カテゴリー : 講演記録

2015年 山下湘南夢クリニック講演『女子胞力を磨く、東洋医学鍼灸で出来ること。』

6 まともに移植出来る卵が育ちません

次の症例です。

37歳の女性、『何度も体外受精をしています。誘発方法を変えたりしながら、採卵をしていますが、変性卵や、グレードの低い移植不適応の卵しか育たず、まともに移植出る卵が出来ません。どうしたらよいでしょうか。』

この方は、子供の頃から手足末端が氷の様に冷たい、胃腸の状態が不安定、生理痛がひどく塊が多いという状況でした。20代後半にご結婚なさるも体調不良で32歳から妊娠希望と言うことで、タイミング人工授精などを2年ぐらい行い、その後体外受精へとステップアップしています。

しかしながら、体外受精を何度も繰り返しても妊娠ー出産に結びつかないというお悩みです。

7 まともに、治療方針

東洋医学的な分析

腎陽虚、気血両虚

 土台の力(腎気)不足、とくに身体を温め養う力の不足から、生命力全体の不足へとつながっている。

益気温養補腎

大地(脾腎)の力を充実させ、生命力を回復させよう!!

不妊!大作戦を実行しましょう! 具体的なアドバイスです

鍼灸:週に1-2回の治療頻度、鍼灸治療の度にご自宅でのお灸手入れを指示しますので、毎日お灸してください。

睡眠:11時前には寝ましょう

食事:食事記録をつけましょう。全体のバランスをみながら、タンパク質、よい油、緑黄色野菜をとりましょう。

運動:歩くことを増やしましょう、やり過ぎによる疲労に注意。一人で出来る運動をしましょう。

卵巣嚢腫、子宮内膜症などのために採卵が難しいときが多いのならば、採卵がスムーズなクリニックへの転院も考えましょう。

8 まともに、治療経過

判定日の成績 hcg14

妊娠判定日、私宛にお電話がありました。

『先生、今日判定日だったんですけど、hcgが14しかなくって、ドクターからは様子をみましょうと言われちゃいました。』

今までのこの方の経過で言えば、hcg14といえどもとてもよい状況に思えました。ちゃんと胚盤胞が殻から抜け出て、なんとか子宮内膜に着床したわけです。私はお返事しました。

『とにかくくっついたんだから、ここは粘りましょう!!血流をぐっとあげて、しっかりとくっついてくれる様に粘りましょう!!!』

ここから、次の判定日まで、ほぼ毎日鍼灸治療をしました。そして2回目の判定日ではドクターから『充分ok』という数字に伸びているとの言葉をいただき、その後妊娠が継続。

☆妊娠判定から、クリニック卒業まで何度もP値のチェックがありました。そのときにビッグママで指示されていたお灸を多少さぼる。

☆睡眠不足

この2点でP値が下がることが明確になりました。のんきに、『今週はお灸をちょっとさぼっちゃったらP値が下がってしまって。』などとおっしゃり思わず苦笑。なんでさぼるの!!と突っ込みを!実は他の方でもやはりこのP値の変動がある方がいらっしゃいます。血流が不足しがちな方は、やはり強力なバックアップがある時期まで(だいたい12週まで)必要ではないかと思われます。また睡眠不足もP値の低下に直結です。とにかく寝ましょう。

そして、無事にクリニック卒業となりました。やれやれ、よかったねえ。