不妊・妊娠と鍼灸」カテゴリーアーカイブ

ふたりめ不妊:産後からの不調、体外受精が上手く行かない。43歳妊娠、出産。

ふたりめ不妊は、悩ましい不妊です。

ひとり、無事に出産になっているから、妊娠出来るんじゃないかというあせり。
そして、ステップアップした高度生殖医療ならばということでやってみても、
なかなか前に進まない。

年齢要因があがる、あせり。
そんなとき、もう少し立ち止まって、あなたに何が必要なのか、かんがえてみてはいかがでしょうか?

☆ご相談:40歳です、不妊治療が前にすすまず、悩んでいます。

40歳です、不妊治療がなかなか前に進まず悩んでいます。

第一子もとても苦労しました。
28歳の時に卵巣嚢腫が茎捻転をおこし、右の卵巣を摘出手術しています。
30歳から妊活を始めましたが、なかなか前に進まず、体外受精、胚移植を5回行い、やっと36歳にて第一子を出産することができました。
妊娠中からからむくみや便秘がひどくなりました。
産後も体調がとても悪化してしまいました。

39歳から第二子の妊活をしていますが、不妊治療をはじめると便秘が悪化しより体調不良となってしまっています。

不妊治療を再開した当初は体重が60㌔でしたが、現在は67㌔。不妊治療をすると体調が悪くなり、便秘が始まり、食欲不振、体重増加となってしまいます。
身体全体が重く、冷たい感じがします。
すでに体外受精を2回行いましたが、妊娠出来ませんでした。

もう一人、子供を産み、育てたいと思っています。
またアレルギー鼻炎がひどくつらいです、また便秘もつらいです。
どうしたらいいでしょうか?

☆ご相談にお答えして〜あせらず身体の力をあげて、前にすすみましょう。

第二子の妊活を前に進めたいというご相談ですね。
第一子の妊娠を30歳からご希望なさって、数々の努力を重ね36歳にてご出産。本当に頭が下がるような努力を続けていらっしゃったのですね。

現在、第二子への妊活、少しでもお力になれればと思います。

☆お身体の状態について

もともと身体がむくみがちで、便秘などもあり、いらないものをすっきりと排泄する力が不足気味の素体であったと思います。

妊娠出産は、身体に大きな負担となります。
健康状態がよければ、妊娠、出産の大きな気血の虚損をともなう波にも、生理的な範囲として乗り切り、生命力が充実する方向ですすみます。

しかしながら、元々の素体が虚損気味であれば、より力を失う方向になり、悪循環となります。

とくに、身体の底力である腎の力に負担となることによって、

上焦:百会熱感、心下つまり
中焦:中脘(CV12)の固さ、臍周の冷え盛り上がり、脾兪(BL20)のゆるみ
下焦:板のような下腹、少腹急結、細絡、骨盤の硬さ、次髎(BL32)の冷え

上焦から、強い気逆
中焦から脾胃の動きの悪さ
下焦から進むオ血、腎虚の状態

という状態になっています。
つまり、産後に補われずにいた 脾腎の弱さに乗じて全身に、強い気の鬱滞が生じ、身体の上部には熱感を伴う気の滞りが生じているという状態です。

身体の底力である、脾腎の力をつけ、全身の気の巡りの状態をよくしていくことが、不妊治療を一歩前に進めることになると思います。

☆不妊治療について、4つのアドバイス

1:第一子が妊娠、出産出来ているのだから、基本的な妊娠する力はある。
2:体外受精の卵のグレードの悪さは、体調を整えることを優先し、採卵を急がない。
3:病院について、あわないようならば転院も考える。
4:採卵は年齢要因もあるので、ある程度いそぐ。ただ移植は全体の体調をあげることを優先する。

第一子が妊娠出来ているのですから、妊娠する力は十分にあるカップルだと思います。40歳の現在でも、採卵ができているのですから、焦らず前にすすみましょう。

年齢要因がありますので、治療を急ぐのは大切です。ただ、現状の子宮(女子胞)の力が落ち、子宮(女子胞)卵巣に生命力(気血の流れ、血流)が届いていない状況では採卵を繰り返しても仕方がありません。

