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知一庵さんの【写真館】より

婦人の科


婦人は一四にて月経が始まり、四十九にして絶えます。病は男子と大体同じです が、産前、産後、月経不順、癥(疒+假-イ)【訳注:子宮筋腫】、崩漏、 帯下の証だけは婦人だけのものです。常に血虚し、気欝しやすいです。







  1. 月経不順には、気海、三陰交、中極、帯脉、灸をする場合は一壮を越えてはいけません。また肩兪は効果があります。



    【訳者私見】

    1、の月経不順。これを、気海、三陰交、中極、帯脉に一壮づつ灸をしとあります。補うことを中心と考えるよりも、気欝を通し月経をつけていくという感じがしますね、気が動いたことをみていく感じではないかと思います。帯脉は臓会の章門と並べて、臓腑の調和を取るという考えかもしれません。

    月経不順の場合、周期が早くなる、遅くなるなどで、意味づけは違うのですが、わざわざ一壮づつとしているところをみると、気欝を張らす事を中心にしているのではないかと思われますねえ。この一壮づつというのを、弱刺激による補ともみることは出来るのではないかと思いますが。私は臓腑の調和、気を動かすことという観点が中心ではないかと考えてみました。

    もう少しつけ足しますと、前提として、女性は常に血虚し、気欝しやすいですとしてあります。月経不順の原因を血虚が中心と考えますと、灸を一壮づつというのは、それで虚が補えるという発想をもってくるのは、無理ではないか。それよりも、気欝しやすいというところに、考えの中心をおいて、気を動かす、気をすかすということを中心に考えたほうがいいのではないかという、発想で解説してみました。

    月経不順といったときに、正豊さんの見ていた時代には、このような女性の月経不順が多かったんでしょうねえ。いまだと、ストレスが中心で、排卵がはやくなり、月経が早くなるといったタイプの方かもしれません。

    現代の月経不順の場合、肝欝が中心となることもありますが、それ以外に、冷えが問題の中心となっている場合のほうが多いような感じがします。そうすると、下焦の温補を中心のもってくるという発想が治りがいいのではないかと思います。正豊さんだったら、なんて仰しゃいますかねえ(;^^)。






  2. 月経の経血量が多いものは、通里、行間、三陰交。
    月経が来ないで、顔が黄色くなり、嘔吐し、子供のいないものには、三陰交、曲池、支溝、三里。



    【訳者私見】

    2の月経の経血量が多いもの。これには、通里、行間と三陰交をあわせています。通里が、心経の絡穴であり、心を寧め、心を安んじ、三焦を清し胸膈を利すとあります、また行間は、足の厥陰の栄火穴であり、瘀をさり、絡を通じ、火鬱を漏らし血脉を通ずることができるとあります。

    つまり、経血量が多いのは、熱によるものと考え、熱を清すること、瘀をさらせることを中心に考えているのですねえ。






  3. 経閉【訳注:月経が来なくなった】には、会陰三壮、月経がきにくくなったものには、気衝七壮、あるいは関元。

  4. 月経がきにくくなったもの、量が多く、心下が満ちて、遠くを見ることができず、お腹が痛むものには、水泉に五壮灸をしなさい。

  5. 崩漏するもので、月経が調わないもの、逆気し、腹脹するものには血海に灸を三壮しなさい。

  6. 漏血し【訳注:経血が少しづつ流れ出て】止まらないものには、太衝、三陰交。




  7. 【訳者私見】

    漏血【訳注:経血がポタポタと止まらないもの】に対して、太衝と三陰交があげられています。太衝は、肝気の条達を助け血をよく蔵することを目的とし、この場合の三陰交は、脾を補うことを中心として、同時に肝陰腎陽を補うところから、滋陰益血していくという考え方ではないかと思います。






  8. 血崩し【訳注:大量の経血が出て】止まらないものには、気海、大敦、陰谷、太衝、三陰交、然谷、中極。



    【訳者私見】

    7の三陰交も、6と同様に、滋陰益血が中心であろうと思います。大敦は、足の厥陰の脉、井穴であり、血崩という危機的な状態のときに、肝気を急いで建てようということが中心ではないかと思います。また、血をとどめるのに、補気していくという考え方で、気海。中極は、足の三陰と任脉の会であり、経を整え、血を養い、血室を整え、下焦を清利するということではないかと思います。






