カテゴリー : 学会・論文

第64回 全日本鍼灸学会 講演記録『女子胞力を増すことによって、妊娠出産に至った一症例よりの考察』

Q4 患者さんへのアドバイス

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患者さんへのアドバイス 生活提言
東洋医学の世界では、一人の、丸ごと一つの生命の流れをみていきます。そしてよく診るために5つの肝心脾肺腎という観点からみていきます。

○○さんの場合は、中学時代から、身体を温め養う(温養といいます)腎の力が不足していました。

この腎の力は、生命力の源、身体をしっかりと下支えする力です。腎の力不足が、全身のだるさや、疲労感につながりますし、また腎の問題は下半身の問題とつながりやすく、尿に問題がでやすくなったのでしょう。

結婚後、体重が増えることができたのは、脾(胃腸の力)のちからはそれなりにあったので、身体を充実させることができたためです。妊娠することが出来たのも脾の力により気血がそれなりに生成されていたためです。しかしながら、充実した身体を下支えする腎の力が弱かったために、妊娠が継続できない状態にありました。

また増加した体重を支えるにはしっかりとした腎気が必要です。腎気が不足気味であったため、体重を支えきれず、ふくらはぎの違和感や股関節の問題が出現。身体の気血のめぐりは滞りが強くなり、生理の血に塊がまじりやすくなるという新たな問題の出現へともつながっています。

いま、この『妊娠することは出来る』という時点で、しっかりと生命を下支えする腎気の力をつけましょう。

腎気がしっかりしてくれば、しっかりと子宮を支え、養い、せっかく成立した『妊娠』を継続する力がはぐくまれます。また、体重が増え充実してきた身体を支えることもできます。尿の問題、股関節の問題なども解決していくことができるでしょう。

また、いまの時点は、生理の血に塊がまじるなど、新たな問題が生じ始め、妊娠そのものが成立しづらくなる悪循環へと陥いる可能性をも感じさせます。

いま、この時点がとても大事な時期です。しっかりと養生していきましょう。一緒にがんばりましょうね。

Q5 女子胞力に対する、全体俯瞰的な考え方

女子胞力は基本的に全身の生命力とリンクします。『全身の生命力を高めること』がイコール『女子胞力のアップ』となります。不妊という場合でも、この五臓の生命力をよく鑑み、生命力をアップさせることで女子胞力がアップし妊娠につながることはいうまでもありません。

そこで、まず全身の生命力をよく俯瞰して治療方針を考えることが大切となります。私はこのときに『肝木の生命観』をイメージの土台とすることが多いです。肝木の生命観は全身をイメージしやすい現代人を理解するときに使い勝手の良い生命観となります。

肝木の生命観について
大地に立つ一本の木で、丸ごと一つの人間を理解しようとしている図です。このような健やかな木であれば女子胞力も豊に充実します。下図を参照して下さい。

また、とくに女子胞力は腎気と直結します。
 1)年齢による腎虚
 2)全身の生命の虚損が腎気の虚損にまで及んだもの
 3)精神的なストレスが腎気に影響をしているもの
 4)婦人科疾患で、下焦の場を傷め腎気が問題となるものです。
 5)出産によって、気血や腎気の消耗につながってしまったもの。

このなかで、出産は特に腎気の支えが必要となります。出産時の腎気の底割れは生命の危機にもつながりますし、大きな気血の消耗により、産後における虚損病や、不妊などにつながるケースもよくみられます。このためにも、不妊、不育をこえた妊娠中でも腎気を補い、腎気を充実させ出産を迎えるようにすることが大切であると考えております。

Q6 肝木図

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