凍結胚ができるまでは、身体作りと採卵を並行し、凍結胚が出来たら、身体作りに集中し、全身の生命力をあげることが、結果的に妊娠、出産につながる近道だと思います。

病院については、現在のところ変更するお気持ちがないということですので、採卵ができているのでこのままでいいと思います。しかしながら、ある程度で転院も視野に入れる柔軟性をもっておくほうが、時間を上手に使うことにつながる可能性は高いと思います。

☆東洋医学的な診立て

・弁証
脾腎両虚 肝鬱瘀血
・論治
益気補腎 益気補脾 疏肝理気
・治療方針
まず第一に、産後から落ちたままになっている脾腎の力をあげ、悪循環で生じている肝鬱を納める。また上焦の熱感がつよければ必要に応じて疏肝理気する。

瘀血については、下焦を中心に温養することで動く範囲で対処する。
督脉上に瘀血所見が多いので、下焦を温養し督脉に陽気を導き通していく。

 

☆治療経過〜出産まで

40歳 鍼灸治療後2ヶ月
1)背中のイヤな感じが取れている
2)冷えが少し楽
3)いつもある秋からの肌荒れがなく、高い美容液を買わずにすんでいる。
治療後半年 採卵周期ー今回は卵の状態がとても良く数も多く見えていたが
排卵済み、人工授精をした。
採卵周期にはいるものの、日程があわず出来ず。
治療後1年 病院をかえる。
採卵周期 3つのうち2つがグレード1で凍結
10ヶ月後 移植 妊娠できず
18ヶ月後 HR周期ー排卵がおこって移植できず。
20ヶ月後  HR周期にて 移植ー妊娠
無事に女児を出産 おめでとうございます。

 

途中に上のお子さんの行事やイベントなどもあり、少し間があいていますが、凍結胚は待ってくれるということを信じて、あせらず前に進めることができたと思います。

しっかりとお迎えの準備をし、無事に二人目の出産となったこと、よかったなあと思います。
子育て、楽しんで頑張ってくださいね!

 

41歳:子宮内膜症、チョコレート嚢胞で採卵が進まない、妊活が進まない。0110

40歳の時に、赤ちゃんが欲しいと言うことで来院されました。

人生って長いようで短い。
あっという間に時間がたちます。
妊活においては、時間は本当に貴重。

そして、35才から40才という時間も、
女性の人生の中でいろんなことがあり、ただただ
妊活だけに的を絞るわけにはいかないこともあります。

34歳から赤ちゃんを望んでいらっしゃいますが、いろいろなことがあり、
子宮内膜症や、婦人科的な状況も進行してしまい、治療が前に進んでいない状況でした。

身体作りをし、病院を選び、前に向かって進まれ、無事に41歳にて
元気なベビちゃんのお母さんになられました。

それでは、一緒に症例から考えていきましょう。
WEBの弁証論治はこちら

☆ご相談:40才です、不妊治療が前に進みません

34歳で結婚し、1年後から妊娠希望です。
36歳から婦人科にて不妊治療を始めました。
その後37歳頃から仕事の場処が変わったりして
精神的にも肉体的にも大きな負担で、風邪を引きやすく喘息っぽくなってきてしまいました。

39歳のときに自然妊娠しましたが、残念ながら化学流産してしまいました。
その後生理周期が長くなったり、短くなったりと生理が乱れてしまいました。

不妊専門のクリニックにかわり、検査もしましたが、左側卵巣に大きなチョコレート嚢胞があると指摘され、子宮内膜症もかなりひどいといわれています。

人工授精を5回し、体外受精を始めた方がいいと言われ採卵の周期に入っています。
もう40才になってしまいました。

どうしたら妊娠、出産出来るのでしょうか?

 

☆ご相談にお答えして:前に進みましょう!

いままで、いろいろとお仕事の忙しい中、がんばっていらっしゃいますね。
1度自然妊娠されていることから、人工授精を何度か挑戦されたのは
もっともなことだと思います。

カップル的な大きな要因がないわけですから、充分自然妊娠に再挑戦というのは
意味ある選択だったと思います。

しかしながら、年齢要因もあり、体外受精の選択をなさったのも、当然の
選択です。
迷わず前に進んでいきましょう。

☆☆東洋医学的な診立て

・弁証
・論治
・治療方針
腎虚 風邪の内陥
疎風散寒 益気補腎

まず第一に風邪の内陥を取り去り、全身への負担をとる。
腎気の底上げをし、妊娠し継続できるようにしていく。

 

 

