生理痛の場合、全体との関連をまず考えなければいけません。
つまり、全身状態と関連があるか、ないかというところです。
本症例の場合、寒いと生理痛は、よりひどくなります、暖めても耐えがたい痛みが
出現しています。また、初潮時よりかわらず、ひどい生理痛であるということより、
身体全体の調子にリンクするというよりも、生理に関してだけ症状が強く、全身との
関連が少ないのではないかと考えられます。
全身の体調にリンクするのであれば、調子のよいときは好転し、悪いときは悪化す
るという要素があってもいいのですが、それがみあたりません。
ダンスなど途中で息切れしたり、マラソンも真っ青になってしまうということです
が、遠距離の通学を幼少時よりしているのに皆勤だったり、風邪をひいたことがな
かったりというところで、素体の強さをうかがわせるものも多くあります。
これは、ダンスなどの息切れやマラソンで真っ青になるのを、本人が肝気を張って
頑張りすぎてしまうためのものとして考えたほうがよさそうです。ダンスなどもと
ことん、マラソンも手を抜くことなく、”頑張る”というご本人の性格が、頑張りす
ぎてしまい、息切れするほど、真っ青になるほどまで運動してしまうということなの
でしょう。
便通と生理痛が特徴的です。
便通がコロコロ便で3-4日に一度しかでないが苦しくないというのは、コロコロ
便という肝欝を思わせる状態ではあっても、本人の身体にさほど負担として感じられ
ていないということかと考えられます。10日ぐらいでないとお腹が脹って苦しいと
いうのは、通常のことであり、ここまで便通がつかないということもあるというこ
と、便が常に出切らない感じがあるということにより、脾胃の動きが緩慢であるとは
考えられるのではないかと思います。
食欲があり、食事がおいしく、食後にお腹が張ることもないことより、極端な脾胃
の虚ではないにしろ、肝気のある程度の欝滞によって(本人が苦しいとは思わない程
度)便が出きらない感じに常になったり、10日ぐらいでないこともある、足三里が
やや虚、太白が左右とも虚というのは、肝気によって脾気が抑えられている可能性を
示すものではないかと考えられます。
舌下静脈の怒脹は、さほどひどくないのに、生理の血の状態は、親指大の塊、小指
大の塊、粘った膜、膿血、などがあるという、ひどいお血の状態をしめしています。
刺すような日常生活が出来なくなるほどの痛みが毎回あるというのは、生理の血の
下への疏通が、かなり阻まれていると考えられるのではないかと思います。
本症例の患者さんの場合、全身状態を考えた場合、脾虚肝欝の体質を持っていると
は考えられます。
肝気の横逆によって、脾気が抑えられ、コロコロ便などの肝欝状態になってしまって
いたり、また、全体に、肝気をはって頑張って勉強にスポーツに過ごされているとい
う生活スタイルから伺えます。しかし、それだけではなく、脾虚自体もあると考えら
れるということです。また、生活スタイル全般が、少し素体以上に無理をしているの
かなとは思われますが、若さによって、その無理に身体もついていけている感じがし
ます。
生理の問題は、肝欝を起こしやすい素体が深く関連していることは充分考えられま
す。しかしながら、全体の問題と生理痛の問題がそれほどリンクしていないので、全
身の気滞血瘀として捉えるよりも、下焦に限定して、下への血の疏通が極端に悪くなっているとして、主訴の問題を取り扱ってもいいのではないかと思います。
つまり、本症例では、生理の問題を、全身の気滞血瘀としてとらえず、下
焦の気滞血瘀として限定して治療してもいいのではないかということです。
ご本人が、便通などももう少し手を入れて直して行きたいということであれば、全
体的に肝気の疏通を図るという視点を持つこともよいでしょう。しかしながら、とり
あえず生理痛をということであれば(本症例では、受診機会の制約などから、まず、
日常生活に障りのある生理痛の改善を求めていらっしゃいますので)、全身との関連
が少ないということで、局所の気滞血瘀を解消を狙って治療していくという
ことでよいと考えています。
弁証:下焦を中心とした気滞血瘀
治法:活血化お、理気止痛
☆その後の経過☆