カテゴリー : 不妊・婦人科 コラム

妊活を成功させる鍵:血流へのアプローチ(2)

(2)不妊と不育症:解決へのアプローチが同じ場合が多い!

初診でいらしたSさんの物語

初診でいらしたSさん、41歳。主訴は不妊。長らくの不妊治療をされていました。体外受精も10回以上の胚移植をなさっています。

妊娠反応がでるも、若いときには胎嚢確認、いまは化学流産を繰り返しています

1、2度は妊娠反応が出たこともあるとのことですが、残念ながら化学流産。治療前の年齢が若いときには、胎嚢確認まではできたのに流産になってしまっていますとのことでした。

その後、妊娠せず、不妊治療を開始、高度生殖医療を取り入れるものの不妊治療が前に進まないというお悩みでした。

お身体を拝見して、不育症では? と思いました。流産歴もあり不育症の検査は? とお伺いすると、『不育症の検査は念のためということでしましたけど、不育症ではないと診断されました』とのお返事。

不育症の検査といっても、範囲が違うという現実

うーん。ここで考えたのは、彼女の不育症とおっしゃっているものと、私が不育のカテゴリーではと考えている中身が違うと言うこと。

そこで、『その検査は保険の範囲内ですか?』と伺いますとYESとのこと。是非、もう少し踏み込んだ不育症の検査を受けて下さいとお勧めしたところ、自費の検査を受けられ、不育症と診断されました。そしてその後は鍼灸治療とヘパリンを使い、無事に赤ちゃんを抱くことができました。

不育症の定義を満たしてからの検査では遅いのでは?

不育症は、定義があります。しかしながら、現状では不育症の定義をまって不育症の検査をするのでは遅いのではないかと思うことが多々あります。

そしてこの定義で語られる不育症と、不妊にもつながり初期の着床障害や心拍確認前の流産を繰り返す不育症では少し違うように私は感じます。

不妊でひっかかり、やっと妊娠したのに、不育でもひっかかる。前に進まない

また不育と不妊の要素が重なっている方の場合は、不妊が解決し、妊娠反応陽性がでても、不育要因でひっかかり、出産までたどりつけないわけです。

不育の定義は、あたりまえと言えばあたりまえのことが前提です。20代であれば、妊娠はさほど問題なく成立し、その上で流産を繰り返し、不育症の定義をみたします。

でも、不妊がある方にとっては、不妊の壁を越えてやっと成立した妊娠が、不育要因で前に進まなくなってしまえば、また不妊の壁からの挑戦となりあす。

40歳での高度生殖医療での妊娠、流産後の治療の進み方

たとえば40歳で体外受精に挑戦しながら不妊治療をしている方。

2回流産してから不育症の検査をして…と言っていると、不妊治療そのもののタイムリミットを越えてしまいます。

流産がからむと採卵が数ヶ月から半年先になってしまうことも多く、治療が中断するからです。

ですので、検査は自費でハードルは高いのですが、私はお身体を拝見させていただいて『おかしいな』と思われた方には、不育症の定義は充たしていなくても、不育症の検査をお勧めすることがあります。そして残念ながらなのか、早めに発見できてよかったのか、検査が陽性になり『行ってよかったです』と言う結果が多くあります。

年齢要因によっては、不妊の課題が解決し得ない状況も…

そしてときに、行って不育症の診断はもらったものの、それまでの治療歴が長く、年齢要因的な因子が強く関与し、時すでに遅し…となることもあります。もっと早くご相談させていただいていれば…となることが1度や2度ではありません。

厚生労働省のサイトよりの情報

厚生労働省の研究班によって「Fuiku-Labo」というサイトがつくられています。

不育症の定義は以下の通りです。

【不育症の定義】(厚労研究班の研究成果を基にした不育症管理に関する提言(患者様用)から)

2 回以上の流産、死産、あるいは、早期新生児死亡(生後1週間以内の赤ちゃんの死亡)がある場合を不育症と定義します。すでに子供がいる場合でも、流産・死産、早期新生児死亡をくり返す場合は、不育症に準じて原因精査を行っても良いとされていますので不育症外来を受診して下さい。現在のところ、妊娠反応のみ陽性で赤ちゃんの袋が子宮内に確認されないまま、その後に月経になってしまう化学妊娠については流産回数には含めません。ただしくり返す化学妊娠については不育症に含めるか否かにつき今後検討していく必要があると提言されています。

この定義の中で、やはり化学妊娠についても今後の課題ということで取り扱われているのは進歩だなと思います。着床障害もこのカテゴリーに入っていくのではないかという気がします。(最新の「不育症管理に関する提言」はFuiku-Laboからご覧ください)

現在(2025/6/9)、化学流産に関してはこのように提示されています。

妊娠検査薬の感度が上がったため、子宮の中に赤ちゃんの袋が見える前に検査で陽性となり、その後、月経が来てしまい、赤ちゃんの袋が見えないケースが経験されるようになりました。このような場合を生化学的妊娠と呼びます。

以前は化学流産と呼んでいましたが、何の異常もない健康なカップルでも30%~40%と高率に起こっていることが判り、生化学的妊娠と呼ばれるようになりました。

不育症は2回以上の流産(子宮の中に赤ちゃんの袋が見えてからの流産)とされていますので、生化学的妊娠をされたからといって検査や治療を受ける必要は現時点ではありません。あまり神経質にならず、次回の妊娠に臨まれることをお勧めします。
ただし、欧州生殖医学会では2017年に生化学的妊娠を流産回数に含めるとしました。今のところ、日本、アメリカでは生化学妊娠は流産としていません。今後、繰り返す生化学的妊娠をどのように取り扱うかについて検討していく必要があります。

出典:Fuiku-Labo 不育症Q&A

化学流産、着床障害は、不育症と一般的に言い切るまでにはやはりなっていないと思われますね。

まあ化学流産の段階は、ある程度の”生殖の淘汰”の中でおきることでもあります。

鍼灸治療で血流をあげ、不妊や不育にお力になれます。

当院の鍼灸治療では不育症と非常に関連の強い、血流を改善して、この時期を乗り越え、無事に妊娠を継続出産に至った方を数多くいらっしゃります。

東洋医学的な体表観察や、冷え、血流といった観点からの鍼灸、セルフケアアプローチが効果的である症例も多いです。

当院の鍼灸治療では、着床の時期から、妊娠初期の12週までを特に『血流活性化の必須ゾーン』として、特に力をいれて治療をしています。是非、ご相談下さい。そしてなんとか、妊娠12週をこえ、赤ちゃんが抱けるところまで一緒にがんばりましょう。