☆☆不妊治療へのアドバイス

39歳のときに、自然妊娠なさっていますので、妊娠する力は充分あると思われますが、
流産をきっかけに身体の状態が、東洋医学で考えるところの生命の土台である腎の力を中心に一段低下してしまっています。このため生理周期が短くなったり生理の量が減ったりというように妊娠する力が落ちています。また、遠距離通勤をなさった当時の無理によっても身体の力が一段とおちているようです。

お身体は遠距離通勤のときと、化学流産のときと、2回大きな変動があり、かなり負担が
かかった状態になっています。

1:迷わず体外受精などの高度生殖医療に進む
2:チョコレート嚢胞、子宮内膜症の状態によっては転院の可能性も考える
3:身体の力を明確におとしているので、腹くくって立て直す、時間を無駄にしない
4:規則正しい生活、睡眠、休養

1、2について、年齢要因的に、体外受精の選択は正しいと思います。
しかしながらチョコレート嚢胞があるので治療が前に進まない場合は病院選びの再考をするつもりで、時間を無駄にしないようにした方がいいと思います。

3,4について、
身体をガクンと悪くしている明確な時期が2回あります。これは妊娠がしにくくなることにつながっていますし、素体に強く負担をかける妊娠が、再度の大きな体調不良につながる可能性を示唆しています。妊娠ー出産の時期は女性にとって虚損病の始まりにもなる可能性を秘めた時期です。

上手にこの時期を乗り切り、女性の素体のリズムの範囲で消耗し、回復していく波に乗れるような身体にしていくことが、妊娠を考える上で大事であるばかりではなく、家族をもち、お子さんとのこれからを考えるために本当にだいじなのです。

妊娠はゴールではなくはじまりです、一緒に頑張って行きましょう。

 

☆治療経過、妊娠、出産まで

初診 以降週に1度の頻度で鍼灸治療
初診:足三里(ST36)、三陰交(SP6)、右陰陵泉(SP9)、左外関(TE5)、 左合谷(LI4) 関元(CV4)
風門(BL12)、肺兪(お灸、温灸)
三焦兪(BL22) 右胆兪(BL19) 中膂兪(BL29)、気海兪(BL24)
臍に温灸

自宅施灸指示:足三里(ST36)、三陰交(SP6)、陰陵泉(SP9)、左外関(TE5)、左合谷(LI4)、臍、関元(CV4)

1ヶ月後、IVF チョコレート嚢胞のところしか卵胞育たず見送り
2ヶ月後、IVF 卵巣が腫れてしまい見送り

採卵の周期には入れているので、転院をアドバイスする。
6ヶ月後、採卵ー凍結胚ができた。病院から年齢要因もあり、子宮内膜症の進行も早いので、採卵を続けてみることをアドバイスされた。
7、8,9ヶ月後それぞれ採卵してみるも、よい卵とならず凍結出来ず。
10ヶ月後、採卵ー凍結胚盤砲が出来た。
11ヶ月後、採卵ー凍結胚盤砲が出来た。

凍結胚が3つできたので、移植周期へ
12ヶ月後、13ヶ月後、移植周期、ホルモン値があがらず見送り
14ヶ月後、移植、妊娠、無事に不妊クリニック卒業
妊娠〜10ヶ月後:3100㌘越えの元気な赤ちゃんを出産

 

☆無事の出産を迎えられて

年齢要因や、婦人科疾患、忙しいお仕事と課題がいくつもありましたが、
しっかりとご自身の人生の中で、今するべき事に焦点をあて、
前に進み、無事に赤ちゃんと出会えて本当によかったなと思います。

イラスト ツボ セルフケア

 

年齢要因と、婦人科疾患は、どんどん進み、妊活を大きく阻む壁となります。

それでも、身体作りをし、病院をしっかり選び、前に向かって進む。
不妊治療は不確実です、これをすれば絶対にということはありません。
でも、出来ることをしっかりとやってみる。期間限定の挑戦、応援してます!

 

質問にお答えして:卵子の質はよくなるのでしょうか?

