【訳者私見】
脹満は、お腹ばかり大きく手足が腫れないといっていますので、これはいわゆる腹
水の状態でしょうか。これを脾腎の虚ととらえているのですね。
三里、脾兪の灸は、脾胃を建てる強力な配穴だと思われます。これに胃経の章門、
肝経の章門と季肋部の経穴を配しています。腫脹しているところはじかに施灸を
してもあまり効果が期待できないという点からも、すっきりとしたシンプルな配穴
だと思います。
針では、上脘、承満と上腹部の経穴や、期門、章門といった肝経の経穴をと
り、上部の気欝を払うことをしています。章門は臓会でもありますので、臓腑の気
を整えるという観点もあるかもしれません。肝経と言う点では他に行間をもってき
ています。水の停滞に対して、肝気をたて気の流れを整え、水を排出させようという
考えでしょうか。また陰谷、復溜といった、下腿腎経の経穴も使っていますね、陰
谷は特に合水穴ですね。
水腫で胸が苦しいときには、陰陵泉という脾経の経穴をつかうとあります。
下腿経穴で、脾経を使うときと、腎経を使うときの差は、上腹部のつかえというこ
となのでしょうか。
さて、どうして水分にさしてはいけないのでしょうかねえ。なにか失敗経験がある
のかな?それとも水腫のある局所であるので、感染などをおそれてということで
しょうか。ただ、古くには禁鍼穴との記載もあるようですから、それを踏襲したも
のかな。水分自体は、効果が高いことで、いまでは禁鍼穴扱いにはなっていません
ねえ。