痰は湿に属し、津液が変化したものです。
痰をわずらうと、喘【訳注:ぜいぜい】し、咳【訳注:ごほごほ、ごんごん】し、
嘔【訳注:げろげろ】をなします。
また、嘈雑【訳注:胸やけ】や、怔忡【訳注:心臓がばく
ばくすること】、驚怖【訳注:感受性が強くなりびくつくこと】し、寒熱したり、
痛んだり、腫れたり、痞【訳注:心下部がつかえること】したり、ひどく気が塞
がったために手足がしびれて使いにくくなったり、口眼がびくびくし、眉稜や耳輪
が痛み、かゆくなったり、胸や脇の辺りに音がしたりしするといった
症状が出ます。
また、背中の中心の一点が氷のように冷え、肩から項にかけて痛み、咽に痰が粘り
付いて、吐いても出ず、呑み込もうとしても呑み込めません。
これらはみな胃の気が虚して肺気をコントロールすることができないためにおこっ
たものです。またあるいは、四気七情に犯されて気がふさがったために、痰が集ま
りこのような症状を呈することがあります。
不容、承満、幽門、通谷、風門、膈兪、肝兪、中涜、環跳、肺兪、三里。
【訳者私見】
風門、肺兪で風邪の気を取り去る。
不容、承満、幽門、通谷、足三里は胃の気を整えることを中心に。
湿痰がからんだ方を腹診すると、季肋部のあたりに、積もったような感じがある
ことがありますよね。不容、承満、幽門、通谷などは直接的にそれを動かそうとい
う発想かもしれません。
環跳、中涜
陽陵泉と言わず、環跳、中涜というところに意味があるのかな。臀部、大腿部と
いう体幹にもってくるということは、身体の樞紐を大きく動かそうという発想かも
しれませんね。また少陽は樞であり、大切といった意味合いでしょうか?
穴性学ハンドブックに環跳は「腰腿の風寒湿による痺証を治す。四肢腰腿経絡
の風邪を去る」また、環跳、風市で「腰腿の風湿を捜し、痿痺などの諸病を治すの
に霊効がある」とあります。
風市と中涜の違いは、臨床上あまり問題にならないのかもしれませんね。この辺
りに反応があるということかもしれません。
風市は中風七穴にも出てきます。意味あいがわかる感じがしますね。