このご質問を初めていただいた時に、『卵子の質をあげると言うことは、生命力そのもの、その人の生命の質をあげるということ。可能なんだろうけど、かなり困難ではないのだろうか。そう簡単に『はい、出来ます』とはいえない』と思いました。

 

そして、この方と二人三脚し、鍼灸治療をし、生活の改善をするなかで、
何度も、
何度もやった体外受精での卵の質という壁を乗り越え、
無事に第一子、そして残った凍結胚で第二子をご出産になりました。

ときおり、年賀状などでお二人のお子さんの成長を拝見させていただきますが、
頼もしく、かわいく、ヤンチャに成長なさっていて、
あのときのこの患者さんの真摯な思いが通じ、
人生を大きく変えた症例だと私の胸に深く刻まれています。

そして、その後、多くの患者さん達がやはり

『卵の質をあげることはできる、人生の扉を開け前に進むことは出来る』と私に教えてくださりながら、家族と過ごす人生をあゆまれています。

 

☆体外受精をしていて卵の質という課題に引っかかったら

子供が欲しいと思っている方に届けたい。

『卵の質が悪い』ということで、体外受精が前に進んでいかないのならば、
ただただ、同じ事を繰り返さないでください。

注射の種類を変えた、
薬を変えてみた、
病院を変えた、
漢方を飲んだ。
サプリも飲んだ

それだけの足し算では、あなたの身体の質を上げることにつながっていないケースを
私は多く見ています。

当院は鍼灸院です。提供できる施術は鍼灸です。
しかしながら単に鍼灸をすればいいのではない、
卵の質をあげるには、トータル的なアドバイスをしながら、
その人に必要なこと、
やめた方が良いこと、
ポイントとして絞ることを
東洋医学的な四診を通じた不妊カウンセリングを行い、
『何をすべきか、何をやめるべきか』を明確にしていたら進む必要があると
つよく、
つよく、
強く感じています。

 

☆☆ある培養師さんが説明なさっていたこと

ある培養師さんが患者さんに『今回の体外受精で出来た卵の質がよくないですねえ・・』という説明の中、卵の質ということを説明してくださいました。

排卵誘発剤で改善できるのは、
「卵の成熟度(を上げること)」
です。成熟度があがれば、受精率が高くなります。つまり未成熟の卵では受精しにくいということです。

 この説明はとてもわかりやすく、私も大きく頷いてしまいました。

☆☆卵の質がわるいまま、体外受精の回数を使ってしまわないで!

 

保険適応の場合回数制限があります。
40才以下の方であれば、3回、
40才以上の方であれば1回、

採卵して卵の質が悪いというところで引っかかったら、若い方であれば3回、40代以上であれば1回で、続けて採卵せずに、卵の質を上げる努力を織り込みましょう。

 

☆☆年齢要因は大事、
でも、卵の質が改善できないままでは結局前に進まない!

確かに年齢要因は大事です。
決定的な要因となることがおおいです。
しかしながら、卵の質が改善できないままでは、結局前にすすまず、
保険適応の回数などすぐに終了してしまいます。

 

☆☆卵の質を改善するための東洋医学的不妊カウンセリング

卵の質で引っかかったら、東洋医学的な不妊カウンセリングを受け、何をすべきかと明確にして不妊治療を前に進めてください。

年齢要因は本当にだいじです。
あなたの貴重な時間を無駄にしないために、
まず取り組むべき事は、あなたの身体の状態を知ることだと思います。

 

 

2)妊娠初期を乗り切り、繰り返す流産から出産を。30代後半での繰り返す流産  0127

流産についての概要をおはなしさせていただきました。

概要の1)はこちら→1)『普通』にすごす『Stay home』が教えてくれた繰り返す流産を切り抜ける方法

ポイントは2つ血流と、子宮(女子胞)の不安定さです。

さて、具体的な症例からお話ししていきましょう

☆☆ご相談:心拍確認が出来ない流産を2回もしています。

 

 

最初の妊娠は、妊娠希望をしてから1年後やっと授かったと思い、病院へ行き胎嚢がみえました。

しかしながら8週になっても心拍が見えずそのまま出血がはじまってしまいました。

二回目は半年後の37歳の時、このときも同じように心拍が見えないまま出血ー流産となってしまいました。

流産後1ヶ月たつのに、出血がすっきり止まりません。

妊娠もなかなかしにくく、はじめの妊娠は1年ほどたってやっとできた妊娠。そして今回も半年たってやっと妊娠したのに、どちらも心拍確認ができず流産と言うことで本当にがっかりしています。

もしかしたら不育症なのかと悩みますが、病院の先生は問題ないとおっしゃります。

どうしたらいいのでしょうか?

