⑦胎児と栄養:「小さく産んで大きく育てる」の意味 杉ウイメンズクリニックの考察から。

⑦胎児と栄養:「小さく産んで大きく育てる」の意味 杉ウイメンズクリニックの考察から。

脳の発達、胎児と栄養:京都女子大学のセミナーのYouTubeから①から⑥まで考察しています。

①から⑥までは以下の通りです。
その①https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4655
その②https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4661
その③https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4672
その④https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4689
その⑤https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4692
その⑥https://bigmama-odawara.jp/blog/archives/4731

さて、赤ちゃんが小さいという話しになると必ず出される言葉があります。

「小さく産んで大きく育てる」という言葉です。

これは、赤ちゃんは小さく産んで大きく育てるのがいいよ~という言葉です。分娩の時に巨大な赤ちゃんだとトラブルが多いから、赤ちゃんは小さい方がよいのよという受け取り方をしている方が多いのではないかなと思わせる言葉です。

確かに確かにとと思う側面もあります。

しかしながら、私がこの言葉に疑問をもったのは、とある患者さんからのメールからです。
やせた方の妊娠フォローの症例(BMI15.6)
この方はお母さんであるご自身がBMI16.5でした。
産科でも低体重児の出産を危惧されていました。
(だからといって、なにかするわけではないですが(^_^;))

妊娠前から治療院に通っていらした方でしたので、妊娠中は初期を中心にがっつりと胎盤形成期の鍼灸アプローチをおこないました。

その結果、ご自身は3300㌘越えのベビちゃんのスムーズな出産となっています。
ご報告のメールからです。

「旦那さんも痩せているのに、随分大きくて飲みっぷりがいい赤ちゃんですね」
と褒められました。
確かにみんなが大きな胸に小さな赤ちゃんを抱いているのに、
私だけ小さな胸に大きな赤ちゃんを抱いていて、
不思議がられていましたよ。
予定日を超過したものと思っていた人もいたようですが、
39週3日での誕生となりました。
「妊娠中、何キロ増えたんですか」と聞かれて
「10キロちょっとです」と答えると、みんなびっくりしていましたよ。
判定日に体重が37.9キロしかなくて、自分でも大丈夫かと心配したものですが、
産院では「高齢初産だし、痩せているから低体重児が」などと随分注意されたものです。
それがこういう結果になったのも、
先生のところに週に二度も通わせていただいたおかげだと思います

ここで考えていただきたいのが、妊婦の体重増加=赤ちゃんの体重増加ではないということです。ここをはき違えると、妊婦が太る=巨大児と思われて体重指導が入ったり、妊婦の体重増加が少ない=低体重児とされて心配という話しにもなります。

ここにはワンクッションあるということです。

健やかな子宮血流を保つ

穏やかな妊婦の体重増加につながる

十分な赤ちゃんの体重増加につながる

この三つであるということです。

この方からのメールは続きます。

出産のときは、たまたま同じときに分娩室に入った人がいました。
私は破水で、その人は予定日超過で陣痛促進剤を投与していたのですが、
向こうのほうがとても強い陣痛が早くからきていて、大変そうでした。
でも、後から軽い陣痛が来た私のほうがあっさり出産して、
その方は母子ともに弱ってきたらしくて、帝王切開になってしまいました。

翌日、産まれた赤ちゃんを見つけました。
保育器の中の、とても小さな女の子でした

後日、「○○さんって、すごい安産でしたよね。隣で、びっくりしたんですよ」と
そのお母さんに声を掛けられました。
お腹がまだ痛そうで、「本当に大変でしたねぇ」と私は返したものの、
一歩違えば他人事でなかったかもしれません。
もしかすると、私も赤ちゃんが小さくて、
こういうことが起こりえたかもしれないなとつくづく思いました。

この方の体験だけで、全てであると語ってはいけないことは重々承知です。しかしながら、体重増加=巨大児=分娩時の大きなトラブルとされているのには違和感を感じます。

分娩時のトラブルは確かに大きいし生命に係わります。母子の生命が第一だということも重々承知です。ただ、その上で妊婦の体重増加が、健康とかけ離れ必要以上に体重増加することと、必要な体重増加であるということを分けて考えなくてはならず、健康度を落とす体重増加が非常に危険であり、出産のトラブルにつながることはよく理解出来ます。

