. .
ステロイドがきつい弁証論治

病因病理:弁証論治  5/5


東洋医学では、腎気というものを、生命力の土台、中心と考えています。 腎を考えるときは、腎陰、腎陽とその性質から二つの方向から考えていきます。 腎という、ひとくくりのものを、二つの角度から眺めているわけです。

本症例の患者さんは、多発性筋炎を発症し、その後すぐにステロイドの服用がは じまり、いまの状態が、多発性筋炎のためか、ステロイドの副作用のためか判然 としないということです。しかしながら、副作用があっても、ステロイドの単純 な減量は多発性筋炎の急激な悪化をもたらす(過去に2度減量による悪化あり) ため、薬剤の減量もならずといったところです。

いま、ご本人の愁訴を眺めてみると、腎の器全体が小さくなり、機能が低下して いることがわかります。集中力の低下、眠りの浅さ、夜間尿などは、腎の器全体 の虚損を物語っているでしょう。そのなかで、とくに、むくみ、命門から督脉の 寒えなどは、腎の虚損の中でも、腎の陽気不足の進行がとくにきついということ をものがたっています。






腎の陽気は、身体全体の土台の陽気です。生命があるということは、灯がともっ ているということに他なりません。この陽気の落っこちは、生命力が小さくなる ということを端的にあらわしています。

腎の陽気不足により、身体を温煦(暖める)ことができなくなり、脾の陽気も落 とし、水をさばくことができなくなり、むくみとなっています。

腎の陽気不足という、明瞭な冷えがありながら、舌は熱をあらわす紅舌の上、食 欲がますという胃熱を思わせる症状や、肝陽の亢進を思わせる肩井の盛り上がり 熱感、耳鳴などがあります。ステロイドという炎症を押させる薬がよく効くとい う病態事態、なんらかの内熱があるのではということを思わせます。この内熱は、 ステロイドによる腎の器の虚損により、腎の陰気が虚し、陰虚陽亢した熱の可能 性。また病態としてもともと腎の虚熱を持ちやすかったのではという可能性が考 えられます。

腎の陰虚による内熱が、

  多発性筋炎という症状を出しこのためにステロイドを服用

  肝陽を亢進させ、耳鳴、目の疲れ、
  肩井の盛りあがりなどの症状を出し、
  肝陽の亢進は胃をつき、胃熱となり食欲を増進させ、
  体重の増加と、なっているのではと考えられます。

腎の陰気は、身体の陰分であり、この不足は、虚熱という内熱をもつことにつな がり、非常にきつい熱症状をともないますが、これは実熱と違い、生命力の虚 (腎気の低下)による熱です。この内熱を刈ること(ステロイドの内服)が、症 状を押さえるということにつながりながら、生命力の陽気(腎の陽気)をも刈っ てしまい、腎気の器を小さくする。腎気の器が小さくなることで、より、腎の陰 虚、腎の陽虚が進行する。結果として、より腎気の器が小さくなる。この悪循環 が、ステロイドの問題点なのでしょう。

腎の陽虚をはらみつつ、腎の陰虚も進む。その結果、最終的には陰と陽とが互い に支えることができなくなって、陰陽の離乖という生命力の危機をもたらす危険 性が差し迫っている状態となっているわけです。






治療方針としては、腎気、とくに、いま傾きの明瞭な腎の陽気をあげることを中 心に考えていくべきでしょう。

腎の陽気が救われることで、水の裁きもよくなり、むくみの改善とつながる可能 性があります。

また、腎虚自体を救うことが、虚熱を納めることにもつながり、症状の軽減、ス テロイドの必要量の減少につながり、ステロイドによる悪循環を少しでも軽くし ていく効果が期待できるでしょう。

ステロイドが恐いといわれるのは、症状をもたらしている火を刈ることが、生命 力そのものである陽気を刈ることにつながってしまうからでしょう。生命力の低下は、悪循環を引き起こす根 源です。薬と共存し悪循環がおこらず、症状を抑えられるようにしていくような 方向性を考えることが、ご本人にとって、大切なことだと私は思います。

体重の増加は、胃熱の亢進による食欲の増加。腎気の低下による排泄力の低下な どがあいまって、右肩上がりの増加となっています。また、もともと脾胃の力が 強いタイプであったため、腎の陽気不足でありながら、脾胃の状態がよく、食べ れてしまうということではないかと思います。

しかしながら、食後に腹満、腹脹があるほど食べてしまうのは、いまのご自身の 脾胃の器の大きさからして、顕らかに食べすぎでありますし、食習慣も体重増加 につながりやすいものとなっています。病気により、体重増加がもたらされてい る部分もありますが、このままの食生活では、脾気を痛め、身体全体の虚損のス ピードを速めるという全体に対する悪影響も考えられます(つまり、現在は脾胃 の状態がそれほど落ち込んでいないので、身体全体の問題が腎気の虚損だけです んでいるが、脾胃まで痛めると非常に複雑な病態と為る可能性を孕んでいるとい うことです)。

また、梅雨時に悪化、季節の変わり目に辛いというのは、脾気がよわりかけて、 全体の問題となりかけていることを語っています。このまま脾胃の気が低下し、 現在の腎気の器の問題に重なって出るようになると、病態としても非常に複雑と 為り、扱いがたくなってきます。ぜひ、食べ過ぎに注意し、脾胃に負担をかけな いような生活を心がけたいものです。






弁証 腎の陰陽両虚(腎陽不足がとくに明瞭)

論治 益気補腎 (腎の陽気を救うことを中心に)

ご本人の課題として 食べ過ぎに注意し、脾胃の負担を軽くする








主訴:問診 1/5

時系列の問診 2/5

切診 3/5

五臓の弁別 4/5

病因病理:論治 5/5






☆☆☆☆ここをクリックすると始めのページにもどれます(⌒_⌒)☆☆☆☆◎◎◎←←←←←はじめのページへ←←←←←◎◎◎☆☆☆☆ここをクリックすると始めのページにもどれます(⌒_⌒)☆☆☆☆

メイルの宛先はこちらです→pxl02541@nifty.ne.jp.お手紙はこちらへ...メイルの宛先はこちらです→pxl02541@nifty.ne.jp.


pxl02541@nifty.ne.jp