カテゴリー : 学会・論文

第62回 全日本鍼灸学会 講演記録『着床、妊娠、心拍確認に至った難治性不妊症への鍼灸治療』

治療方針

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治療方針は、現時点を押さえ、治療の順番を考えながら立てていきます。

まず一番の優先課題は脾腎両虚への対応です。脾腎を底上げし、腎虚と肝鬱の悪循環をストップさせます。またその悪循環に拍車をかけている風邪の内陥を、督脉を暖め導くことによって取り去ります。

初診時のポイント

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この方の場合、臨床所見として督脉のありようが特に面白かったです。

上焦、中焦、下焦と督脉の各々の部位に細絡があります。

督脉は全身の陽気をうかがい知ることが出来、子宮と関連が深いと言われています。その督脉に気血の巡りの悪さをあらわす細絡が特徴的に出ているわけです。督脉を温通し下焦を養うことをめざし、またこのことによって風邪の内陥も取り去ることを目指します。この督脉を温通し、妊娠する力を養うことは私の不妊治療の中心ともなっています。

督脉を温通し、併せて下焦を養うことで、腎気が温養され、結果としてオケツもとれ妊娠しやすい環境をつくります。

初診から二ヶ月の鍼灸治療

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脾腎の陽気を立て風邪の内陥を取り去るという治療目標に対しての具体的な鍼灸治療です。

脾腎の陽気、特に脾の陽気を使って全身の陽気をたて風邪を負いだしていきます。

2ヶ月後、半年後の患者さんの感想です

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2ヶ月後、陽気がたつことで肺気脾気がたち、風邪の内陥がなくなっています。この風邪の内陥がとれると、患者さんは身体が『がらっと変わった』と認識されることが多いです。それほどこの風邪の内陥は生命力に負担となります。

肌荒れがなくなるというのは、不妊治療ではポイントとなっていきます。私の臨床では、肌がしっとりとして一体感が出てくる同時に、ホルモンの状態、基礎体温の状態がよくなるケースを多く経験しています。

半年後には卵胞の状態や数も増えてきたという報告があり、腎気がある程度持ち直してきたのではないかと思われます。