また、小学校のときから、手足にしもやけができ、昔から足先がとても冷えます。頭痛も結構ひどく、肩こりになりやすいです。いつもなんとなく残尿感があります。

疲労感が強く辛いことが多いです。月経周期が長めで生理が遅れることはよくあります。

☆いままでの経過、時系列

・高校時代から左側頭部頭痛
・36歳妊娠希望ー1年後妊娠−8wで流産
・37歳 流産から半年後妊娠ー心拍見えず流産
・流産後1ヶ月たってもなかなか出血が止まらない

 

☆私からのお返事
:身体の余力がをつけることで妊娠を継続させていきましょう

なかなか妊娠しにくいなか、せっかく妊娠できたのに、2回も連続して8wでの流産、本当に辛かったでしょう、残念でしたね。

また流産後の出血も止まらないというのは身体がだいぶ弱ってしまっているのかとも思います。

残念でしたね。

次の妊娠では一緒に頑張って是非出産まで到達できるようにしていきたいですね。

☆お身体を拝見して

お身体を拝見すると、もともとのベースとなる生命力(腎気)が弱めであると思います。

そのために冷えがきつかったり、残尿感があったり、月経周期が長めでつかれやすかったりしていると思います。

腎気は全身の生命を下支えする縁の下の底力を発揮してくれる存在です。そしてこの腎気が、子宮(女子胞)を養い、赤ちゃんをしっかりと受け止め受容できる身体となるのです。

 

☆子宮(女子胞)だけではなく、全身状態の体力不足、余力不足が子宮への養い不足となっている

イラスト

子宮(女子胞)というのは、赤ちゃんの孵卵器です。その孵卵器の性能がちょっとだけ不安定ならば、孵卵器そのものをしっかりと養い守る必要があります。Uさんのお身体は、孵卵器そのものを守る全身状態が、気虚気味(パワー不足)であることが問題です。全身が気虚気味パワー不足であるので、孵卵器も不安定になり流産となってしまうわけです。妊娠は、女性にとって身体の余力でおこなわれます。余力がないと、どうしても不安定な子宮(女子胞)となるわけです。身体全体に余裕をもち、子宮(女子胞)の生命力が安定するようにしっかりとがんばっていきましょう。また強いストレスも子宮(女子胞)に負担となります。ストレスも鍼灸で調整していきましょうね。

・弁証 腎虚を中心とした気陰肝鬱 風邪の内陥 女子胞の力不足
・論治 益気補腎 疎風散寒 温養女子胞
・治療方針 腎気を中心に気虚気味の素体をたてなおし、パワー不足となっている女子胞を暖め養う。また素体に負担となっている風邪の内陥を払うことを急務とする。

 

☆治療経過、妊娠、出産まで。

治療経過

週に1度の通院、毎日の指導に基づいた自宅施灸

初診
左外関(TE5)左陽池(TE4)、左公孫(SP4)、足三里(ST36)、三陰交、下脘(CV10)、関元(CV4)、
胃兪(BL21)、左腎兪(BL23) 中膂兪(BL29)
セルフケア:下脘(CV10)、関元(CV4)、左外関(TE5)、足三里(ST36)、三陰交。腎兪(BL23)、胃兪(BL21)、中膂兪(BL29)

 

1ヶ月後、今回の生理もだらだらはつづいている
3ヶ月後、生理のだらだらが減ってきた
4ヶ月後、妊娠成立

妊娠 手入れ 棒灸

 

4ヶ月後に妊娠。

妊娠中も週に1,2度のペースで鍼灸治療を継続

8w つわりがきつい→つわり治療

19w 喉に違和感があり、空気が上がる感じで食事が通りづらい

23wから逆子ー27wまで。28wで治る

30w やっと妊娠前から体重が4キロ増えることが出来た

 →間食も小さな食事として、食事回数を増やすように指導

30w 再び逆子に

31w 治ってきた感じ、お腹が突き上げて苦しい。

33w 赤ちゃんが小さめと言われた

34w 頚管長短め、ウテメリン処方された

35w 頚管長大丈夫と言われた

37w 2600㌘はあると言われて安心

38w 1㎝頚管が開いた

39w 無事に3000㌘弱の赤ちゃんを出産

おめでとうございます。

☆あとがき、無事の出産よかったですねえ。

流産というのは、辛い出来事ですね。しかも、やっとの思いで妊娠して2回も連続と言うこと。本当に辛かったと思います。

お話しを聞いていて、ご本人の辛さが痛いほど伝わってきました。

妊娠や妊娠継続について、色々な情報をお探しになっていらっしゃるようでしたが、なかなかご本人にぴたっとくる情報がないようでした。そのこともご本人の迷いや悩みを大きくされていました。

