ある症例をご紹介します。
10歳の女の子。整形外科で側湾になっているので要注意と言われたということと、座るとお尻の骨が当たって痛いという主訴で来院されました。
整形外科で確定診断がついているし、どちらもまあ、整形外科的な問題であり成長期のお子さんの問題なので、鍼灸院で取り扱うって普通は思わないだろうなあと思いました。またこのお母さんの周りの方も『整体に行ったら』と仰ったと。それもまあそう考えがちな症例だなあと苦笑いしました。
背骨の問題
お身体を拝見すると確かに側湾がある。しかし骨そのものを触れると勢いがあり充実感を感じました。側湾がある場合、その周囲の弱いところを補うということをしていくのですが、これはいじり回す必要はないなあと思いました。
座るとお尻が痛い問題
座ると痛いと仰るお尻をよく見ると座骨の先が当たって痛いのでした。整形外科の先生は『放っておいてよい』とのこと。つまり神経が圧迫されているとか、何か他の病気があるということではなく、骨がそこに物理的に当たるから痛いんだなと。
整形外科で鑑別疾患がキチンとなされているので、私も施術に取り組むことにしました。鑑別診断はとても重要です。大きな病気も小さなサインから。このサインのうちの手当ては大事です。
お腹を見るとお臍の向きがぐっと上向き、気の上逆があるなあ。そしてうつぶせで背中の筋肉を見ていくと大腸兪というちょうど腸骨の上あたりのラインの経穴が弱い。私の手に感じられる生命力の跳ね返りが弱いんです。
その他、腎兪や次髎といったあたりの位置の問題、そして骨盤そのものの角度をみるといわゆる『そり腰』。大腸兪のところの生命力が弱いので(東洋医学でいうところの腎虚がベースにあると思いました)腰が倒れそり腰になり、座骨の先っぽが座ると当たってしまうのだなと診立てました。
ご自宅での養生治療として、大腸兪中心に温灸を入れてもらうようにお母さんに指導。また、ご本人にそり腰にならない立ち方をお教えしました。
1週間後、まだ痛いんですというので、お子さんご本人に『ちゃんとおうちでお灸してる?』と効くと1回のみ。ダメじゃん~もっとちゃんとやってねと指導し、2週間後。お尻の痛みがだいぶよく、またバスケットボールのシュートが決まるようになったんですとの報告を頂きました。
こうなってくると本人も積極的に治療して欲しがるようになり、右肩上がりにぐっとよくなりました。身体のウイークポイントが補われると形が変わり、動きが変わり、全身状態がよくなるのです。