(2)土台の力をつけたのちにやってきた自然妊娠
さて、不妊治療では、この土台の力が大切だというお話しをさせていただきました。さきほどの、泣きはらしたら妊娠した女性の場合、身体のストレス状態からの不妊でしたが、身体自体はしっかりとした土台があったため、ストレス状態が解消されたら、ぽんっと妊娠、そして年齢的に厳しい状況のなか年子の妊娠出産とつながりました。
しかしながら、このように妊娠をするための生命力の土台がない方がいらっしゃいます。
土台作り
【土台の力、臍下丹田の力、女性にとって子宮卵巣、生命力をアップさせることが土台の力につながる】
妊娠には、ストレス状態の緩和がとても大事です。そして、もうひとつは、身体の土台の力作りです。子宮も卵巣も骨盤内にあります。臍下丹田という言葉がありますが、まさに女性にとっての臍下丹田にあるのが子宮卵巣です。この力をつけていくのが、生命力をアップさせるという身体の土台の力をつけることにつながりますし、が不妊につながる、土台の力のなさが不妊につながる。
鍼灸は土台である臍下丹田や腰、骨盤に体表から直接アプローチできます。つまり身体の中にマーキングをして身体に「ここが中心だよ」と教えることができるんですよね。とくに、この土台作りはご自宅でもしていただくことが出来ます。あとでお教えしましょう。
土台の力のないところで、発散をするとより土台の力が負ける。すると不妊につながるという悪循環があります。これは、不妊治療をなさっている方を拝見していると、よく遭遇することです。
ストレス解消したいのです!!とおっしゃり、ぱあっと遊ぶ。遊ぶのはいいのですが、ストレス発散以上に疲労困憊なんですよね。気分は楽しいからそのときはがんばっちゃう。でも、翌日はぐったり。これでは、ストレス解消よりも、土台の力を失ったことの方が大きくなってしまいます。
さて、ここで、土台の力をつけたことによって無事に妊娠に致った方の症例を紹介しましょう。
土台をつくって妊娠症例ー現況
さて、ここで、土台の力をつけたことによって無事に妊娠に致った方の症例を紹介しましょう。
26才女性
強い冷え、非常に寒がり
だるさ、不整脈、翌日に疲れが残る、肩こり、寝起き悪い
大小便の状態よい
寝付きよい、眠り深い
20才頃から食欲がない生理
10代後半 高プロラクチン血症
1、2週間はよく遅れる
真夏、真冬に一回分飛ぶ
生理痛辛い
生理不順 19、24、26→自力で生理こず、
現在ホルモン治療を受けなければ生理こない現在の不妊治療
高プロラクチン血症の薬
排卵誘発剤、ホルモン剤によるタイミング指導主訴
冷え症、肩凝り、自力で生理がこないほどの月経不順、不妊26歳女性 身長162センチ 体重50キロ
2年ほど前から、手足がひどくつめたく、感覚がない感じがする。非常にさむがり。
生理不順で自力で生理がこない状態。
妊娠希望で産婦人科に通院中。切診:身体の土台の力を示すような経穴や胃腸の力を示す経穴に
弱りや冷えがある。舌も白く、脈も全体に沈んでいて、結滞という滞りを示す脈もある。この状況は生命力の土台がなく、
全体の生命力の不足(気虚)
胃腸の力の脆弱さ
腎気は年齢が若いのでそれなりにある。
衝任脉への養いがなくなり、生理が飛ぶ
土台をつくって妊娠症例ー『生理がこない』
生理が来ると言うことは
腎気の支えによって、
肝気が暢びやかになり、
健やかな脾気があり、
衝任脉が充実しているということが重要です。
奇経であるところの、衝任脉が満ち溢れ充実して生理が来るようにするためには、まずその土台となる臓腑の充実がかかせません。
自力で生理がこない
素体として全身の生命力の不足である気虚状態
生理のことを主どる衝任脉が貧弱なものとなってしまうため生理の不調
入浴後に疲れる、生理前、生理初期に疲れる、手足の感覚がなくなるほど冷たい、月経が不規則で遅れることが多い、真夏真冬に月経が飛ぶ、月経が自力で来ないなど、気虚(身体全体のパワー不足)の問題が多くみえます。
気虚ー気虚の原因は?