インターネットでの検索は一般論や、様々な情報は提供されますが、実際のご本人にとって

必要な情報であるのかは判断が難しいところですね。

今回のケースは、不安定な子宮(女子胞)の状態と全身のパワー不足がリンクしていました。つまり、子宮や流産のことだけを考えるのではなく全身の生命力から考えることが大事なケースであったわけです。

妊娠中も一筋縄ではいかず、いろいろなことがおこりました。もともとストレス状態になりやすいという状況があり、気が登りやすい方の妊娠でしたのでつわりもきつかったです。妊娠中は赤ちゃんを守るために、普通の状態でも気が上向きに傾きます。その上向きのベクトルに加え、ご自身の性質もくわわるとなかなか大変になります。この上向きの気を引き下ろすことは流産につながってしまいますので妊娠中の身体の手入れとしては禁じ手です。つわりは辛くとも、つわりを中心に考えずに、やはりご自身の生命力をつけることをしていくことが体調管理のコツなのです。

妊娠中も色々な事がありましたが、無事に充分な大きさの赤ちゃんにめぐりあえたこと、ご本人のコツコツと重ねられた努力とご家族の協力のたまものだと思います。おめでとうございます。

イラスト ビッグママ

1)『普通』にすごす『Stay home』が教えてくれた繰り返す流産を切り抜ける方法。 0127

流産は、本当に辛いですね。

妊娠したのかなと思い、喜んだのはつかのま、出血が始まりそのままということもありますし、

病院でしっかりと胎嚢が確認できたのに、続く検診では残念ながら心拍が見えずということもあります。

妊娠の初期は、”自然の淘汰”の時期であるのは事実です。

そういった卵ちゃん側の理由で、残念ながらということがあるのもいたしかたないところです。

そして、病院でどうして流産になったのでしょうか?という質問をすると、

だいたいこのような『卵のせいでしょう、自然な淘汰ですよ。仕方がないですね』というお返事になることが多いと思います。

これは納得の出来る説明ではあると思います。
あたりまえの自然な淘汰は、生殖においては必ずあります。

私は沢山の妊娠に付き添わせていただいて、この『あたりまえの自然な淘汰』の課題もふまえながら、”もしかしてこの方は少し流産しやすいタイプではないだろうか”ということが、わかるようになってきました。そしてこのポイントは、年齢要因が高い方の場合は非常に大きな課題となります。

なぜならば、妊娠そのものが成立しにくい状況で、高度生殖医療などをおこない、やっと成立した妊娠が、卵の課題はなくとも、なかなか継続出来ないとなると、妊娠そのものの難しさに、継続の難しさも加わり、妊娠の継続がむずかしくなってしまうからです。

そして、この課題は血流と、子宮(女子胞)の不安定さです。

☆東洋医学的な発想の子宮(女子胞)

子宮(女子胞)というのは、赤ちゃんを養い育てる孵卵器です。

 

その孵卵器の性能がちょっとだけパワー不足であったり、不安定な方がいらっしゃります。

 

そして、パワー不足であっても、不安定であっても、ある一定の時期(着床から妊娠12週まで)を

乗り切ることが出来れば、問題なく経過できます。

妊娠初期が不安定といわれる理由は、確かに胎児側の理由で淘汰があるからですね。

そしてもう一つは、孵卵器である子宮側が血流が悪かったり、筋腫や内膜の状態などで不安定だったりしてしまうのかと思います。

イラスト 子宮

妊娠初期にこのちょっと不安定な孵卵器を安定させ、しっかりと大きな胎盤を作ることができれば、この妊娠初期を切り抜けられます。

そしてこの孵卵器である子宮(女子胞)は、身体の余力が養っています。

女性は妊娠していても、していなくても健康に過ごすことができます。そして妊娠していれば全身の生命力の余力をもって子宮(女子胞)をやしなうことになるのです。

全身状態が、余力のない気虚気味(パワー不足)であれば、孵卵器である子宮(女子胞)を充分に養うことができず、どうしても不安定な子宮(女子胞)となるわけです。

身体全体に余裕をもち、子宮(女子胞)の生命力が安定するようにしていくことが大切なのです。

また強いストレスも子宮(女子胞)に負担となります。ストレスも鍼灸やメンタルケアでの調整が効果的です。

詳しくは12)東洋医学の体力貯金を参照のこと

☆☆いまどきの病院指導

長らく不妊治療にお付き合いしていると、産婦人科事情も変化しているなと思って眺めています。

それは多分、しっかりしたデータや根拠に基づいて、変化しているのかなと思います。
これはあたりまえのことなんだなとは、理解します。でも、統計上の話しや大多数の話しであり、個別具体的なケースになれば違うことも多いのではないのかなと疑問もわきます。

