カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 不妊 二人目不妊

マクロビで体重減少BMI16、二人目不妊、貧血(36歳出産)

概要

産後の体調悪化をマクロビで乗り切ろうとした結果、より体力を失ってしまったケースです。『食べて力を増すことの出来る身体作り』を目指しました。

(この症例の弁証論治→二人目不妊、マクロビで貧血の弁証論治
【case:0107】

ご相談内容

二人目の妊娠を希望していますが、体調が思わしくなく妊娠よりも体調が気になります。

一人目の妊娠前も2度の流産があり、産後非常に体調が悪化しました。食欲が落ち、腰痛が出現し全体に体調が悪いという感じになってしまいました。体調を回復するのにマクロビがよいと指導され、肉や魚を食べないようにしていましたら、なんだか心身共に軽く感じ動ける感じになりました。しかしながら、体重はダウンし40キロすれすれ(BMI16.02)になってしまいました。

これではいけないと思い、食事を少し改善したところ3キロほど体重が戻りましたが、この半年ほどは夜間排尿が続き、生理もダラダラと止まらない様な状況です。体力を戻し、二人目を妊娠するにはどうしたらいいでしょうか?アドバイスお願いします。

東洋医学的診立て

お二人目のお子さんを望んで色々がんばっていらっしゃいますね。

体調が悪化したときに、食を減らすことは胃腸の負担をとりますので、体調の回復を促す効果があります。動物が傷ついたときなど食べ物を食べずにキズの回復を待つといいますが、そういった感じですね。ただし、これは短期的緊急的な手段だと思います。長期にわたって栄養が偏った状態が続けば、より体力を失い、体調悪化の悪循環に入ってしまいますね。

人間はそんなときでも精神力を振り絞り頑張ります。このことが体重がどんどん減少する中で『身体が軽い、動ける』という気持ちが働く背景です。自分の弱さに自分で気がつくことが出来なくなってしまうわけです。

いま、ご自身で『自分の弱さ』に気づかれ、食事を改善させ体重も少し戻って良い流れには乗っていますが、今ひとつ産後の体調悪化から回復しきれない状況にいらっしゃると思います。

胃腸の状態を改善させ、食物から生命力を引き出し、受け取れる身体にしていきましょう。そして生命の土台の力(腎気)を回復させ、二人目のお子さんが授かるようにしていきましょうね。

東洋医学的弁証論治
弁証:腎虚を中心とした気血両虚
論治:益気補腎
治療方針:腎気をあげ、出産前の体調まで戻す。腎気の回復に伴い脾気も回復すると思われるので、後天の本をしっかり補えるような環境作りをし、気血ともに増し器を大きくしていく。

治療経過

初診より週に1度で鍼灸治療
初診:左外関、左公孫、左三陰交、足三里。気海10、関元7。左胃兪、左三焦兪、右腎兪、左大腸兪に鍼して温灸
2ヶ月ほどで体重が少し増える
4ヶ月目で自然妊娠。
妊娠32週まで鍼灸治療継続。里帰り出産にて終了。無事に安産にて男児出産。

あとがき

食事は難しいです。本症例の患者さんも、健康のためと厳しい食事制限をなさいました。しかしながら、かえって健康の足を引っ張ってしまったようです。

食事は個別具体的に考えていく問題であろうと感じています。一般論的に『これがよい、これはいけない』と決めつけるのは問題が大きくなる可能性が高いと思います。その方の耳に入りやすい情報だけが入るからです。

私が、『その食事療法はあっていないんじゃないかな?』とアドバイスさせていただくのは、この症例のように東洋医学に基づいた体表観察をし、時系列に沿って問診させていただく中でおこなっております。

食事は人間にとって大切な栄養源ですし、精神的な支えでもあります。またご本人の『嗜好』に大きく左右されます。頭で考えた情報とご自分の嗜好で、極端な方向に決めつけるのは危険が大きいと思います。

とくに、肝気が立っている意識の高いタイプの人は、ご自身にも厳しい傾向があるので、ご自分の不調を無視して頑張りがちです。ほどほどに、そして体表観察をしてくれる他者のアドバイスを聞いてみるのもよいと思います。

この症例の方は初診から1年後、無事に二人目の赤ちゃんを抱くことが出来ました。おめでとうございます。

ご本人様からのメッセージです。

『思えばちょうど1年前、わらにもすがる思いで(笑)ビッグママを訪れました。まさか一年後に我が子をまた胸に抱けることになるとは、思いませんでした。身体の治療だけでなく、精神面や生活面でのアドバイスも参考になりました。本当にお世話になり、ありがとうございました』

無事の出産おめでとうございます。頑張り屋さんならではのエピソードが沢山で、私も背筋が伸びる思いでした。確かに危険な方向にも暴走してしまいますが、人として生きていく姿勢がとても美しいと思います。子育て、楽しんでくださいね。