カテゴリー : 不妊・婦人科の症例集 30代後半 流産

生命力(腎気)が弱めで冷え性、流産を繰り返す(38歳出産)


[2023/05/11:更新]

概要

36歳、37歳と2回妊娠されるものの、8wにて心拍が確認できないまま自然に出血がおこる反復流産となっています。流産後なかなか出血も止まりません。もともとの強い冷え性や頭痛、残尿感などがあります。早く妊娠をしたい、そして流産せずに産みたいという訴えです。

(この症例の弁証論治→反復流産 冷え性、頭痛弁証論治
【case:0127】【神奈川/平塚】

ご相談内容

『小学校のときから手足にしもやけができ昔からとても足先が冷えます。頭痛は高校時代から左の側頭部痛から肩こりに成り辛いです。妊娠希望から1年たってやっと妊娠できたのに、8wで心拍が見えずに自然に出血となり流産してしまいました。半年後もう一度妊娠できたのに同じ経過でした。なかなか妊娠しにくいのに、せっかく妊娠しても流産を繰り返しています。なんとか、早く妊娠して、流産せずに出産したいです。私は不育症なのかなあと心配です』

東洋医学的診立て

せっかく妊娠できたのに、2回も連続して8wでの流産、本当に辛かったでしょう。残念でしたね。次の妊娠では一緒に頑張って是非出産まで到達できるようにしていきたいですね。

お身体を拝見すると、もともとのベースとなる生命力(腎気)が弱めであると思います。そのために冷えがきつかったり、残尿感があったり、月経周期が長めでつかれやすかったりしていると思います。腎気は全身の生命を下支えする縁の下の底力を発揮してくれる存在です。そしてこの腎気が、子宮(女子胞)を養い、赤ちゃんをしっかりと受け止め受容できる身体となるのです。

子宮(女子胞)というのは、赤ちゃんの孵卵器です。その孵卵器の性能がちょっとだけ不安定ならば、孵卵器そのものをしっかりと養い守る必要があります。Uさんのお身体は、孵卵器そのものを守る全身状態が、気虚気味(パワー不足)であることが問題です。全身が気虚気味パワー不足であるので、孵卵器も不安定になり流産となってしまうわけです。妊娠は、女性にとって身体の余力でおこなわれます。余力がないと、どうしても不安定な子宮(女子胞)となるわけです。身体全体に余裕をもち、子宮(女子胞)の生命力が安定するようにしっかりとがんばっていきましょう。また強いストレスも子宮(女子胞)に負担となります。ストレスも鍼灸で調整していきましょうね。

東洋医学的診立て
弁証:腎虚を中心とした気陰肝鬱 風邪の内陥 女子胞の力不足
論治:益気補腎 疎風散寒 温養女子胞
治療方針:腎気を中心に気虚気味の素体をたてなおし、パワー不足となっている女子胞を暖め養う。また素体に負担となっている風邪の内陥を払うことを急務とする。

治療経過

週に1度の通院、毎日の指導に基づいた自宅施灸
4ヶ月後に妊娠。

妊娠中も週に1,2度のペースで鍼灸治療を継続

8w つわりがきつい→つわり治療
19w 喉に違和感があり、空気が上がる感じで食事が通りづらい
23wから逆子ー27wまで。28wで治る
30w やっと妊娠前から体重が4キロ増えることが出来た
 →間食も小さな食事として、食事回数を増やすように指導
30w 再び逆子に
31w 治ってきた感じ、お腹が突き上げて苦しい。
33w 赤ちゃんが小さめと言われた
34w 頚管長短め、ウテメリン処方された
35w 頚管長大丈夫と言われた
37w 2600㌘はあると言われて安心
38w 1㎝頚管が開いた
39w 無事に3000㌘弱の赤ちゃんを出産
おめでとうございます。

あとがき

流産というのは、辛い出来事ですね。しかも1年、半年と長い時間がかかってやっと妊娠したのにというご本人の思いは痛いほど伝わってきました。

妊娠に関して、いろいろな情報がありますが、なかなかご本人にぴたっとくる情報がないのが実情だと思います。Uさんにとっては、不安定な子宮(女子胞)の状態と全身のパワー不足がリンクしていました。つまり、子宮や流産のことだけを考えるのではなく全身の生命力から考えることが大事なのです。妊娠は生命力の余力で行われます。余力がないと安定度が低くなってしまうのです。

妊娠中もいろいろなことがありましたね。もともとストレス状態になりやすい方で、気が昇りやすい(気の上逆)方です。妊娠中は赤ちゃんを守るために、普通の状態でも気が上向きに傾きます。その上向きのベクトルに加え、ご自身の性質もくわわると妊娠中がなかなか大変になります。上向きの気を引き下ろすことは流産につながってしまいますので妊娠中の身体の手入れとしては禁じ手です。しっかりと素体のパワーをつけ、中心(下向きではなく)へ向かう力をつけることが妊娠中を健やかに過ごして頂くコツです。妊娠中も色々な事がありましたが、無事に充分な大きさの赤ちゃんにめぐりあえたこと、ご本人の努力とご家族の協力のたまものですね。