44歳 不妊治療の舵取り相談⑤ 生殖医療の基本と、不安に対応

不妊治療では、どのように治療を進めていくかを考えることがとても大切です。

ある44歳の女性の不妊カウンセリングをおこない、無事に45歳にて妊娠出産された方がいらっしゃります。

そのときの不妊カウンセリングから、私が印象に残っていることをお話ししますね。
ひとりでも多くの方にご参考となりますように、
そして一人でも多くの方が赤ちゃんとめぐりあえますように

不妊治療の舵取り相談、1,2回目はこちらです。
1)44歳 不妊治療の舵取り相談 ①確率の説明だけで選択しない

2)44歳 不妊治療の舵取り相談 ②今の状態で出来ることをしっかりとやっておく

3)44歳 不妊治療の舵取り相談 ③採卵につながる卵胞成長のコツ

4)44歳 不妊治療の舵取り相談 ④空砲が多い、卵胞が出てこない

☆44歳 不妊治療の舵取り相談

相談:44歳女性 42歳で結婚後、自然に妊娠するのかと思いそのまま経過。
43歳の時にAクリニックにて体外受精。3個受精胚盤胞にならず終了。
転院Bクリニック、1回目、2回目空砲のみ、3回目排卵済みで採卵できず。
現在の生理三日目fshは15-20ぐらいで定期的に月経があります。

どうしたらいいでしょうか?

 

1)44歳 不妊治療の舵取り相談⑤生殖医療の基本と、不安に対応

→生殖医療の基本は介入が少ないこと

生殖医療には自然の淘汰があります。
また医療介入が少ないことも大切です。
つまり、なるべく自然な形に近くということが、生殖医療の基本になるかと思います。

1度は凍結などの医療介入をしない、フレッシュの胚移植の選択もよいでしょう。
つまり、採卵して同じ周期に移植ということです。

このときに、複数胚採れれば、残った胚は培養し、胚盤胞にして凍結。
このように1度の採卵でそのまま移植した卵で妊娠、出産。
2年後に残った凍結胚盤砲を移植し妊娠、出産。

こんなスムーズな流れになると本当にいいなあと願っています。

→着床前診断、どのように取り入れるのか。

着床前診断が多くなされるようになり、不育症で悩む人の朗報だなと思います。
ある方が、3回移植しても1度も着床すらしないということで転院し、
着床前診断をしているクリニックを受診されました。

そこで、少し誘発方法を変え、多めの卵が採卵出来るような方法をとり、9個採卵でき、
6個の胚盤胞ができました。金銭的に迷ったようですが2個を着床前診断に出し、2個ともOKが
でたとのこと。

移植の時に、この方とお話ししました。
いろいろな考え方があるとは思いますが、

6個取れた胚盤胞のうち、2個を診断してもらい2個ともOK。
ということは、遺伝子的な問題が多いタイプではないのかなと考え、
1度も着床しなかったのは、移植時の子宮内膜、子宮血流の問題が多いのかも。
着床前診断をしていない方の卵を先に、しっかりと着床するための身体作りをして移植。
これで上手く行けば、数年後に二人目のお子さんを考えたときの移植は、
しっかりと着床前診断がついている卵を自信を持って移植すればいいわけだから
だいぶ気が楽じゃない?

と、話しました。この考え方の底辺には、1度も着床しないのは
1)着床するご本人の身体の状態
2)胚の遺伝的な問題
がごっちゃになって考えられているので、1)の状態で着床しないのかどうかを見極めた方が
よいのではと私が考えたからです。お体を拝見して、1)の課題はあるタイプだなと思いました。
1)のタイプの方が2)の対策だけおこなっても結果が出ません。
このあたりが不妊治療を難しくしているポイントですね。

このあと、クリニックの方とも話し合い、着床前診断をしていない胚盤胞を移植。
無事に妊娠されました。やはり、今まで一度も着床しなかったのは胚のせいというよりも、
ご本人の着床する力の問題出会った可能性が高いのかなと感じました。

ご本人としては、残った4個の胚を数年後というご自身の年齢が高くなったときの移植になるので、しっかりと選んだ、若いときの卵を移植出来ることにとても喜んでいらっしゃりました。

しかしながら、年齢の高めの人の治療の場合、胚盤胞まで到達した卵が1個だったらどう考えたらいいのでしょうか?。

→着床前診断は胚盤胞まで育つことが前提。胚盤胞にならない場合は?

