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疲れやすいの弁証論治のはじめに戻ります




疲れやすい弁証論治  6/7


本症例の主訴は疲れ易い、ということです。

患者さんの素体の経過をみると、20代までは、緊張状態で下痢をしたり、胃の調 子が悪かったり、非常に懸命に働いては年単位で休むという感じです。肝脾不和を思 わせる状態でありますが、休むことなどで、それなりに問題が深くならずに過ごせて いたのかもしれません。

それが30代に入り、新しい職場に移ったころより、生理2,3日目の頭痛が出る など問題が深くなっていくことを思わせる状態となり、介護なども重なり、心身とも に忙しい状態から、つねにどこかが具合が悪いという状態になり、主訴の発症となっ ています。その後、仕事をやめたため、主訴については好転、そのほかの症状(人の 話臥聞きづらい、照明を暗いと感じる、飛蚊症、白髪、抜け毛)は変わらずとなって います。

主訴が強くなったため、仕事をやめ、運動などをとりいれたため、疲れ易いねばり がきかないという状態は好転していっています。しかし、ご本人としては、このころ (仕事をやめてから)始めた、節食絶食で、主訴発症状態から続いていた、白髪、脱 毛がひどくなっています(これは節食、絶食をやめたら、節食絶食をする以前の状態 に回復)、人の話などがなんとなく聞き取りずらく感じたり、いつもの照明が 暗いと感じたり、飛蚊症などの腎気の虚損を思わせる症状は、休息や運動だけでは解決しない状態になっていることがわかります。







現時点で、寒熱の両方の症状があげられていますが、熱の症状は排卵期から生理前に限定されています。生理の前後の変化ということは、本症例の主訴である疲れ易いということを解き明かす中心になることだと思います。

そこで、この生理を中心として考えてみましょう。

生理前の一週間が特につかれ、イライラや憂うつ、悲観的な気分、突然に眠くな ることなどがあります。

これは、生理前という肝気が張ってくるときに、それを支える腎気が不足している がために、張ろうとしている肝気を支えきれていないことを示しています。土台(腎 気)がしっかりしていないために、肝の陰陽のバランスが崩れ、肝陽が、暴走してい るのではと考えられます(肝陽亢進)。

生理前に、口苦や口渇がでるのも、肝陽亢進による熱(肝の相火)が心をついて いるがためではないかとも思われます。また、憂うつや悲観的な気分は肝気の横逆で 脾気が損傷され、精神状態まで影響を与えているもの、突然眠たくなってしまうの は、肝気の横逆を支えきれなくなったために、突然の疲れとして出てきているものと しても、考えられます。

そして生理が始まると、気持ちが落ち着き、前向きな気持ちになる。生理から排 卵日まで一番調子がよいとあります。また、30代のころより生理2,3日目に頭 痛がするとあります。

生理前の気欝がとれたために、全体的には体が楽になるのではないかと考えられま す。しかしながら、もともと生理の期間がすっきり終わらず長いというこ とや、生理開始後に頭痛が出てくるということから、脾気の弱さや気虚、腎虚が裏に 隠れているのではないかと思わせます。

肝脾不和気味ではあったけど、それなりに裏の充実があったので、30代までは問 題なく経過したということでしょう。それが30代になり、生活環境の変化や、精神 面の負担などによって、虚損が大きくなっていったのではないかと思われます。







現時点で、睡眠の状態で、寝つきがよい、眠りが深い、便通もそれなりにあるとい うのは、気の出入状態はさほど悪くないということを示しているのだろうと思われま す。また、食欲があり、空腹感があり、食事がおいしいということから、脾気もそれ なりに健やかさを保っているのではないかと思われます。しかしながら、翌朝に疲れ が残るというのは、裏の充実が足りない、また食事をしてもすぐにお腹がすくという ことは、胃熱がこもっているのではないかとも考えられます。

便が軟便で熱がこもっている感じがしたり、便器に付着するようなことがあった り、季肋部の湿痰が見えること、足三里の虚、舌の胖嫩などにより、仕事などの精神 的ストレスがなくなり、暢びやかさを保っているものの、脾気に問題があり、長期間 にわたる間食や肝気の抑欝により、内生の邪としての湿痰を生じている可能性が考え られます。







