるさがほとんど無くなる。
    体の疲れが減る。
    お通じが軟便になる。

32歳秋・・・引越して歩くことが減る。
    頭痛が月に2~3回起こるようになる(現在まで)。

33歳春・・・鍼灸治療を受ける(3ヶ月間)。
    この期間、頭痛がほとんど無くなり、耳鳴りも減る。

33歳夏現在・・・体重57kg。
    鍼灸治療を止めて頭痛が再発する。
    黄連湯を服用し、胃痛は良くなったが、
    頭痛は変化なし。
    生理の出血に塊が多くなってきた。
    最近光がまぶしい。

脉診
全体に輪郭が甘い中に芯がある
右尺~関に掛けてが特に中位に芯がある

舌診
舌辺 暗紅
舌苔 やや濃い
舌尖 瘀斑
舌裏怒張 細くあり

腹診
お腹全体に張っている
肝の相火 ややあり
少腹急結 左あり
関元 やや抜け

経穴診
内関 陥凹(右>左)
右外関 こそげ、奥に亀裂
左外関 こそげ
右神門 大きい腫れ、奥に硬結
左神門 大きい腫れ
左大都 割れ
左公孫 陥凹、板
左湧泉 冷え
左申脈 冷え、動き悪い
両三陰交 やや筋張り
両足三里 やや陥凹
陰陵泉 突っ張り(右>左)

背候診
大椎周り 細絡あり
大椎 ふくらみ、冷え
両肺兪 陥凹、やや発汗
左胆兪 陥凹大きい
右胆兪 陥凹
左腎兪 亀裂
右次髎 つまり

<五臓の弁別>

痛む部位は側頭部。
閃輝暗点は視界がぼやけてチカチカ光が眩しくなり、ギザギザが見える。
生理前後、忙しい時、ストレスが溜まった時、肩が凝っている時、目が疲れて いる時、気を使った後に頭痛は起こることが多い。
朝から起こることもある。
ただ休みの日はほとんど頭痛は起こらない。
偏頭痛の始まる前は首筋に違和感、生欠伸。
偏頭痛が始まると吐き気が起こる。
ここ数年、年末の休みになると偏頭痛が起こり、数週間続く。
偏頭痛が起こりやすい。夜寝る時やお風呂に入っているときなど静かな時に、
脈打つようなドクンドクンという耳鳴りがする。
耳鳴りは生理の前後、横になった時に起こる。
鍼灸治療を受けている間は、耳鳴りはあまり気にならなかったが、たまにあっ た。
喉の渇きは時々で、生理前にある。
仕事の夢をよく見る。
高温期に、胸の張り、下腹部の痛み、吐き気、イライラ、不安になる、疲れ、 頭痛、めまい、食欲が増す。
生理が始まると疲れ以外の症状はほとんど治まる。
生理前のこれらの症状は筋腫手術の前後で変わりはなく、逆にひどい時もあ る。

20歳・・・生理の前後に頭痛がするようになる(現在まで)。
30歳・・・生理痛がひどくなる。
    体のだるさを感じるようになる。
32歳春・・・生理の前に左顎が痛むようになる(現在まで)。
32歳夏・・・子宮筋腫、内膜症を手術し、生理の量、痛み共に減る。
    体のだるさがほとんど無くなる。
    体の疲れが減る。
32歳・・・引越して歩くことが減る。
    頭痛が月に2~3回起こるようになる(現在まで)。
33歳春・・・鍼灸治療を受ける(3ヶ月間)。
    この期間、頭痛がほとんど無くなり、耳鳴りも減る。
33歳夏現在・・・最近光がまぶしい。

肝の相火 ややあり
左胆兪 陥凹大きい
右胆兪 陥凹


右神門 大きい腫れ、奥に硬結
左神門 大きい腫れ


季節の変り目に頭痛が起こることが多い。
頭痛が起こると、トイレが近くなり、下痢もする。
生理前は無性に冷たい炭酸飲料を飲みたくなり、飲み過ぎると翌朝に頭痛が起 きる。
偏頭痛の始まる前は空腹感が起こる。
偏頭痛が始まると吐き気が起こる。
食後にお腹が張ったり、胸焼けは、時々。
間食はよくある。
2~3日に1回出る。
便秘でおなかが張ってつらいことは時々ある。
便が出切らない感じは時々。
便は細い、軟便、下痢状。
生理前から生理中は、同じ軟便だが、間隔があく。
便器に付着することはよくある。
もともと便秘気味硬い便が出ていた。
生理の量が多いのは食後。

