カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代前半 30代後半 不妊

質の良い卵が採れず、体外受精で治療が進まない(34歳、37歳出産)


[2023/05/15:更新]

概要

30代前半で体外受精を繰り返すも、質の良くない卵しか採れず、妊娠に致らない症例です。

(この症例の弁証論治→卵の質はよくなるのでしょうか? 32歳
(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」5-2
【case:0032】

ご相談内容

26歳で結婚してすぐに妊娠を希望して病院通いをしています。30歳の時に卵管狭窄と言われ手術をしても妊娠できませんでした。31歳から体外受精を始めましたが、いつも妊娠を期待できるような卵が採卵できません。体外受精の周期には10回以上チャレンジしていますが、採卵まで進むことができたのは4回だけです。いつも採卵しても受精すらできないことばかりです。最後の体外受精も、1つ変性卵で2つ空砲でした。

病院の先生からは、夫の精子は問題がない。卵胞はあり、数も出るが、卵の質が悪いために妊娠につながらないと言われています。年齢が若いのに卵の質が悪いと何度も言われました。卵の質はよくなるのでしょうか?

東洋医学的診立て

年齢が若いのに体外受精をしてもなかなか妊娠できないというお悩みですね。問診上はさしたる問題がなく、ご自身では体調不良を感じることはないということですが、東洋医学的な方法を使い、お身体を拝見していきますと、身体の充実度が不足しているために生命の土台の力(腎)が弱く、全身をしっかりと温め養うことができていないことが明瞭です。また皮膚が薄い感じがあります。この状態は体外受精をしてなかなかよい卵ができないという方によく見られる状態です。身体の余力をつけ、皮膚までしっかりと養えるようにしていきましょう。

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚を中心とした気陰両虚 肝鬱化火 風邪の内陥
論治:益気補腎 疏肝理気 疎風散寒
治療方針:まず第一に腎気の回復を図る。また素体に負担となっている風邪の内陥を払うことを急務とする。
 1)週に2回の治療院での施術
 2)毎日の自宅でのお灸
 3)散歩などの運動
 4)お肌が綺麗になると言われている時間である22時から2時の睡眠などをお勧めします。気負わず、力を抜いて始めましょう。

治療経過

週に2回の鍼灸治療開始、自宅施灸は毎日。
5ヶ月後 不妊クリニック受診、卵巣の数字悪く調整周期
6ヶ月後(30診後) 採卵、多精子受精、未熟など移植できず
8ヶ月後(50診) 採卵、グレード1、3の胚盤胞になる(初めてグレードの良い卵と言われる)
64診後 移植
67診後 妊娠 hcg50以上。
妊娠中も鍼灸治療継続し、114診にて終了。無事に3000グラムオーバーの赤ちゃんを出産、おめでとうございます。

出産から1年3ヶ月後、再初診。
BMIが16代にまで体重低下。

出産後、仕事やそのほかいろいろなことがあり、とても忙しかった。
腎虚を中心とした気虚が深くなっている。
一時期は体重が42キロまでになってしまった(前回妊娠時50キロ)いま45キロ。
患者さんへは体重がせめて3キロほど増えてから、不妊治療を再開するようにアドバイス。
以来週に1回の鍼灸治療を開始。
1年後、体重も戻り、体調も良くなったので、前回採卵してある凍結胚盤砲を移植
無事に妊娠。

無事に3200g越えのベビちゃんを出産(37才)

・二人目の出産について、
一人目の妊娠時まで体調を戻すと言うことは非常に大きなポイントです。

このケースでは、出産後に体重が大きく減ってしまうほどの体力的な負担があり、ご本人は移植を希望なさっていましたが、「お宝の凍結胚盤砲なのだから時期を選びましょう」とお話しし、体重がもどるところまでまっての胚移植となりました。

長らくの不妊治療でした。数々の採卵を重ねてやっとできた、2つの良好胚で二人のお子さんを授かり、よかったなあと思います。

あとがき

20代から始まった不妊治療。体外受精を繰り返すも、『よい卵が取れない』ために治療が進まず妊娠できないという状況でした。毎月のように採卵の周期に入り、がんばっていらっしゃいましたが、『卵の質』そのものが悪いとういことで、いったん西洋医学的な治療はお休みにして身体作りに集中しました。

『初めてグレードのよいと言われる卵が出来ました!』というご本人の言葉をいまでも思い出します。結局、数限りない体外受精の中でたった二つできた『グレードのよい卵』でお二人のお子さんを授かり、お母さんになりました。ご本人の迷いのない努力のたまものだと思います。