ご相談にお答えして:生殖医療の選択の仕方。排卵障害、子宮内膜症 0020

赤ちゃんが欲しいといいうときに、生殖医療はいまとても力強い助っ人です。
しかしながら、生殖というのは、『なるべく自然な状態を大切にする』という
あたりまえの側面ももっています。

病院での診断が”体外受精しか選択肢がない” というときに、
どのように考えるのかは、人それぞれの道があります。

今日は、そんなSさんの、お子さんが二人無事に授かるまでの物語です。

相談:子供が欲しいととても強く願っています。
病院では、黄体機能不全、排卵障害、高プロラクチン血症、子宮内膜症の4期であるという診断を受けています。

超音波の専門家でもあるドクターから、この子宮内膜症の4期であることから自然妊娠は難しいと言われ、体外受精を進められています。

しかしながら、私達夫婦は、できるだけ自然の妊娠をとのぞんでいますという相談をしたところ、
ドクターから、『腹腔鏡で状態をよくしてから自然妊娠に挑戦してみるのもよいかもしれませんね』
という提案を受けました。

基礎体温表も排卵障害のためガタガタしていて二相性にはなりません。

私としては、出来れば自然妊娠をしたいです。
ただ、今の私は全体に体調も悪く、特に肩こりがとても強い状態なのが気になります。
妊娠しても、そのあと無事に出産までたどりつける気がしないのです。

どうしたらいいでしょうか?

状況:
排卵誘発剤などの薬を使わないと無排卵の月経周期になっている。
基礎体温表では高温期も短めで途中でぐっと下がり安定感がない。

ご相談にお答えして。

早く妊娠したいものの、黄体機能不全や排卵障害があるうえ、子宮内膜症の状態が悪いということですね。診断して下さったドクターは超音波の名手とも言われる方です。
その方がおっしゃるこの診断は確かに厳しい状況をはっきりと示していますね。
やはり、体外受精が適応であると言うことだと思います。

ただし、生殖に関しては、いろいろな観点から考えることも必要です。
お子さんと長い人生を一緒に歩んでいくわけですから、
医療介入をどのように考えるのかは、
結局、ご夫婦のお考えをしっかりと整理して、決断していくのがよいかなと
私も思います。そして不妊治療には『年齢要因』という大きな課題もあります。
現時点で32才であるので、選択の幅はあると思いますが、
35才が見えてきたところで妊娠が成立していなかったら、
体外受精に踏み切る覚悟もしておいた方が良いかと思います。

東洋医学的な観点からお身体を拝見していきますと、
首や骨盤部の血管の浮き(細絡)舌周辺の瘀斑と呼ばれる状態、
舌裏の怒脹、三陰交から復溜という下肢の部位に詰まった感じがあるということからも、
オケツと呼ばれる、気血の巡りが悪く古血がたまったような状態が継続しているのがわかります。
子宮内膜症が重度と言われるのも納得の出来るところです。

病院で指摘される子宮内膜症は骨盤内臓器の部分だけですが、東洋医学的にみていくと
巡りの悪さは全身の問題との関連が考えられます。

また、体の冷えの入り込み(風邪の内陥)や生命の土台の力(腎気)の不足も感じられます。

体外受精を視野に入れながらも、まずカラダ作りをして素体の底上げをおこないながら自然妊娠の可能性を伺い、
ある程度のところで体外受精に舵を切り替えていきましょう

全身の生命力不足のある中、身体の中に要らない気血の滞り(東洋医学ではオケツと言います)があるために子宮内膜症はひどくなり、肩こりや頭痛となっていると思われる。

方針:

気血の滞り(オケツ)の状況がひどいので、西洋医学的な不妊治療と並行し、妊娠に向けてとりくんでいきましょう。具体的には、全身の生命力の底上げ(気虚への対応)、冷えの入り込みの取り去り(風邪の内陥)、気血の滞り(オケツ)を取り除き疏通させる。

 

治療経過:

初診後8ヶ月、基礎体温表がきれいな二層制なってきた。
10ヶ月、高温期が安定し肩こりがなくなってきた。
34才 腹腔鏡の手術ー半年間の人工授精
35才 体外受精をはじめるー妊娠
36才 出産
38歳 第二子への挑戦のため体調を整え始める
39歳 第二子出産

結果:第一子、第二子と無事に出産。

無事にご出産となりました。また、2年半後に再度鍼灸治療開始。
半年後、残してあった凍結胚を移植しすぐに妊娠。無事に第二子のご出産となりました。

 

不妊治療を振り返ってみて

ご本人の希望が自然妊娠をということ。年齢が32歳とわかかったことで、腹腔鏡手術をし自然妊娠への挑戦をしましたが、今振り返ると、初診後10ヶ月ぐらいで基礎体温の状況がよくなり体調がよくなった時点で体外受精を一度挑戦してもよかったかなと思いました。

ただ、生殖医療はどのような選択をするのかということはご夫婦の課題です。お二人の考えと、そのときの状況で、納得できる選択をなさるのがベストだと私は思います。この症例の方は、年齢が若かったので、”選択する時間”もあったのかなと思います。もしこの方がスタート時点で38歳であったのならば、腹腔鏡の選択よりも体外受精を先にするべきだと思います。なかなか難しい選択ではありますが。

 

体外受精では複数の卵がとれ、凍結胚が残る場合があります。
この方には、残った凍結胚を移植したければ半年ぐらい前から体調を整えに
来てねとお願いしてありました。キチンと守っていただき、無事に1度の移植で
妊娠。無事な第二子への出産につながりました。第一子までが時間がかかりましたが
第二子へはとてもスムーズにすすみました。

ご主人と一緒に二人のお子さんをつれ、治療室にご挨拶にいらしてくださいました。
実はご主人の方がお子さんが欲しいと強く願っていたとのこと。
仲良し夫婦の二人三脚でしたねえ。ちょっと長くなってしまった不妊治療でしたが
がんばられたなあと思いました。

体外受精について

子宮内膜症4期、黄体機能不全、排卵障害を越えて(36歳出産)

ビッグママ治療室