脾胃(胃腸の力)の状態が、20歳のころから、落ちています。
朝、食欲がなく、そのころから食欲全体も落ちています。
しかしながら、空腹感があり、食事は美味しく、便通にもそれほど問題はありません。
両足三里の虚、脾兪、太白の状態など、現時点であまり脾胃の状態がよいとはいえませんが、生命の器として壊れているとは言えない段階であろうとは思います。
腎の問題
20歳ごろから強い
寝起きが悪いこと、
翌日まで疲れが残ることなど、
両腎兪、大巨などの虚、
脈状が沈であり特に尺位が沈んでいることも腎気の弱さをうかがわせます。
全体を統合して
年齢的に若い
→脾腎の弱さが、生命の器としての脾腎の問題として強く出てはいない
→生命の余力として存在している生殖器系の問題として出ています。
つまり全身の生命力の弱さが、子宮に対する衝任脉からの養いの不足という形で出現し、自力で生理がこないという状態になっているというわけです。
脾腎がしっかりと全身を温陽していないため、身体を温めることができず冷えなどの問題も発生させているようです。
治療方針、胃腸の力をつけ、生命力の土台である腎気を養い、全身の気虚を救い生命力を充実させることで衝任脉を健やかにし、生理や妊娠の問題の解決につながるのではないかと考えられます。
土台をつくって妊娠症例ー基本方針
年齢が若い→西洋医学はお休みしましょう
自力で生理が来るまで(1年を目安に)
胃腸の力をつけ、全身を温養する力をつける
生理が自力で来るように
半年ほどして妊娠しなければ西洋医学を併用
タイミング~6回
AIH~6回
IVF~20代のうちに
西洋医学の不妊治療について
西洋医学の不妊治療は、高プロラクチン血症の薬やそのほかのホルモン剤などを服用なさったうえに、タイミング指導による不妊治療をなさっていらっしゃいましたが、妊娠のことを直接的に考えるのは少しお休みしてし、身体をしっかりさせ、自力で生理がくるように、そして基礎体温がしっかりと2層を描くように、当分の間、鍼灸だけで頑張ってみましょう。
治療に対して反応が悪かったり、変化がないようでしたら、すぐに産婦人科での治療に戻ればいいのだからという決心で、いったん西洋医学的な薬をつかっての不妊治療はお休みです。これは、ご本人としても、体調は悪い上に、生理も自力でこず、タイミング指導も負担だなあと感じていらしていたので、ちょうどいいお休みということになりました。
土台をつくって妊娠症例ー治療経過、妊娠!
週に1度で鍼灸治療
半年 全体に調子がよい
疲れやすさが↓
10ヶ月 生理整う、二相性のグラフ
1年 ほぼ生理の問題解決
体調も良い
1年2ヶ月 妊娠~出産
3年後 第二子妊娠~出産
治療開始半年後ごろ
全体に身体の調子がいいとおっしゃるときが増えてきました。いままでの疲れやすさがだんだん解消しているようです。
治療開始後10ヶ月目ごろ
真夏には、生理が遅れ気味になりましたが、全体として生理が整ってきました。高温期が14-15日程度続くようになり、しっかりとした二層性のグラフを書くようになってきました。
治療開始1年目
ほぼ生理の問題が解決し、体調も非常に良好になってきました。
「いつ妊娠してもおかしくないねえ。これでもう、半年ぐらい経過をみても妊娠しなかったら産婦人科での不妊治療を再開してもいいかもね」
などというお話を患者さんとしました。
治療開始1年二ヶ月目 妊娠!
土台をつくって妊娠症例–ドクターのコメント、無事にご出産
ドクターから、20才のときに生理がこないことで受診した先生で、過去のデーターをご覧になって 「自然妊娠したの? 以前の血液検査の数字をみると、不思議なぐらいだね、」との言葉。
その後、妊娠中も週に一度のペースで鍼灸治療を続け、順調に経過。12月の初旬、かわいい女の赤ちゃんをご出産されました。
出産から2年
出産から2年。産後は生理が非常に整い、ほぼ狂うこともなく順調とのこと。 また、以前は、疲れやすくて、疲れるとすぐに生理がこなくなったり、ばてたりと言う感じだったのが、すっかり元気になって、身体が全体に丈夫になったとのこと。
経過をまとめて
出産は、女性にとって、身体が大きく変化するときです。出産をきっかけに、リウマチや喘息などの虚損病を引き起こすことがありますし、また逆に、この方のように、身体が整い、丈夫な身体に生まれ変わることもできます。
本症例の方の場合、目先の症状の変化にとらわれず、しっかりとした身体作りをすることを、ご本人と治療者が一緒になって頑張ってこれたお陰で、このような良好な経過を取ることができました。
冷え性だ、肩こりだ、不妊だというときに、どうしても、とりあえずの手当てで、その場しのぎをしていこうということになってしまうことがよくあります。でも、それらの症状が、全身の問題で派生している場合は、まず全身状態をよくしていくことが第一であり、また、全身状態が解決すると、あとは、自然にスルリスルリと問題が解決していくことがよくあるのです。一見、難しそうな問題も生命力を充実させることで、ご自身の力で解決することができるわけです。
これは、道のりとしては少し迂遠に感じる方も多いかと思います。
実際、不妊が主訴の場合は、年齢的な要因もありますので、西洋医学的な不妊治療と平行して、生命力を上げる治療の手をいれるという選択肢もあります。
しかしながら、この症例のように、年齢が若く少し時間の余裕があれば、しっかりと生命力を充実させることをすることが、問題の根本的な解決につながり、その後の人生にとって、力強い応援となる事にもつながります。
御本人の生命力が充実したことにより、自然と妊娠が迎えられれば、その後の妊娠中の経過も非常によいものとなり、産後の状態も健やかにすごせるというわけです。