不妊相談:採卵しても空砲ばかり。大学病院での治療はまちがっているのでしょうか?0123

不妊相談にお答えして:31才、採卵しても空砲ばかり。大学病院での治療は間違っているのでしょうか? 0123

長年、不妊の治療に携わっていると、婦人科疾患のある人の方が、『早く不妊治療をスタートさせる傾向がある』ということに気がつきました。

つまり、20代の頃から、子宮卵巣にトラブルがあり、婦人科などの受診歴が多い方の方が、『もしかしたら妊娠できないかも』『子供をもてないかも』と意識なさり、結婚されると、早く妊娠しようと努力なさります。

婦人科疾患があると、妊娠に先立ち手術が必要だったり、不妊の治療でも多くの課題に突き当たることは多いのですが、それでも、不妊治療の最大の味方である年齢要因に余裕があるため、結果的に上手くいくことが多いなと感じます。

今回のケースはそんな31才の方からのご相談です

ご相談:
31才です。20代から子宮内膜症やチョコレート嚢胞があり、破裂したり生理がきつかったりと色々なことがありました。

卵巣のことや子宮のことが心配だったので、万全の体制を整えて妊娠したいと思い、
仕事もやめました。不妊の状態になりたくないと思っていたのです。

婦宝当帰膠という漢方薬がよいといわれ、かなりの金額をかけて他の漢方薬とくみあわせて
飲んでいますが、効いた感じがしません。

自分なりに、かなり身体作りを取り組んでいるつもりです。
不妊クリニックにいったところ、子宮内膜症のチョコレート嚢胞の手術を勧められ
大学病院に転院し受けました。

そのまま大学病院での体外受精も受け、強めの排卵誘発剤をしていただきましたが、
年齢の割に卵胞が育たないね、薬の反応が悪いねと言われてしまいました。
採卵も、結局空砲ばかりで、なんとかできた受精卵を凍結し、先日移植したものの全くせずと
いった状態です。

最近は、とてもつかれやすくストレスに弱くなっているなと思います。
胸が詰まったり、肺や心臓が詰まった感じがすることも、しばしばです。
めまい、吐き気、動悸などもあります。
MRI レントゲン、血液検査などはすべて以上がありません。

私はこれからどうしたらいいのでしょうか?
なにをすればいいのでしょうか?

 

ビッグママからのお返事。

婦人科の症状でいろいろと大変だったようですね。
病院の先生も、いろいろな努力をなさってくださっていたのかなと思います。
がんばってこられましたね。

31才という年齢もあり、強めの排卵誘発剤を使ったことそのものは
よかったのだと思います。

卵巣刺激は、やってみないとわからないことも多いのかなと、不妊治療に
ご一緒させていただいて思います。

確かに、強い刺激で、多くの卵が採卵でき、凍結ができると、
コストパフォーマンスはとてもいいのかなと思います。
また年齢が若いのですから、『移植すすれば妊娠するもの』と
思われるのも無理はありません。

そこが一筋縄ではいかないのが不妊治療ですね。

体外受精は、卵管の通過障害だけが唯一の課題であるばあいは、非常にすんなり
いくケースも多くあります。
しかしながら、卵巣の状態、卵胞の空砲率、受精障害、卵の質、着床障害、不育症と
体外受精に挑戦してみると、案外多くの問題が明確になってくることもあります。

今の状態のまま、体外受精を繰り返しても、同じ事の繰り返しになってしまう
可能性が高いのではないかと思います。

体重がBMIで18.03です。まず体重をBMIの19.5まであげるような
栄養を受け止められる身体作りをしていきましょう。

空砲がある程度混じるのは仕方がないと思います。
しかしながら、ちゃんと移植できる卵ちゃんが出来ていますよね。
そして、ご自身が低体重児だったということを気になさっていますが、
しっかりとご自身もいまここに存在しています。
だから地震をもってください。

あなたの卵をしっかりと受け止める子宮の力をつくっていきましょう。
やるべく事をしっかりやって、身体に余力をつけて赤ちゃんを
お迎えしましょう。

すべてを妊娠にむすびつけ、なんでもかんでも頑張るのではなく

お子さんが欲しいと一緒に願えるパートナーがいること、
金銭的に体外受精が出来る恵まれた状況であること、
年齢が若く二人の時間を楽しむ状況にもあることなど、

ご自身の手の中にある幸せをもう少しゆっくりと味わってよいんだと
思います。

そして、やるべきことをして、お身体に余力をつけて、卵ちゃんをお迎えしましょう。

経過:31歳 ビッグママ治療室には体外受精の胚移植のみの時期のみで来院ー妊娠せず。
体外受精の時期だけお身体をケアすればOKとなる状態ではないですよと説明させていただく。

その後(32歳)、ご本人が納得されてカラダ作りのために来院することとする。

32歳  4月 体外受精 1個採卵 一個胚盤胞凍
着床はするも妊娠継続できず。

10月 体外受精 3個採卵2個受精 (採卵数少し増えた)
11月自然周期で移植 妊娠せず
右股関節 もともと先天性股関節脱臼 外れたらぶらぶらさせないとダメ
→バイオネックス、腸骨の調整 経過良好
33歳  採卵、フレッシュ胚盤胞で移植 化学流産
2ヶ月後月採卵ー凍結 不育症の検査問題なし
4ヶ月後HR周期での移植ーー排卵済みで移植見送り
5ヶ月後 自然周期での移植、シート法+胚盤胞移植→βhcg200越え
6w ぎっくり腰になりそう、胎嚢見えた
つわりが非常にきつい 内関パイオ
9w越え!
22w 頚管少し短いかもと言われた
つわりはまだきつい、夕方になると体調が悪くなり気持ちが悪い
30w 食事をすると動悸がする
夜に腹がはる
39w まだ赤ちゃんの位置が高いと言われている
鍼灸治療後、ぐっと赤ちゃんが下がる
34歳   鍼灸治療より5日後、無事に陣痛がきて3000㌘弱の元気なお子さんを自然分娩。

結果:初診より2年ほどかかりましたが、無事に赤ちゃんが授かりました。
よかったですねえ(^^)

あとがき:
いままで一度も体外受精をやったことがない方は、金額も、治療方法も格段に異なる体外受精に関して『体外受精をすれば妊娠出来る』とイメージを広げがちです。

しかしながら、現実には30代前半のこの症例の方のように若い状況であっても、”採卵数が少ない” ”移植しても妊娠しない”
”空砲が多い” などが続くケースが多くあります。特にチョコレート嚢胞や子宮内膜症などの既往がある方の場合は、
採卵しようとしても取りにくい位置にあるなどのことも多く、FSHなどは問題がなくとも、実際の薬の反応が悪かったり、
よい条件の卵が採れなかったりということに直面します。

こういった状況では、年齢が若ければ、採卵見送りも当たり前のこととしながら良い条件で出てくるのをじっくり待つのも選択肢ですし、年齢が高ければ採卵技術がしっかりした不妊クリニックへ転院することもよいかと思います。
また、体重の低さ、子宮内膜症やチョコレート嚢胞などと食事の関係も明瞭なので、指導を受けることもお勧めします。

採卵数が少なく体外受精でも妊娠しない(34歳出産)

妊娠前後の体重管理が大事だというお話です

子宮内膜症について 日本産科婦人科学会のwebより
ストレスも不妊のきっかけになりますね。ストレス不妊