人間が1回の妊娠でひとりしか出産しないのはなぜ? AMHの謎②

人間が1回の妊娠で一人しか出産しないのはなぜ? 

「先生、AMHが1.0でした。私もう無理なのでしょうか?」

39歳の女性からの訴えでした。
年齢が39歳ですので、IVF-ET(体外受精ー胚移植)などの治療を勧めながら
鍼灸治療をしていきましょうと治療を始めた矢先の出来事です。

このご質問に対して、以下の様にお答えしました。
「このホルモンの値は、確かに良い状態、つまり卵巣年齢がわかければ、いろいろな卵巣刺激の方法を
使うことができ、可能性は広げやすいということです。

しかしながら、じゃあ数字がよければ妊娠するのか?といえばわからないとしか
いいようのない数字ですよ。」

私は20年以上不妊治療に取り組んでいます。
その経験から言えば、この数字が1を切っている方でも、大勢妊娠なさっています。
そして逆に、年齢が若くても、この数字がよくても、とても妊娠に苦労し、やはり妊娠に
至らなかった方もいらっしゃります。
この数字だけでは一概にはいえないというのが現状だと認識しています。ご自身の状態を理解するための参考となる数字ではあるけど、この数字だけでは色々なことを判断し得ないのです。

卵巣年齢が若く状態がよければ、生理3日目に出てくる卵胞の数が多いです。
そして人間は基本的に1回の妊娠出産は一人ですよね。
ここで、不思議に思いませんか? 
ニャンコだと3,4匹、ネズミだともっと多いですね。

これは、生理三日目あたりの卵胞が10個あったとしても、一番よい卵胞だけ大きくなり
あとの卵胞は淘汰されていき、排卵時には1つになるということです。

そしてだんだん、生理三日目に出てこの周期にエントリーする
卵胞の数がすくなくなっていきます。
そう、最初にエントリーできる数が減ってくるというわけです。

人間は最終的に1個排卵する生き物です。だから1個排卵してくれれば妊娠は可能です。
逆に言えば、1個でも排卵しているうちは、妊娠する可能性はあるということで、
避妊はしなければならないということです。

まあ、生殖は淘汰とセットです。生理三日目にエントリーしてくる数が多いと言うことは
淘汰が大きいと言うことですので、より妊娠しやすい卵が排卵してくるだろうということは
理解できます。これが若い人は妊娠しやすいということにつながると思われます。

妊娠のことばかり考えていると、AMHが悪いから妊娠できない!なんて思っちゃいますが、
逆に避妊をしたい人がAMHが悪いからあなたは避妊しなくても大丈夫だよなどというドクターは
いませんよね(^_^;)昔から40代後半の自然妊娠はあるのです。

長年不妊治療のおつきあいをしていると、体外受精は年齢要因、
つまりAMHの要因を救わないという実感です。

年齢要因での妊娠挑戦は体外受精が必須ではなく、
自然妊娠への挑戦でも同じ条件であるということです。
実際、自然妊娠でも45歳出産の方はいらっしゃりますし、体外受精でも同じです。

ですので、いつか体外受精をすれば妊娠できるのだから、まあ急がなくてもいいやと
思っている方がいらしたら、それは違うと思います。
年齢はわかいほうがやはり妊娠しやすいという歴然とした事実はあります。
もし妊娠を考えていらっしゃるのならば、一歩前に行動を進めた方が
よいのではないかなと感じます。