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不妊に対する治療があるのではなく、貴方に対する治療があるのです – 不妊!大作戦(7-1)

赤ちゃんが欲しいという方に私の治療室でおこなっている鍼灸治療について、お話していきたいと思います。

その人の身体をしっかりと拝見し、目標を考え、必要な治療をしていくことが一番の基本です(四診による弁証論治)

また、体外受精や人工授精、タイミングなどの治療周期に入っている方は、治療それ自体のダメージを受けている場合も多く手入れも必要です。身体の状態をよくしておくことは、西洋医学的な治療効果をよりあげるためにとても大事になってきます。

ここでは具体的に鍼灸治療を通じて、私の治療室で行っている身体へのフォローのお話をしていきましょう。

不妊に対する治療があるのではなく、貴方に対する治療があるのです

第一に考えておかなければならないのは、東洋医学の世界では、『不妊』という症状に対して、どうしたらいいかを考えるのではなく、『不妊』という症状をもっている『貴女』に対してどういう治療が必要であるのかを考えて行きますということです。

同じ西洋医学的な不妊の治療を受けていても、からだの状態、薬などに対するダメージは、それぞれでまったく違います。とくにホルモン剤の投与による治療に対する反応というのは、これほどまでに個々人によって違うのかと私はいつも驚いてしまいます。身体に対するダメージが強く参ってしまっている方もいらっしゃいますし、なんともない方もいらっしゃいます。

不妊治療を考えるときに、この感受性の差はそのまま不妊治療の作戦の差になります。

どういう選択をしていくのか、身体のフォローはどれぐらい必要なのか、個別具体的に考えていく必要があるということです。

基礎体温を整えていきます

基礎体温表をみていると、なかなか整わない方が多いですね。

薬で周期をつくっているときには、ちゃんとした高温期の線を描くけど、そうでない場合は排卵がない、高温期が短い、体温があがらないなどといった状態であるかたが多いです。

女性のからだは、リレーをしているなあと私はいつも感じています。

月経がきて体温が下がり、
下がった体温の中で卵子が着実に育ち、ポンと大きく飛び跳ねます。
卵子の大きな飛び跳ねにつれて、身体全体が高温期につつまれ、
子宮は受精卵をまつのです。

受精卵をまちつつ、次の卵の成熟に向けて準備。
着床、妊娠がおこらず、月経がくると、高温期に準備がされていた卵が主席卵胞となって次の排卵に向けて動き出します。

この一連の動きは、あたかも前の人からのバトンを受け取り、次の走者が走り出すような感じですね。

女性の身体の中では、つぎつぎと妊娠にむかってバトンがまわされ、リレーがおこなわれ、刻一刻と変化していくのです。

リズミカルな変化を伴った周期は、基礎体温表では綺麗な二相成のグラフとなり順調な低温期としっかりとした高温期となっていきます。身体の中を直接的にみることはできませんが、そこには、卵がしっかりと成長し、子宮内膜を妊娠可能な状態へ導いているという状態をあらわしています。

私は、『過去の分まで含めて基礎体温表をお持ちください』とお願いしています。

数年にわたる基礎体温表はその方の身体の癖、ありようなども教えてくれます。

どうしても、『今、今周期の排卵、高温期の日数』だけに注目しがちですが、長い目で見るとどういう流れになっているのか、どのあたりを中心にフォローすればいいのか、どの季節が順調なのかということもわかるのです。身体の状態をそのままに正直にあらわしているのが基礎体温だと私は思います。あなたの身体を知る重要な参考資料なのですよ。大切にして下さいね。

鍼灸治療で身体を整えていくと、目に見える結果として基礎体温が整ってくることが多くあります。リズミカルな身体のリズムを取り戻し、卵が気持ちよく成長しているのがわかりますし、ポンっとしっかりと体温が上がり、高温期の日数が増えます。

女性の身体はリレーのリズムが整うことで、次々とよい循環があらわれるのですよ。 身体のリレーが上手におこるような身体作りをしていきましょう。

具体的には、腎気の土台をしっかりとつくり、健やかで暢びやかな肝気や、気血の充実を促すことの出来る脾気の力づくりをめざしていく治療になるケースが多いです。

しっかりとした排卵をつけましょう

排卵がしっかりとせず、なんとなくダラダラと基礎体温が上がる方がいらっしゃいます。排卵直前のタイミングをねらって、身体の力を後押しするようにしっかりと鍼灸することで、ポンッと排卵して体温があがるケースを何度も経験しています。よい排卵があると、高温期もしっかりとしてきますね。薬に頼らない自力でしっかりとした排卵が出来る身体になっていただきたいと思います。

卵管采が上手に動けるために

二人目不妊などの、機能低下による不妊症の方は、精子と卵子が出会えていないキャッチアップ障害(ピックアップ障害)などに陥っている場合があります。

精子と卵子が出会うためには、卵管采が暢びやかに動き、排卵した卵をしっかりと捕まえる必要があります。

このときに必要なのが臍下丹田(下腹)の充実した力と、欝滞なく暢びやかな動きのできる暖かく柔らかい滞りや偏りのないおなかです。

具体的には、腎気をつけ、気の欝滞を張らす鍼灸治療をおこなっていきます。 下腹を中心にお灸を入れ、下腹に充実感が出てくるのをしっかりと確かめます。 また全身の状態を見て、身体に気の欝滞や偏りなどがないかバランスよく調整していきます。

ふんわりと着床できるストレス状態のない身体を作ります

受精卵は、母体にとっては異物です。その異物をやわらかく受け止め、母と子がひとつの生命として存在することが妊娠の成立です。

この着床時期には、身体のぐっと気張ったバリアを取り除き、生命の窓を開くように偏りのない、柔らかな心身を作るよう鍼灸治療をしていきます。赤ちゃんの卵をふんわりと受け入れることのできる気持ちと身体の調整を目指します。