合理的に考えれば、着床前診断をするべきだと思います。

しかしながら、せっかくできたたった1つの胚盤胞や、そもそも胚盤胞にならない場合はどうしたらいいのでしょうかねえ。

不妊治療は移植しないで終了ということがしにくいのなかとも思います。
つまり、培養途中で終わりとか、胚盤胞になったもののそのまま廃棄ということでは、
納得して終わることが出来ない方がおおいのかなと感じます。

私がお勧めしているのは、なるべく初期胚で凍結してしまい、複数胚移植にすることです。移植も出来るし、複数胚で着床もしやすくなるというメリットがあります。
また、妊娠しなくても、卵をお迎えすることができたということで、納得して
治療終了になさった方もいます。

また、この方法で、胚盤胞にならなくなっている方が妊娠しているのを何例も経験しています。

つまり、培養によってでは胚盤胞にならない卵でも、移植してお腹の中ならば育つ可能性があるということ。そして、いままで胚盤胞にならないという理由で廃棄されていた卵に、良好卵であった可能性があるのではという事も感じます。

これは、着床前診断を受けた方が、スピードが速い良好な胚盤胞が、着床前診断においてもOKがでるのではなく、案外、真ん中やよくないレベルのものが着床前診断でOKがでたというお話を伺うことをあわせ、納得ができるところです。

いままでも、グレードの高いものから順に移植して、1,2番目の卵はだめで、4番目、5番目の卵で妊娠、出産したという事例も多かったことからもわかります。

このあたりが、生殖の不思議なところですね。

→年齢高めの治療で妊娠、不安を感じるのならば

 

高齢出産の方は、自分が高齢だから赤ちゃんにいろいろなトラブルがあっても育てられるか不安とおっしゃる方がいらしゃります。

これは高齢であってもなくても、同じような悩みや不安はありますね。

私はそういった方には、妊娠してから胎児ドックやその他の検査をしっかり受けてみることで対応してみてはとお勧めしています。

まあ、それぞれに迷うことは多くありますが、ご参考まで。

→凍結という技術は時間を買うこと。

 

不妊治療において、一番の課題は年齢要因です。この年齢要因に唯一効果的な手段は凍結です。凍結は時間を助けてくれるもの。上手に活用することが大事です。

→いま、やるべき事の優先順位をはっきりさせましょう。

ご自身がやるべきこと、できることをしっかりと整理しておく。

妊娠は生命の余力で営まれます。妊娠しなくてもしても、日常には差し障りがない。
しかしながら、日常で精一杯だと生殖にまわる余力が生まれない
生殖優先と腹をくくっての1年でよいかと思います。3年後に同じ事は出来ないと思います。

仕事も大事で、なかなかどちらかを選ぶことも出来ないのもよくわかります。

私がその立場でも迷うと思います。

ただ、腹を括って取り組み、前に進む方々を多く見る中で、

やっぱり心を決める必要なこともあるんだなと思っています。

→クリニックの転院について

クリニック選びもやはりとても重要です。

クリニックの転院は、よく考えて。そのクリニックの特徴をいかすことが大事です。クリニックによって違う制限や特性を知ることも大事だと思います。

複数胚移植、初期胚凍結、二段階移植。やってみたいと思うことが出来るのかどうかもポイントですね。

気になるクリニックがあれば初診を受けてみるのも大事です。

初診さえうけておけば、転院も時間のロスがない場合が多いですね。

→この1年が不妊治療のラストチャンス。

何度もくどく申し上げましたが(^_^;)、いま、卵胞が出来てきて、採卵できていること。FSHも15−20の数字である今の状態がいつまでも続くとは限りません。

とにかく、このチャンスをしっかりといかして、ご自身の人生の選択に悔いが残らないようにと思います。ことから、しっかりと採卵し、移植できる状態(凍結)にする。

不妊カウンセリングのお申し込みはビッグ治療室までお問い合わせください