大きい赤ちゃんという言葉の曖昧さ

大きい赤ちゃん=分娩時のトラブル多発 ではないのはこのエピソードから私に大きく問いかけてくれました。大きい赤ちゃんというのは、巨大児ではなく、一昔前にいわれた、
大きい赤ちゃんは、「3000㌘50㎝の健やかな赤ちゃん」ということだけです。

そしてこの方のメールで、同時に陣痛を起こしていた方が、非常に難産で苦労され、お産みになった赤ちゃんがとても小さかったのに驚いたと。
そして自分が大きい赤ちゃんを産むことは難産になるのではと漠然と思っていられたそうです。それはそうなんだなと同感出来ます。

ただ、
充分な体重の赤ちゃんを産むことは、
充分な血流、体力のある妊婦であること

であるという認識は持ちたいと思います。

妊娠糖尿病などによる、巨大児は確かにハイリスクな分娩であり、避けるべき事態だと思います。ただ、これも、健やかな健康状態を妊婦が保つという観点からの血糖コントロールであるようにという努力が必要なのかなと思います。

とにかく食べちゃダメという指導

他の症例で、血糖値が上がってきてしまった方に、
「とにかく食べちゃダメ」というようなカロリーコントロールが指示されていました。まあ、とにかく食べちゃダメということが本筋ではなく、ちゃんとした栄養指導だったとは思うのですが、アドバイスを受け取ったご本人はとても真面目な方だったので、妊娠前よりも細い手足であるのに、しっかりと食事制限をし、それでも、

「こんなに食べるのをやめているのに、血糖値が高くて食事制限を言い渡されるんです、どうしたらいいのでしょうか」と仰りなげいていらっしゃりました。

私は、ぐっと細くなってしまった手足、薄くなった皮膚をなでながら、

「これじゃあただの低栄養じゃないの???。出産に向けて食事バランスガイドに沿ってしっかりと食べてみては。血糖値をあげないように糖質を最初に食べないようにしてみてね」

と私自身が感じたことではあるけれどという前提はお話ししながらアドバイスしました。

その結果、赤ちゃんは、2500㌘を少し越え、おかあさまも元気に分娩されました。

その方はいまでも、
「あのとき、先生に食べろって行ってもらって本当によかった」と言ってくださいます。お体を拝見していて、これ以上の食事を減らすことに私は意味を見いだせなかったのです。確かに数字はその通りの高血糖なのでしょう、そして高血糖のリスクも充分分かります。しかしながら、身体がこれだけ細り参ってしまったら、ただただ「食事を減らせ」だけが指導なのかと疑問を感じざる終えません。もう少し丁寧に、栄養を取ること、その上で血糖値をあげない食事を患者さんに指導して頂きたかったし、あの状態のままで、これ以上どんどん食事を削ったら分娩が乗り越えられるのかと思ったのです。

小さく産んで大きく育てるの意味。

杉ウイメンズクリニックの

小さく産んで大きく育てるの意味

すぎ先生はご自身のブログの中で、DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease) 説についてかかれ、小さく産んで大きく育てるという言葉が覆されたとされています。不育症については、様々な議論がありますので、東洋医学のカテゴリーに身を置く私としてはなんともコメントしづらくはあります。

しかしながら、私が「多分不育症で引っかかるな」と思うかたにはこの杉ウイメンズクリニックの受診をお勧めしています。流産を2回したら不育症の検査というには、年齢要因的に妊娠ー出産自体が厳しくなると思うからです。

そして、私がお体を拝見して、ん?と思い、杉ウイメンズクリニックの受診をお勧めした方は、90%以上の確率で「不育症との診断を受けました」というご報告をいただいています。不妊の方に不育症要因は重なるのです。そしてもう一つ、小さい赤ちゃんということも重なります。

DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease) 説について

DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease) 説については、

実験医学オンラインにて、このように紹介されています。

『異なる生活習慣を背景とする異なる人種を対象として「出生体重に代表される子宮内環境などの出生前の環境因子が成人期・老年期の健康や疾患発症リスクに関連する」という共通の結論が得られたこと自体が衝撃的であり、医学:生物学の研究対象としてDOHaDの概念が注目されるようになった』とあります。
サイト* https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/book/9784758125307/916.html

私達が健やかな身体をと願うとき、そのスタートは胎生期から始まっているという、あたりまえであるけれど、忘れられがちであることを、いま、あらためて大事であると私は感じます。

胎盤形成期の鍼灸アプローチは、そのスタートに非常に効果的です。

ぜひ取り入れてみてくださいね。