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ふらつき弁証論治のはじめに戻ります

論治  6/6



いままで、時系列にそって、患者さんの病歴を鑑み、四診をまとめ、歴代の医療家が考え実践してきた事をもとに弁病として考え、本症例について、いろいろな角度から、浮き彫りにしてくるという作業をしてきました。

論治というのは、そういった全体を踏まえ、弁証という現時点での症状の分類と、病歴という時間の流れの交差の中で、治療手段として取りうるもの(鍼灸や、漢方薬)を、どのように施術し、何を服用するかによって、どうすれば主訴に対して、もっとも短時間で、効果的な治療となるかを考えていく為になされています。

つまり、患者さんの、いままでの状態(素体)を考え、現時点の状態を鑑み、どういったことをすれば最善なのかを考え、今後はどうなっていくのかということを、予想するという作業です。







そして、いま、中心と考えていくのは、

1、どこから治療していくのが効果的であるかという観点からの証の決定。

患者さんは、沢山の症状や状態をもっています。このなかから、何を中心にすべきかということは、非常に大切な問題です。特に、本症例のように、素体がかなり弱い場合は、大切な作業であると思われます。

2、実際に施術していく中からの、予後の判定及び、証の変化についてのある程度の予測。

治療中も、沢山の症状や状態の変化をみるでしょう。(また、本症例の場合、特に器が小さいので、敏感に反応しがちです)それにたいして、訴えをそのまま治療方針の変更にしてよいものと、旁らにおいておかなければならないものに分ける作業が必要です。

3、上記に基づいて効果判定をどのように行うのか、また、実際の状況に対応してどのように施術に変化をつけるかということに関するある程度の予測ができいなければなりません。







主訴の発症経過をみていくと、素体の問題と、発症に至った原因を鑑別することが出来ます。素体の弱い患者さんの場合には、特に大切な観点です。

素体としては、肝脾腎の虚がみれます。

その素体の上に、夏気ということが重なることによって、主訴が発症しています。興味深いことに、この主訴の発症するさらに一年前の同時期に、心身の疲労困憊より、不食、体重減少となり、入院、薬物治療を受けていることです。

この状態が十分に回復したかどうか、あるいは他の要素が加わったかどうかが次の鑑別点となります。







まず、この状態から(入院後)十分回復したかどうかということですが、病名が、自律神経失調症という曖昧なものであることや、西洋医学の病院に入院していて、根本的な(弱っている臓腑を特定しそれを補うような)治療がなされていないと予測されることから考えて、症状の緩解は主として休養によってもたらされたものにすぎないと予測されます。

そして、そのような、中途半端な状態にありながら、多少の改善があったということで、ふたたび、夜勤を含むハードな勤務についたことにより、心身を疲労させる要因はさらに増加したものと考えられます。これらは、体重の変化などをみても、顕らかではないかと思います。

そのような基礎の上に本症例の、主訴の発症があったわけです。







それは、前年と同時期の夏期、前年と同様の【不食から体重減少し、少気となり、疲労困憊】に加えて、ふらつき(ふわふわ、フラフラ感)、動悸、頻脉をともなうものであったことから考えると、全身状態としてはさらに悪化していると把えることができます。

一昨年の発症と昨年の主訴の発症とが関連しているということは、原因が似ていること、症状が似ており、昨年の主訴の発症は、一昨年の発症状況の増悪したものであるとみられることにより明らかです。

以上により、素体の問題と主訴の発症原因を鑑別する地点は、一昨年の症状の発症を起点にしていると考えることができます。







一昨年の状態をみてみると、これは明確に脾虚が中心となっており、その運化作用の低下とともに肺気不宣による少気をおこしているとみることができます。

これに対して、昨年の主訴の発症状況からみてみると、上記に加えて、心陰虚を予測される憎悪時焦臭・火照り感等をともなうふらつき(ふわふわ、フラフラ感)、動悸、頻脉ということであります。

このことは、

 一昨年 「脾虚を中心とした肺気不宣」の状態

 発症時 「脾虚を中心とした心陰虚」の状態

と、状態が悪化したとみるのが妥当ではないかと思われるのです。

このように考えていますので、主訴に対する治療としては、この脾虚を、少なくとも、一昨年以前の脾虚の状態にまで救っていかなければならないということがあげられます。

そのうえ、状態の悪化として、傍証として出ている心陰虚の状態から早期に離脱させなければならないということにもなります。







頭暈の原因としてはさまざまなものが歴代考えられてきたということは、【弁病】においても考えてきたことですが、本症例の病歴から考えると、これは、心脾虚による、頭暈であると考えられます。これに対する推薦処方は、《中医症状鑑別診断学》によると帰脾湯です。

鍼灸処方としては神門―足三里が相当します。また、より臓腑に近い心兪、肺兪に対しての直接の施術、また脾胃を中心とする、中脘なども施術の対象として考えられます。

これら、処方が効果を発揮しているかどうかの判定は、心兪肺兪の虚の状態の変化を追うということが考えられます。







治療によってまず最初に回復して来ると予測されるものは、憎悪時の焦臭と火照り感であり、さらには動気と頻脉でありましょう。

次に頭暈そのものの発症間隔が伸びるあるいは消失するということであると思います。

この時点で、帰脾湯を終了し、補脾気を中心とした補中益気湯に移行するのが妥当と考えます。

症状が消失しても、脾胃を補うことを中心として、腎気を補養するという作業は実はこの患者さんの場合必須であろうということは、これまでの考察経過を読めば明らかであると思われます。







お血の問題は、現在それによる訴えはないが、気が充実してくると、邪気として悪さをしてくる可能性もあるでしょう。そのような状況になった時に、やはり、脾胃を補うことを中心にしながら逐次対処していく必要が出てくるかもしれません。補気が行われる過程で、月経の状態が変化していき、それにつれて、お血の状態も変化していく可能性もあるので注目が必要です。

若い女性ですから、今後の、妊娠出産ということを考えるなら、この患者さんの腎気を急いで充実させなければならないということは言うまでもありません。それには、脾胃の状態を良くしていくという継続的な治療がもっとも効果を生むはずだと、私は思います。

患者さんの生活環境としては、この患者さんの生命力に対して労働の負荷が過重になりすぎないように、考えて戴きたいと思います。それによって、事態はさらに悪化する可能性もあるからです。







素体の上に、いろいろな悪化状態が重なってきている病態だと思われます。さらに悪化させないということは、人生においても、非常に大切なことであると思うのです。

日ごろの養生として、脾胃を養うという観点から、過食は避け、適度の運動を行うということは効果的だと思います。ただし、疲労が残るほどの過度の運動は決しておこなってはいけません。







頭暈ということにおいて、水の捌きを良くするということを発想の中心とすることも出来ますが、根本原因に対する対処として肺脾腎三焦を充実させるという問題に帰することができ、この患者さんの場合のように脾気を充実させることを第一目標として掲げるのであれば、その目的も到達されると考えられます。

ただ、動悸頻脉という問題を、水邪傷心と考えることができないことは、増悪と同時に現われる焦臭・身体全体の火照りによって明らかである点、注意が必要だと思われます。




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