AMHの難しさ。

「先生、AMHが0.2でした。私もう無理なのでしょうか?」

39歳の女性からの訴えでした。

とあるクリニックにて、36歳の時に強い誘発をうけ、17個もの卵が採れるも結局妊娠せず、
ちょっといやになってしまい、3年ほどお休み。その後、低刺激のクリニックにて治療を再開したものの、FSHも高く採卵にならないという状況で当院に来院。

年齢が39歳ですので、IVF-ET(体外受精ー胚移植)などの治療を勧めながら
鍼灸治療をしていきましょうと治療を始めた矢先の出来事です。

…AMHって

さて、最近卵巣年齢検査(AMH:Anti-Mullerian hormone)という言葉をよく聞きます。
これはざっくばらんにいえば、卵巣がどれぐらいの年齢なのかを知る検査です。
前胞状卵胞から出されるAMH(アンチミュラー管ホルモン)を測定することにより
発育卵胞の数を知るわけです。発育卵胞の数が多ければ若い、少なければ若くないという
ことになります。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣の中の前胞状卵胞から分泌されるホルモン です。
これを測定することにより、これから発育する卵胞の数を知るわけです。
発育卵胞の数が多ければ若い、少なければ高年齢ということになります。
実年齢よりも、若かったり、高年齢だったり、なかなか厳しい数字が出ることが多く
ネット上でも、30代前半で1.5だとか、2.2だとか、卵巣年齢の方が実年齢よりも10歳以上
年上のこともあるようですね。

不妊治療において年齢は重要な要素です。
しかしながら、同じ年齢でも、状況はかなり違うケースが多々あります。
30代後半であっても、FSHは一桁であり、低刺激でも3つ、4つと胚盤胞まで成長する卵が
出来る人もいらっしゃいますし、同じ年齢でも、変性卵、空砲が続きとれても1個だけという
状況の方もいらっしゃいます。

AMHは、重度の内膜症、卵巣嚢腫手術後など、卵巣の血流が悪いのではないかと
思われる人が高いような印象があります。落ちてしまった卵巣予備能そのものを改善させるのは難しいかもしれませんが、血流を改善させ、いま出来ようとしている卵胞をより良い状態にすることはできます。また、30代後半ながら、AMHは高く卵巣年齢は20代と判定された方で、何度採卵しても、良い卵にならないというケースもあるようです。

AMHが良いということは、卵巣予備能力はあるということですが、それがイコール質の良い卵があるということではないということ。つまり卵巣予備能力があまりなくても質の良い卵がある場合もあるし、予備能力はたくさんあっても質の良い卵がないというケースもあるということですね。

妊娠には卵の質がとても大事ですので、あまりAMHに振り回されてもしょうがないのかもしれませんね。

AMHを測定した方ではありませんでしたが、以前に30代前半ながら、1,2個しか卵胞もみえず、いつも変性卵や空砲ばかり。上手く採卵でき受精したときでも、グレードはギリギリのものしか育たず、戻しても妊娠することもなく、胚盤胞にも一度も育ったことのない方がいらっしゃいました。
その方に、身体がより健やかになり、血流がよくなるよう、東洋医学的な診立てを行い、週に2度の鍼灸治療と自宅でのお灸をおこない、半年後に再度IVF-ET(体外受精ー胚移植)に挑戦されました。すると2個誘発でき、無事に成熟卵が採卵でき、グレード1の初期胚を移植して妊娠、出産。もう一つの卵も胚盤胞まで育ち凍結保存されています。「グレードのよい卵なんてはじめて!」とおっしゃっていたのが印象的です。彼女のAMHもし変性卵ばかりのころと、今回の採卵時、違っているのかもしれませんし、同じかもしれません。ただ、身体の状態がよくなることで、採卵できる卵の状態が変わったことは確実です。

厳しい状態の方でも、骨盤内の血流をよくして、ご自身の卵巣の残る力をしっかり発揮できるように応援しています。