卵子の質の改善は、食事と「滋養を取り込む力」からはじまる
卵子の質が悪い――多くの方がぶつかる大きな壁
卵子の質の問題は、不妊治療において大きなハードルとなります。近年は、血液検査から栄養状態を細かく調べ、不足した栄養素をサプリで補う「栄養療法クリニック」に通われる方も増えています。
私の臨床でも、このようなクリニックで検査とサプリの処方を繰り返し、
「数値はいくつか改善したけれど、全体的な体調がなかなか良くならない」
「むしろサプリで胃が重くなる」
といった声を多く耳にしてきました。
不足している栄養素をピンポイントで摂取すること自体は理にかなっています。しかしながら、それがその方にとって本来の“滋養”となっていないケースが少なくありません。
栄養は「足りない成分」だけではなく、“取り込む力”が重要
血液検査では「何が不足しているか」が明確に見えます。しかし、不妊治療が難航する方ほど、足りない栄養素を補っても身体の反応が追いつかないことが多くあります。
つまり、問題は“栄養素そのもの”ではなく、
身体が滋養として取り込む能力が落ちている
という点にあります。
食品には、主成分以外にも多様な栄養が含まれている
食品成分表を見ると、ひとつの食材に多くの栄養が含まれていることがわかります。例えば、ほうれん草には有名なカロテンやビタミンCだけでなく、タンパク質、脂肪酸、食物繊維、そしてE、K、B1、B2、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、鉄、カルシウム、マグネシウムなど、微量ながら実に多彩な栄養が含まれています。
「ただの葉物」と思われがちなほうれん草ですらこの状態です。だからこそ、栄養は“食事”から摂るほうが圧倒的にコスパが良いのです。取り込み能力さえ整えば、普段の食事だけで必要な栄養は十分確保できます。
食事改善には「食事バランスガイド」が最も確実
当院では、まず食事記録をつけていただき、厚生労働省の食事バランスガイドに沿って食事内容をカウントしていただきます。これは、私の臨床経験の中で、もっとも確実に生命力を底上げする方法です。
さらに栄養を深めたい場合でも、まずはこのガイドが提唱する最低限の食事量を満たしていただくことを優先しています。ここを満たすだけで、追加の栄養介入が必要なくなるケースがほとんどです。
体表観察が示す「食の状態」あなたに必要なもの
私の鍼灸臨床では、皮膚から多くの情報を読み取ります。肌の質感は、五臓の状態だけでなく、外界との関わり――生活習慣、仕事、環境、そして食事――の影響を如実に映し出します。
「食」を改善すると、皮膚の質感が明らかに変化します。潤い、張り、温度、弾力といった反応は、滋養がしっかり身体の中に入っているサインです。これは、まさに生命力が高まった証として直感的に感じられます。
東洋医学では、人体はまるごと一つの存在として働きます。経穴が並ぶ皮膚は、その生命力を最も正直に表す場所なのです。





