. .
患者さんへの提言

病因病理:論治  5/6


主訴は妊娠、出産をきっかけにした体調不良です。

妊娠前には子供ができるまでにやりたい事をしてしまいたいという思いが強かったということも あり、非常に活動的であり、かつ、演劇のために無理なダイエットなどを繰り返したり、 睡眠不足を続けたりという、非常に不規則で不安定な状態で過ごしていらっしゃいます。 やる気やそれに向かう意思(肝気)がとても強く、土台を睡眠不足やダイエットでそこないつつも 全体としてがんばって走り続けていたというのが、妊娠前までの姿でしょう。

妊娠前に生理が大きく乱れつつも無事に妊娠。このとたん、やる気がすべてなくなってしまった というのは、張り詰めていた気がすとんと落ちてしまった以上に、精神的な大きな落ち込みがあったことを 示しています。ただ、妊娠中ということもあり、おとなしくなさっていたことで、そのこと 自体は大きな問題とならなかったのでしょう。妊娠まえからみえはじめた主訴が、気力が すべてなくなった中あらわれてきたというのは、ここにこの方の素体があらわれているとも 考えられます。






妊娠中になぜつわりがおこるのかを考えると、子供という陽気の塊をかかえ、その熱が胃をつき、 上逆するということだと思います。この方の場合、それが非常に強く現われています。これは、 妊娠前に脾気が非常に弱っていたことと、生理が間遠くなっていたことが示すとおり、中心に向かう力と しての腎気も弱っていたためではないかと思われます。このため、つわりが出産までつづくわけです。これにより、 ゆっくり横になって休むこともできず、胃熱のため胸焼けをおこしたり、心熱をつくといった状態にもなっていったので はないかと思います。






妊娠中は、おとなしくしていたこともあり、お子さんも無事に3200グラムで安産なさって います。しかしながら、出産後2ヶ月ほどして、家に戻り自分で家事などをはじめたとたん、 決定的に主訴が出現しています。

出産は、女性にとって大きな傾きの時期です。大きく気血を虚損する中で、瘀なるものを 落とし、身体が立ち直ることができることもあります。

この方の場合、妊娠前、妊娠中に重ねた虚損の中にありましたが、出産により、周りの人の喜びや応援に答え がんばって気持ちを盛り立てるということをしてしまいました。虚損した土台の上に、肝気をぐっと はって、気持ちを奮い立たせたわけです。しかしながら、ご自宅に戻り、ふっと気が抜けたとたん、 はっきりと素体が出てしまうという状況になってしまったわけです。これがはっきりとした主訴の 出現ということになります。

つまり、妊娠前、妊娠中と重ねた脾気、腎気、心気の虚損の上に、出産による大きな気血両虚。 その上に、肝気を奮い立たせたことによる、肝陽の亢進、腎陰の虚損、心熱の亢進ということが 一気におこったのではないかと思います。






出産後の状況をみると、月経の周期が整い、母乳がよくでて、塊などがなくなっています。お血がおち、 腎気はがんばっていることがわかります。しかしながら、出産前にはなかった、月経前のイライラ、辛さなどは腎気が 虚損しているために気が高揚してくる時期(高温期)を支えることが非常につらくなっている為におこっていることです。 これは出産前よりも、腎気がかなり虚損している状態であることがわかると思います。

女性の身体をみていくと、不思議なことに、腎気を虚損し、身体全体の体調までが悪化したときに、 連動して、生理などの周期が長くなったり、排卵を起こさなくなったりするタイプと、逆に、とにかく頑張って 排卵をおこし、高温期を維持し、月経をおこしてくるようなタイプがいらっしゃいます。

この患者さんは、妊娠、出産前はあきらかに前者であり、出産により、後者の状態にかわっていると思います。 身体が虚損していても(もしかしたら、人間としては逆に、虚損しているからことなのかもしれません)しっかり と生殖のリズムを優先させて身体は動いています。

これほどまでに身体が虚損しても、生殖のリズムをしっかり持っているというときには、一番崩れてしまっているものを 応援する必要があります。

食事をとったあとに、全身状況がくっと悪化する、食後の腹脹、胸焼け、胃の苦しさ、便通の状況、足三里、 太白の状況からも脾気の虚損が明白です。そして、心の状態も、心熱もかなりこもっているような口内炎、数脉、 結代もあり、それでいて、心兪は大きく虚損し、心は虚熱をもっているような状態を感じます。つまり、脾の陰虚が 心の熱につながる、心脾両虚の状態を思わせます。精神的な辛さがかなり前面にでていたのも、この心脾の関係が あったためではないかと思われます。

こういった状況下、子供のために、腎気の主導の下、衝任脉がフル稼働し、母乳をせっせと出し、子育てを しています。より本人の生命力が弱る原因になっています。こういう状況では、健やかな脾気の下大いに食べて、 しっかり母乳を出すということが望まれるわけですが、健やかな脾気がないために、直接的にご本人の虚損とい うことにつながってしまい、体調の回復が遅れたのだと思います。






食事後1時間で運転をして緊張していらしたときには、脉がかなり数脉の上に結代が強く 動悸を感じるという段階にまで達し、非常に不安定な脉状となっていました。食事、運転ということだけで、 全身が疲れたことをあらわす結代がつよくなり、心熱がこもったように動悸まででてくる不安定な 脉状になるということは、食物を受け取る脾胃の器が本当に小さくなり、すぐに心をついてしまうような 状態になっていることをあらわしていると思われます。

まず、脾気を、陰気を中心にしてたて、心熱を納めていきます。そして脾胃の器が大きくなることにより、 全身状況が好転し、腎気もより健やかになれば、月経前の症状も自然と収まってくるのではないかと思います。






まず今の段階としては、

弁証:脾気虚損、心陰虚
論治:脾気を建て、心陰を補う。








主訴 1/6

問診 2/6

切診 3/6

五臓の弁別 4/6

病因病理:論治 5/6

患者さんへの提言 6/6






☆☆☆☆ここをクリックすると始めのページにもどれます(⌒_⌒)☆☆☆☆◎◎◎←←←←←はじめのページへ←←←←←◎◎◎☆☆☆☆ここをクリックすると始めのページにもどれます(⌒_⌒)☆☆☆☆

メイルの宛先はこちらです→pxl02541@nifty.ne.jp.お手紙はこちらへ...メイルの宛先はこちらです→pxl02541@nifty.ne.jp.


pxl02541@nifty.ne.jp