概要
仕事が忙しく、日々のことで精一杯。体外受精しても妊娠ができず不妊治療が前に進まないというご相談。腹をくくって身体の養生をし、無事に妊娠、出産した症例です。
(この症例の患者さまの声はこちら→「妊娠中の鍼灸治療の満足度に関するアンケート」3-2)
【case:0302】【神奈川県/平塚】
ご相談内容
39歳です。28歳で結婚しました。夜勤が忙しく、仕事中心の毎日でとても妊娠を考える余裕もなく、35歳過ぎてからなんとなく妊娠を意識し、37歳から本格的に考えはじめタイミングを取りました。
39歳から体外受精に挑戦し、1回目は採卵し2個卵子がとれ、一個初期胚で移植しましたが妊娠出来ませんでした。
3ヶ月後、クロミッドを飲み、採卵周期に向かいましたが2つしか卵はとれず、受精はしたものの、胚盤胞にはならず、治療周期は終了となりました。
20代からの仕事が激務で、毎日を過ごすのが精一杯という感じです。ただ、自分自身の人生を生きることを考えたら、子供が欲しいです。
どうしたらいいでしょうか?
東洋医学的診立て
体外受精をしているけどなかなか治療が前に進まないというお悩みですね。
お身体の状態を拝見していると、身体全体のパワー不足が明瞭です(気虚)。
胃の状態などそれぞれは大きな問題を感じさせませんが、身体の中心となる生命の余力(東洋医学の世界では腎気)が不足しているため、余力がなく、精一杯に毎日が回っているという印象です。
このため、末端まで陽気が巡らず足先の冷えとなっていますし、首肩周りは頑張っての日々があるので、気の滞りができています。
いま、ご自身の人生を考えて、『子供が欲しい』ということであれば、ここは腹を括って、自分自身のタメに養生すると決めましょう。それが余力をうみ、子宮卵巣の力となり、子供を持つという道につながると思います。
受精卵がそれなりに出来ているので、全体のパワーアップができれば、なんとか妊娠ー出産へとつながるのではないかと思います。現在39歳ならば、時間はあります。焦らずに前に進みましょう。
不妊治療へのアドバイス:不妊治療を前に進めるために
・受精卵が出来ている状態なので、大きな妊活上の問題はない
・身体の余力をつける。
・体外受精を繰り返すのをいったんやめる。
年齢要因的に、『早く』と思うのはよくわかります。
ただ、今の忙しい生活に、病院受診、鍼灸治療とでかけることを重ねても、かえって負担がますだけです。
受精卵が出来ている、そして移植しても妊娠にたどり着かないときには、その原因を考えるべきです。お身体を拝見すると、東洋医学で言うところの『気虚』全身の弱りが明瞭です。まずここを育てなければ、妊娠という生命の余力でおこることはかないません。余力ができて初めて妊娠がスムーズにいくのです。
とにかく、腹を括って、『身体の余力貯金』をしましょう。ここがクリアできれば、生殖医療も上手く前に進めると思います。そしてここがないままに、繰り返しても、ただただ、疲弊し、ジリ貧になるだけです。
東洋医学的弁証論治
・弁証 腎虚を中心とした気虚肝鬱
・論治 益気補腎
・治療方針 気虚を救うために、腎気を中心にそこあげする。初診で手を入れていく中で、脾胃の弱さの経穴が出てきているので、愁訴としては脾胃の弱さは感じられないが、脾腎を中心に全身の体力をあげることを目標にする。
治療経過
週に1回の鍼灸治療、食事生活の養生、毎日のお灸養生を始める
ビッグママ治療室初診
鍼灸初診
手足:右外関(TE5)ー右臨泣 三陰交(SP6)、陰谷(KI10)、曲泉(LR8)
腹部:中注(KI15)、関元(CV4)
背部、厥陰兪(BL14)、右心兪(BL15)、右胆兪(BL19)、胃兪(BL21)、腎兪(BL23)、次髎(BL32)
セルフケア
三陰交(SP6)右が2左が1
右の外関(TE5)、右陽池(TE4)、中注(KI15)、関元(CV4)、
胃兪(BL21)、腎兪(BL23)、次髎(BL32)
2ヶ月後
いままで胃に重いと思っていた漢方薬をやめてみる。
4ヶ月後
体外受精ー採卵 3つとれた。1つ胚盤胞の凍結が出来た。
5ヶ月後ー移植(採卵移植を勧められたが、採卵と凍結は分けたらとアドバイス。)周期に入っていたが忙しく病院に行けず。
6ヶ月後、生理三日目の数値がよかったので、採卵にしようと思ったら排卵済み。
7ヶ月後、採卵してみることになった→3つとれた。良好胚が凍結出来た。
8ヶ月後
6回目のー凍結胚移植ー妊娠判定陽性 鍼灸治療の頻度をあげる
妊娠判定陽性でました!
12週、体重が妊娠前より減ってしまっている。めまい
15週、血糖値がやや高めで、食事を減らすように指導された
(食事を減らすよりも、胃腸の力をあげることで、血糖値のコントロールをしていく)
20週から 腰が痛い 光がまぶしい、身体がきつい
いろんなことがありましたが、なんとか無事に出産までたどりつき、3000グラム弱のしっかりしたお子さんを出産。
おめでとうございます。
あとがき
体外受精をして、受精卵ができるということは、妊娠まであと一歩です。胚移植をして結果が出ないときには、体外受精を繰り返すよりも、一歩待ってご自身の生活を見直し、体力貯金をアップし、卵巣子宮のパワーアップをはかるほうが結果的に近道だったということはよくあります。
あせらずに、ご自身の状況をよくみて、治療を前に進めていくことが大事だと思います。
仕事のきつさ、そしてもともとの体力のなさなどがあり、ムリをして頑張ってということがあたりまえになっている生活をなさっていられました。
そして妊娠を気に、その『ムリをして頑張る』だけが乗り切り方ではない。自分自身の身体、そして自分自身にやどった赤ちゃんの身体をまもるために、社会的な要求に距離をおくことも大切だと思います。
ご出産本当におめでとうございます。家族ができ、大事にされているごようす。本当にうれしいです。
あせらずに、ご自身の状況をよくみて、治療を前に進めていくことが大事だと思います。子宮内膜症のつらさ、頭痛や身体の痛みなどいろいろと不調のある方でしたが、ご主人との生活を楽しみながら、笑顔で生活されているご様子は伺っていて私まで楽しくなってくるようでした。またご兄弟との交流も多く、これからの日々が楽しそうですね。
ご出産本当におめでとうございます。