28歳・・・よく食べるようになり、体重が増え始める。
32歳夏・・・子宮筋腫、内膜症を手術し、お通じが軟便になる。
33歳・・・黄連湯を服用(現在まで)。
    胃痛は良くなったが、頭痛は変化なし(現在まで)。

右尺~関に掛けてが特に中位に芯がある
舌苔 やや濃い
お腹全体に張っている
内関 陥凹(右>左)
左大都 割れ
左公孫 陥凹、板
両三陰交 やや筋張り
両足三里 やや陥凹
陰陵泉 突っ張り(右>左)


風邪を引いた時、頭痛がおこりやすい
昔からお風呂で半身浴をしても汗をかかない。
大椎 ふくらみ、冷え両肺兪 陥凹、やや発汗


生理後、忙しい時、夕方、疲れが溜まった時、体調の悪い時、肉体疲労時、気
を使った後、睡眠不足のとき、風邪を引いた時に頭痛が起こることが多い。
ただ休みの日はほとんど頭痛は起こらない。
頭痛が起こると、トイレが近くなり、下痢もする。
夜寝る時やお風呂に入っているときなど静かな時に耳鳴りがする。
耳鳴りは生理の前後、疲れた時、横になった時に起こる。
生理前じゃなくても夕方には足のむくみを感じる。
生理中もむくみが酷く、ふくらはぎが痛む。
排卵時期に、下腹部の痛み、頭痛。
生理の終わり頃、頭痛や立ちくらみが起こる。

20歳・・・生理の前後に頭痛がするようになる(現在まで)。
30歳・・・生理痛がひどくなる。
    体のだるさを感じるようになる。
32歳・・・仕事が忙しいと眠りが浅くなる(現在まで)。
32歳夏・・・子宮筋腫、内膜症を手術し、体のだるさがほとんど無くなる。
    体の疲れが減る。

右尺~関に掛けてが特に中位に芯がある
お腹全体に張っている
関元 やや抜け
右外関 こそげ、奥に亀裂
左外関 こそげ
左湧泉 冷え
左申脈 冷え、動き悪い
左腎兪 亀裂
右次髎 つまり

気虚
全体に輪郭が甘い中に芯がある?

瘀血
子宮筋腫、内膜症、腺筋症の診断を受ける。
手術で生理の量、生理痛ともにだいぶん軽くなったが、最近徐々に生理血の塊 の量が多くなっている。
手術前には出産かと思うような塊が生理に混じっていた。
生理に小さい塊が混じる、量は多い。

33歳夏現在・・・生理の出血に塊が多くなってきた

舌辺 暗紅
舌尖 瘀斑
舌裏怒張 細くあり
少腹急結 左あり
大椎周り 細絡あり

<病因病理>
28歳で閃輝暗点を伴う頭痛が起こる以前から頭痛は時々あり、中学の頃からも う一つの主訴である生理痛や過敏性胃腸炎があったことから、もともと肝鬱が 強いことが推察される。そしてこの肝鬱は、25歳で子宮筋腫、内膜症、腺筋症 の診断を受けていることから、オ血を生じるほどきついものであることが窺える。

28歳で初めて閃輝暗点を伴う頭痛が起こり、以降、頭痛の前には必ず閃輝 暗点が起こるようになった。それでも数年間は、頭痛の頻度は年に数回だった のが、30歳頃から徐々に頻度が多くなっていった。その数ヶ月前には生 理痛がひどくなっていたり、32歳の頃には、仕事が忙しいと眠りが浅くなったり、生理前に左顎が痛むようになったりした。

これを見ると、28歳頃から少しずつ肝鬱がきつくなっていることが窺え、30歳 からは一層肝鬱が強くなっているように思われる。この時期の生活の変化と しては、28歳からよく食べるようになって体重が増え始め、30歳で結婚をし て、夫に合わせて全体的に食事量が増えたとのことだった。このように脾気へ の負担が増したことで、肝鬱の支えが弱くなり、肝気が立ちやすくなったと考えられる。

32歳で子宮筋腫などの手術をして生理の量、痛みともに軽くなり、体のだるさ がほとんど無くなり、疲れも減った。しかし生理前の諸症状、耳鳴り、足のむ くみ方、飛蚊症、生理前の左顎の痛みには変化が無く、お通じは2~3日に1回なのは変わらないが、出る便が軟便か下痢になった。

これは手術で筋腫などの物理的なオ血が取り除かれたので、その分、気機の疏 泄は良くなったが、もともと強い肝鬱自体が改善されたわけではないので、生 理前の諸症状など肝鬱の症状は依然として変わらなかったと考えられる。手術 後、引っ越して歩くことが減ったために、肝気を引き降ろす機会が減ってしまった。そのため頭痛は返って多くなったと思われる。

