霍乱は、外側からは暑熱に感じ、内側からは飲食や生物、冷たいものによって傷ら
れ、たちまち心下部や腹部が痛み、吐瀉、発熱、悪寒、頭痛、眩暈、煩躁し、手足
が冷え、脉状が沈となり死にそうになるものです。転筋腹にはいるもの【訳注:腹
中が引き攣れたように痛むもの】は死にます。また吐せず、瀉せず、悶え乱れる
ものを乾霍乱といい、治しがたいです。
転筋は、突然に吐瀉して津液がかわき、脉が閉じ、筋肉が痙攣をおこします。はな
はだしいものは、陰嚢が縮まり、舌を巻き、そのようなときは、治しがたいです。
男は手でその陰嚢を引き、女は両方の乳を引いて中央のほうへひとつに寄せなさ
い。これは妙法です。
おなかがはって、急に痛むときは、鍼をまず幽門に刺しなさい。この穴に刺せば、
かならず吐逆します。治療によって吐逆しても痛みが増して、目がこちらをじっと
見つめることがありますが、治療者は心配することはありません、気を取り直し
て、その後、気海、天枢に鍼をしなさい。
霍乱には陽陵泉、支溝、尺沢、承山。
腹痛には委中、吐瀉には三里、関衝。
胸満し悶えているのに吐かないものには、幽門に鍼をしなさい。
【訳者私見】
おなかがはって・・・・というところからの訳文。かなり意訳してあります。正
豊さんが、お弟子さんに向かって語りかけている部分ではないかと思ったのです。
急にお腹がいたんだ患者さんを目の前にして、まず幽門に刺してみる。そうする
と、患者さんは吐逆し、場合によって痛みがまして、目つきがおかしくなることが
ある。そんなときにも、術者は心配せずに気をしっかりもって、次の一手で、気
海、天枢に鍼をしなさいと語りかけているのではないかと思ったのです。
治療によって悪化するとき、経験が未熟なものは、脅えてしまいがちです。夫れ
に対する配慮ではないかと私は思います。