生理がくると楽、その前がつらいということは、それほど、この方にとって肝気が 張った状態が辛いということを思わせます。そして30代より、欝気がおちて楽な時 期に頭痛が出てくるということより。この時期に重なった、精神的な無理や肉体的な 無理(遠距離介護など)で、疲労が深くなり、肝気の収まりの悪さをしめすような頭 痛が出現しているのではないかと思われます。

仕事をやめたり、運動したりして、脾気が少しづつ回復基調にあるものの、白髪が めだってきた、人の話などがなんとなく聞き取りずらく感じたり、いつもの照明が暗 いと感じたりする。飛蚊症がでているなどということも、腎気の深い虚損を思わせま す。

30代の初めから少しづつ虚損されていた腎気が、30代半ばの無理によって、か なり虚損が深くなり、問題が明確化していってしまったのではないかと考えられま す。







そして長期間にわたる肝脾不和の状態により、お血も形成されているのではないか と、生理の状態を考えると可能性が考えられます。しかしながら、お血の問題は、 30代半ばから出てきた、主訴の問題を深くしている問題とは直接的に影響があるも のではないと思われますので、ここでは中心の問題とはしません。この問題は、脾気 を救うこと、腎気を救うことで二次的に解決される問題であろうと思います。

本症例の場合、脾気の弱りというのは、素体の問題であり、今回の発症の土台では ありますが、直接的な原因は過度の労倦が腎気の問題に及んだことではないかと考え られます。







肝気の実を示すものが、生理前を中心におこり、熱をあらわすものが多くありま す。しかしながら、舌が少し白く胖嫩、潤、淡白なのです。これは、いくら症状とし て熱を思わせるものがあったとしても、中心の問題ではないことをしめしています。 この寒えは脾気の弱さとも考えられますし、また発症のときに風邪をひいていたとい うこと、また仕事の環境がとても寒かったということにより、長期にわたる寒冷の影 響により、陽虚をしめしたのではないかと考えられるところです。

素体として肝脾不和の状態の上に、仕事に介護に無理な状態を続けたこと、間食な どにより、脾気をいためつけ、湿痰を形成させたのではと思わせること、長期にわた る寒冷の影響で陽気が奪われていることなどが、現時点での問題につながるのではな いかと考えられます。







この患者さんは、非常に肝気を張って、生活なさっている方だと思います。もとも と、頑張る、しっかりするというライフスタイルをお持ちなのだと思います。こう いった肝気の張りは、しっかりとした腎気の支えを必要とします。腎気の支えが足り なくなったとき、主訴の発症となったと考えられます。

漢方薬の服用状況をみると、かなり器が小さく、敏感であることがわかります。脾 気の器が小さいがために、受け取りきれないという感じになっています。また、寒え の症状を呈していると思われる状態なのに、暖める漢方薬を飲むと、内熱のような状 態を引き起こして来ています。

これは、長期にわたる肝脾不和の状態により、湿痰や瘀血などの内生の邪 があるのではと考えられます。

この内生の邪の実が、本症例の場合、すんなりと腎気が建てられない理由ともなっ てきていると思います。

しかしながら、この内生の邪の問題は、少しづつ脾気をたて、腎気をたてるうち に、自然と落としていくという道筋を私は考えたいと思います。







主訴発症後、仕事をやめ、食生活に気を配ったり、運動をすることにより、脾気が 回復し、主訴が軽くなっていっています。しかしながら、虚損された腎気が救われて いないので、愁訴が残り、問題が解決しきれなくなっています。

今後は、腎気の虚損を中心に解決していくべきではないかと思います。

腎の陽気を救い、寒冷を払う。脾気を救いお血を落としていく。また、ご自 身のあり方として、肝気を立てすぎない生活、気持ちのありようというのも、少し考 慮されてもいいのかもしれません。

張りすぎた肝気は腎気を食みます。このことは、よく考えておかなければなりませ ん。ご自身のライフスタイルを考え直す時期なのかもしれません。

少しずつ少しずつ、器を広げ、邪を落とし、脾気を救い、腎気をたて、肝気が暢び やかに張れる様な身体になれるようにと思います。







◇弁証:腎虚肝欝

◇論治:益気補腎、疏肝解欝




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