カテゴリー : 一般の症例集 虚弱体質・疲労

心臓弁置換手術後の風邪からの体調不良(65歳・女性)

概要

65歳女性、心臓弁置換の手術後、心臓の働きが悪く身体が疲れやすいことと、肩や腕の痛みで来院。身体の冷え(風邪の内陥)を取り去り、生命力を賦活させることで体調が改善した症例。

(この症例の弁証論治→心臓弁置換後の体調不良弁証論治
【case:0017】【神奈川/湯河原】

ご相談内容

62歳の時に、子供の頃のリウマチ熱の後遺症である心臓弁膜症がみつかり、自覚症状はなかったのですが手術をしました。何も問題なく生活をしていましたが、去年、風邪を引いてから非常に体調が悪くなりました。

心臓の弁をかばうために右を下にして寝ていたところ右肩や腕が痛くなり、洗濯などをはじめ家事も不自由です。また朝が特に身体がだるく動けない状態で、外出もほとんど出来ません。医師からは普通に生活してもよいと言われていますが、身体がつらくて普通に生活できません。

東洋医学的診立て

62歳の時の心臓弁の問題は、検査による早めの処置、手術でよかったですね。

64歳の時の風邪は、「風邪は万病の元」という状態を引き起こしてしまったような冷えの入り込みを生じさせ、お身体の底力に大きな負担になってしまったと思われます。そのために、様々な症状が出現し、体調の悪化ということになっています。

風邪が万病の元といわれるのは、このようになんとか保っていたバランスを崩してしまうことによって、その人の一番の弱点が表に出てきてしまうこと。そして風邪が身体の内側に入り込み、いつも冷えの塊が身体の中にあるために、人間の命の根源である暖かさを奪ってしまし、大きな病のきっかけになってしまうことです。つまり生命力の根源を持続的に揺るがす存在になりかねないということです。

お身体の経穴を拝見しても、背中の経穴の抜け、落ち込みは明瞭です。もともと便通の問題などもあり脾気(胃腸の力)に問題のある方ですので東洋医学でいうところの痺症(ひしょう)の入り口に一歩進んでいる可能性も伺わせます。しっかりと養生していきましょう。

東洋医学的弁証論治
弁証:風邪の内陥、気虚、腎虚 
論治:去風散寒、益気補腎
治療方針:まず第一に内陥している風邪を取り去ること。このために腎気(とくに腎陽)を益気し、裏をたてる。全身の気虚を救うために、脾気も必要ならばたてていく。肩の問題は、風邪の問題、気虚を救う問題の解決の中で、余裕があれば温陽して気血を導いていく。

治療経過

3ヶ月後 血流が改善し、動くのが楽になってきた。日常がスムーズにおくれるようになった。

あとがき

人間は、まるごと一つの存在です。

色々な問題があっても、それなりにバランスが良く取れていれば、日常生活を気持ちよく送ることは出来ると思います。

この症例では、リウマチ熱や心臓の問題、手術など色々な既往歴がありましたが、それなりにバランス良く生活され日常生活は気持ちよくおくれていらっしゃいました。

それが風邪をきっかけに大きく崩されているのは、この風邪が持続的にお身体に負担となる「万病の元」タイプであったからだと思います。こういったタイプの風邪を引いた場合には、しっかり養生し、身体に入り込んだ風邪をじっくりと追い出し、バランスを取り戻す必要があります。

風邪の内陥が抜けるまでは、少しこまめに手入れをし、バランスがそれなりに取れてからは定期的にお手入れをさせていただきました。なんとか、日常生活も問題なくおくれるようになったとのことでとてもよかったなと思います。