お通じが軟便になったのは、下焦のオ血が取り払われて、圧迫されていた腎気が立ち、それにより脾気が少し持ち直したのではないかと思われる。そのため 溜まった内湿をお通じとして出るようになったのではないかと考える。

33歳夏には黄連湯を服用して、胃痛は良くなったが、頭痛には変化が無く、 また徐々に生理に塊が混じり始めるなど、肝鬱は依然として強く、オ血を生じやすい状態は続いている。

お体の状態を見ると、オ斑、舌裏の怒張、少腹急結などオ血の存在が窺え、風 邪の内陥があるのか、大椎の冷えや肺兪の発汗が見受けられる。そのため余計 に肝鬱になりやすくなっていると思われる。ただ、腎気や脾気は肝鬱により傷められてはいるが、素体としてはしっかりしているのではないかと思われる。

最後にこの方の閃輝暗点を伴う頭痛について考えてみた。 頭痛が起こる前は、喉が渇き、水分を取るが排泄されず、むくみとなる。その うちに閃輝暗点が起こり、30分後、閃輝暗点が治まると頭痛がして、お小水や下痢が起こる。

これは肝気の上衝がピークになると、心にも影響して閃輝暗点が起こり、閃輝 暗点が落ち着く頃には肝気の上衝が少し緩み、肝気に圧迫されていた腎気や脾 気が解放されて、しっかりと内湿を捌こうとするため、トイレが近くなったり 下痢したり、時には吐き気がしたりすると考える。

<弁証論治>
弁証:肝鬱
論治:疏肝理気
治療指針:疏肝理気をすることで、肝鬱が強くなりすぎて心にまで影響するのを防ぎたい。また肝鬱により、脾気、腎気への損傷がきついなら、適宜脾や腎を助ける。

<生活提言>
こちらに引っ越してきてから頭痛の頻度が多くなって、薬で対処はされていま すが、頭痛を予防することが出来ず、つらいことと思います。○○さんの頭痛 は”気が昇る”ことが激しくなると起こるタイプの頭痛だと考えられます。この”気が昇る”というのは、物事を一生懸命頑張ってやるときや、パソコンな ど目や頭を使いすぎる時に、気が上に集まりすぎることです。

普通ですと、上に気が集まりすぎても、体が下に気を引き降ろしてうまく”気 を巡らそう”とするのですが、○○さんの場合、その気を巡らす力よりも上に 気が昇る力の方が強く、どうしても気血が滞りがちになります。滞ってしまっ た気血は、川の流れが止まるとそこの水がよどむように、体の中でオ血という 要らない塊を生じやすくなってしまいます。このオ血が生じるとますます気血の巡りが悪くなるという悪循環を生みます。

昔からある生理痛を考えると、○○さんはもともと少し気を巡らす力が弱いの ではないかと思われます。その素体があるところに、食事量が増えて、体重が 増えたために、より気血の巡りが悪くなったと考えられます。そのため仕事などを頑張って気を昇らせてしまうとそれを引き降ろせず、閃輝暗点が起こり、 頭痛へと繋がっていくのだと考えます。

去年の子宮筋腫の手術でオ血となってしまった”物”は取り除かれましたが、 その後の引越しで歩かなくなるという生活の変化により、ますます体の中の気 を巡らせる機会が減ってしまいました。そのため頭痛の頻度は変わらず、またオ血を生じつつあるというのが現状だと考えます。

鍼灸治療で気血の巡りを良くし、頭痛の軽減を図りますが、素体としての気血 の巡りの弱さをカバーするには、やはり平素の生活の中での工夫が重要だと考えます。

まずは体を動かす機会を積極的に作ることが一番だと思います。特に上に昇る 気を引き降ろすために、歩くことがいいかと思います。30分でも構いませんの で、どこか習慣になる時間を見つけて、少しずつでも始めてみてはいかがで しょうか?少しずつ始めてみながら、できれば毎日できるように、休みの日な どはもう少し長く歩くようになど、工夫しながら生活のリズムが作れるといいですね。

また疲れすぎたり、食べ過ぎたりすると、気血の巡りの悪さを助長することに なります。しっかり動いたら、しっかり夜寝て休む、食べ過ぎないことがベス トですが、食べ過ぎたら多めに歩くなど、体に余計な疲労を溜めないことも大事です。

閃輝暗点を伴う頭痛の最大の予防法はストレスを溜めないことだと言われてい ます。そのためには、運動、睡眠、食事という生活の基本スタイルをできるだ け乱さず過ごすことが大切になってくると思います。これまでもいろいろと気 をつけられていることと思いますが、そこに運動を加えて、より積極的に予防 を試みてみてはいかがでしょうか。