主訴である、ふらつき(ふわふわ、フラフラ感)、動悸、頻脉ということから考えると、虚実両方が考えられる。
しかし、症状の悪化、好転状況から考えると、肝気の横逆、肝気の上衝による熱の
ためおこった頭暈ではなく、脾腎の虚によって、虚陽上浮しておこった頭暈、ある
いは、気虚によって清陽がめぐらなくなったための、頭暈ではないかと予想され
る。
問題は、虚陽上浮であるか、気虚であるかということの鑑別ですね。
このときに、こげ臭い匂いというのは、虚陽上浮ではないかと疑わせるものですね。そして心熱がこもり虚熱となっている。ただ、これの否定ポイントは、口渇、口苦がないことです。また、舌にももっと強く熱の状態があらわれていいのではないかと思います。
気虚による、清陽がめぐらないという前提をたてれば、どうしてこげ臭い匂いと症状の悪化があるのかということですね。気虚であるということは、全身の器が小さいということで、労働や精神的な疲れによる熱が出やすいということもあります。その熱によるこげ臭さだとすると、気虚によるものとできそうですね。しかしながら、こういったときは、体温の上昇程度になり、全身の火照りにはなるけど、こげ臭い匂いにまでは至らないのではないのかという考察もあります。
肝の問題が、肝の陽気、肝血という陰陽共に弱いということは、睡眠状態や気虚の項目でも取り上げたように、この症例の特徴的な問題です。中心となる支えである肝がよわいので、体全体がしっかりしてこないということがあります。頑張って無理をすると、大きく崩れてしまうのも、このあたりの問題とリンクします。
これを今一歩すすめて考えれば、脾腎の器が弱いために、根が張れず、肝気が枝を十分に張れていない状態がこの素体の弱さだということもできるでしょう。生育歴をみても脾腎の器の弱さの上に、肝気さえも上手く育たなかったということが容易に理解できます。
このことは、また治療に対して、敏感に反応するといった状態を引き起こす要因と考えられます。ただ、これは、素体として抱えている問題であるので、今回の中心とする問題ではないでしょう。状態が安定してから、のちのち、徐々に充実させていくようにするということになるでしょう。
また、今回、お血の問題も、同様に考えます。月経の状態からもお血があることは認められますが、主訴の症状とのリンクがなく、素体のなかの、主訴発症以前からの問題ととれます。ですので、今回手をつける問題ではなく、状態が安定してのちに、取り掛かる問題であると考えるべきでしょう。
☆論治☆