論治 5/6
主訴は肩こり、冷え症ということとで、現在、不妊症で婦人科を受診中であり 生理を中心とした婦人科の問題もかなり困っているということです。
生理が来るということは、衝任脉の充実、そして血を推動させるものの存在と しての気の充実ということが欠かせません。
本症例の患者さんの場合、１８歳のころ、２０才のころ、そして２５歳の現在と、 数回にわたり、生理が自力でこなくなるという状態になっています。このことは、 ひとつに気虚の問題。そして衝任脉の問題が考えられるのではないかと思い ます。
血を動かす気の虚が、生理が来るという問題に深くかかわっているのではないか。 また、血海とも言われる衝脉、妊娠の脉ともいわれる任脉、腎気と深くかかわる 督脉は一源三岐の言葉どおり、子宮と深いつながりをもっています。この諸脉の 状態が全体としての来潮の問題、妊娠の問題を引き起こしているのではないかと 考えられます。
このことを考えると、気虚の問題は根深いです。
入浴後に疲れる、生理前、生理初期に疲れる、手足が感覚がなくなるほど、冷た い、月経が不規則で遅れることが多い、真夏真冬に月経が飛ぶ、月経が自力で来 ないなど、気虚の存在は否定できません。
気虚を考えていくと、気虚を引き起こしてくる原因を考えていきたいと思います。
脾胃の状態は、２０歳のころから、落ちています。朝、食欲がなく、そのころか ら食欲も落ちています。しかしながら、空腹感があり、食事は美味しく、便通に もそれほど問題はありません。両足三里の虚、脾兪、太白の状態など、現時点で あまり脾胃の状態がよいとはいえませんが、器として壊れているとは言えない段 階であろうとは思います。また、空腹感があり間食をよくするということは、胃 熱の可能性も考えられます。胃熱のために食欲が出てしまい、間食などをするた めに、より脾胃の状態が悪くなるということです。また、胃熱が出てくる可能性 として、腎の陰虚が匿れているのではないかということも考えることができます。
しかしながら、舌が潤で、便通に異常もないことから、胃熱や腎の陰虚の問題 はあったとしても、現時点ではさほど大きな問題ではないと考えてもいいかもし れません
腎の問題は２０歳ごろから強くなっています。寝起きが悪いこと、翌日まで疲れ が残ることなど、腎気の弱さをうかがわせます。また、両腎兪、大巨などの虚、 脈状が沈であり特に尺位が沈んでいることも腎気の弱さをうかがわせます。
年齢的にお若い方ですので、脾腎の弱さが、脾腎の問題として強く出るというよ りも、生理の不安定さとして、つまり子宮に対する衝任脉からの養いの不足とい う形ちで出ているのではないか、また、脾腎の問題が全身の気虚を引き起こし、 それにより、生理が自力でこなくなるということでは ないかと考えられます。
不整脈の問題は、生命力の虚、他の臓腑との関連を考えなければいけません。 肝、心にまつわる問題はさほどでていませんので、脾の問題か、腎の問題かといっ たところが考えられます。腎虚の要素が症状として強くでていますので、やはり ここも腎虚の問題のひとつとして把えてもいいかと思います。
脾気の弱さ、腎気の落ちということから、全身的な気虚を引き起こしているこ とが、本症例での月経が自力でこないということに一番影響を与えているのでは ないかと思います。そして、子宮を養っていく、衝任脉の問題も、脾腎の問題か ら派生していく問題となります。脾腎がしっかりと全身を温陽していないため、 問題を発生させているのではないかということです。
脾気をたて、腎気を温陽し身体を温める力をつけていくこと。そして、気虚を 解決し、衝任脉を健やかにしていくことが、肝要かと思われます。
現時点で、自力で生理がこないため、婦人科での治療を不妊治療とあわせおこなっ ていますが、まだ、２５歳とお若いです。一日も早く赤ちゃんが欲しいというこ とはよくわかりますが、時間の余裕があれば、少しからだの充実度を高めてから、 婦人科での治療を再開してはどうか（すなわち、生理が自力でくるようになって から）と、お勧めします。
また、間食などをやめ、脾胃の状態をよりよくしていくことも必要だと思います。
弁証、気虚、腎陽虚
論治、健脾温腎
☆その後の経過☆
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