病人を仰向きに寝かせて、足をまっすぐにのばさせ、両手を股の脇につけさせ、男
は左、女は右の乳の下を手のひらにて押さえ、病人の心をしずめます。
息を5,6呼ほどしてから、その手をおろして、上脘より押さえて静かに左右
を候いみます。男は左、女は右を先にみるときに、心よいものは虚です、押さえて
痛むものは実です。軽く押さえて痛むものは邪は表にあり、おもく押さえて痛む
ものは邪【原注:やまひ】は裏【原注:り、そこ】にあります。
臍より胸の間がすいて臍より下がふくれて押さえ応えあるものは、腎精の実である
のでよいです。胸の下がふくれ、臍下がすいているのは腎虚です。
臍の上下がなれあって何のさわりもなく押さえ応えのあるものは無病の人です。
あるときは堅く、またあるときはただやわらかくて木の枝などを袋に入れてさぐる
ようなものは、たとえくるしくなくても病があります。
左右の立筋がはっているのは性気【訳注:精気のあやまり?】の虚です。
生死を候うには、臍の下三寸関元の穴を手先にて押さえます。力なく空虚であり、
指を動かしみると、中がくぼんでいて、立てに溝があり、指が陥るようなものは死
にます。この穴は天の一元の気を受け始まるところ、すなわち一身の太極と呼ばれ
ているところです。
経では、臍下【原注:ほそのした】腎間の気は人の生命十二経の根本、三焦は元気の別使と語っています。このように、【訳注:生命は】三焦の根本よりはじまり、また三焦に終わります。ですから死のうとして
いるものは必ず三焦の部の一元の気がないわけです。一元の気をよくうかがい、有
無【原注:あるかなきか】をしるときは、生死を弁えしるということになります。
胸の下が堅く石をなでるようなものは、必ず死にます。この他、腹診の伝授はあり
ますが、医の秘密でありますのでみだりにあらわしません。
また見脈をして生き死にを知りなさい。見脈がよい人は床につき、食べられない
といっても本復するものです、見脈も腹もよくないものは必ず死にます。