  9. 赤白帯下【訳注:血の混じったおりもの】には、白環や帯脉、関元、三陰交、気海、間使。

  10. 長く続くおりものには、曲骨、次(骨膠ー月)、長強、

  11. 月経時に性交をし、風邪を引き込み、身体がやせて、虚労のような状態になってしまったものは、腎兪、風門、中極、気海、三陰交。


    【訳者私見】

    10は面白いですねえ。月経時というのは、下焦が空虚になりがちなときです。そのときに、風邪を引き込むという外感が加わり、身体がやせて虚労になるという事をいっています。これに対して、腎兪、気海、中極、三陰交を使って、裏を腎気を中心にたて、風門で風邪をはらっていっています。内傷と外感を面白い具合に考えていますねえ。これは応用の効きそうな考え方だと思います。多分、治療の順番なども臨機応変にみていくのでしょうねえ。






  12. 月経のときに、風邪を引いたのならば、期門に鍼をしなさい。


    【訳者私見】

    月経のときの風邪には期門。月経そのものと肝経との関係がまず考えられます。月経時には肝気が疏通することにより、スムーズに月経が下ります。風邪によって、それが阻滞すると考えているのかもしれませんね。また期門は、中脘からの肺経への繋がりともなります。期門に鍼することで、肝気を疏通させ、肺気をたてているのかなと思います。






  13. 臍腹が冷えて痛み、脇の下に引いて痛むものには、中庭に二一壮。

  14. 諸々の関節が痛んだときには、陽輔。(月+端-立)腓の病【訳注:腓腹筋の病?】には崑崙、承山。


    【訳者私見】

    胆経の陽輔は四肢の風邪を探すとありますね。胆経と風邪は、中風七穴でもふれたように深い関係があるようですね。開闔枢の枢である胆経がしっかりすることで、風をすかしていくのでしょうか。






  15. 足に力の入らないものには、陽【訳注:三文字脱落】陽、丘墟。

  16. 足が弱いものには、膝関、委中、三里、陰市。

  17. 足の筋肉が引きつったり、足が重く腫れて痛み、鶴膝、歴節風となったものには風市。

  18. 腰が重く、足の筋肉がつるものには、両膝をまげて、両紋四カ所に三壮ずつ一斉に灸をしなさい。

  19. 腰の痛いものには、僕参三壮。

  20. 膝より上の痛みには、環跳、風市。

  21. 膝より下の痛みには、犢鼻、膝関、三里、陽陵泉に灸。

  22. 踝より上の痛みには、三陰交、絶骨、崑崙に灸

  23. 踝より下の痛みには、照海に灸。

  24. 足の痛みには、真骨がよい

  25. 脚気は風市に灸をし、次に伏兎に鍼を三分いれなさい【原注:灸をしてはいけません】犢鼻、膝眼、地五会、三里、上廉、絶骨。





  26. 冷えで疲れるものには全て関元に灸をしなさい。

  27. 月経が調わず、塊となるものを(病ー丙+徴)(病ー丙+假ーイ)といいます。関元に灸をしなさい。


  28. 【訳者私見】

    関元は、足の三陰と任脉の会であり、小腸の募穴です。陰精を滋補し、腎を培い元を固め、血室を温調し 陰を除き寒を分つとあります。25の冷えるものには関元というのもわかりますし、また26の塊の場合も、塊が出来る理由が冷えであると考え、関元を灸し、あたためることによって、塊を動かしていこうという発想だと思います。






  29. 血塊には復溜、三里、気海、丹田、復帯、三陰交。

  30. 小腹が堅いものには、帯脉。

  31. 血の道の病で、目眩、頭痛、発熱、嘔吐をして食べられなくなったものには、不容、風府、大椎、大杼。


    【訳者私見】

    これは、上腹部の気欝を払うことを不容でし、大杼は熱をさらせ、風をすかしていこうという発想。血の道の病でとあるのですが、あえて下焦をつかわず、気の上衝による症状を払うために、その部位そのものを瀉法の鍼を用いて払っていこうという発想ではないかと私は思います。






【訳者私見】

女性についてのベースとなる特性を、常に血虚し、気欝しやすいものであるととら え、その上での各論になっています。

三陰交が、

 1、月経不順

 2、月経量の多いとき

 3、月経がこないで顔色が黄色くなるとき、

 6、漏血【訳注:経血がポタポタと止まらないもの】

 7 血崩

 8、赤白帯下

 10、月経時に風邪を引き込み虚損病になったとき

 21、踝よりも上の痛み

などなど、多数使われています。

三陰交は、穴性学ハンドブックによると、肝脾腎の交会穴でありよく脾土を健やかにし、肝陰と腎陽を補い、三経の病を調理するとあります。







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