今は病院で妊娠したら、『普通にしていていいですよ』と言われることが鉄板だと思います。

たぶん、普通でいいんだと思います。
そして私は疑問があります。
普通ってどういう状態?と。

☆☆『普通にしていていいですよ』という妊娠の初期

普通というのは、その人の普通。

毎日忙しく立ち回り、忙しく動いている人にとってはそれが普通

毎日、睡眠不足で、ほとんど立ちっぱなしの人にとってはそれが普通

毎日、朝の9時から座り仕事が続き、夜の8時過ぎまで残業する。それが普通の人。

”特別なことをしなくていいんですよ” というのが、この『普通にしていていいですよ』という

言葉の裏返しだと思います。

しかしながら、人によって普通が違う。

妊娠初期の望ましき普通がわからないですよね。

☆☆出歩かない、『Stay home』の緊急事態宣言が教えてくれた『普通の効用』

2020年の4月は緊急事態宣言でしたね。
出歩かない、人と接触しない、引きこもる
多くの人が急にそんな生活を強いられました。

その中にちょうど妊娠の初期を迎えられた方がおふたりいらっしゃりました。

お二人とも、何度も初期流産を経験している方でした。
お仕事がハードで、妊娠、出産をご希望なさるものの、妊娠の初期の段階の安静が
どうしても取れない方でした。

病院からも『普通にしていていい』という指導がなされ、
ご自身の日常である普通にすごす妊娠初期で流産をしてしまい、

『お母さんのせいではないですよ、自然な淘汰でしょう』という説明がくり返されていました。

その中の緊急事態宣言。
このときの『普通の生活』は、電車に乗って通勤しない、会議がない、仕事で出歩くことがない、

『Stay home』家にとどまる普通の生活でした。

ハードなお仕事が『普通』だったお二人は、お二人にとっていままでないような『普通』で『Stay home』をすごされました。

そして、この『Stay home』の普通が、いままでの安静にはできないご自身の『普通』を過ごしていたお二人に妊娠の継続をもたらし、無事に妊娠初期を切り抜け、ご出産にいたりました。

 

☆☆ときどき垣間見ていた、ドクターの安静指示 『Stay home』診断書、心拍確認まで入院

緊急事態宣言での『普通』が流産を繰り返す方の妊娠を継続させ出産へ導きました。

実は私は過去に、ドクターが同じ事をなさっているのをかいまみてきました。
いまでは、そんな指導もみません。ただ、あの時期、過去にその指導をみていて、
『あーこういう指示をなさるのか』と興味深く拝見していました。
つまり、ドクター側でも、『普通』が『普通』ではなく、ぐっと安静生活の『普通』が
妊娠の継続に役立つことがあるのをご存じだったのかと思います。

 

☆☆診断書による安静

お一人のドクターは『診断書』でStay homeを指示していました。

私の複数の患者さんが、今まで行っていたクリニックではなかった指示として
妊娠が成立したら、『診断書』をいただき、会社に提出し、無事に妊娠初期を切り抜けるという状況が作られていました。

この状況は私が患者さんを通じて知っている範囲では1年ぐらい続いていたように思います。

私の勝手な想像ですが、やはり『普通』が『普通』ではなく、この指示が効果的な人が一定数いたのかと思います。だから出していた診断書なのでしょう。

☆☆ 『厳格な安静指示と入院』による安静

 

患者さんから、こんな風に指導されましたと言われて見せていただいた安静指示リスト。細かくどういう風に安静にするのかが具体的に羅列されていました。

コピーを取っておけばよかった(^_^;)。走るな、自転車に乗るな、重いものを持つな、車で遠出するななどなどがあったと思います。そして高度生殖医療が介入した妊娠の人には、妊娠判定が陽性がでてから、心拍が確認できるまで入院指示となっていました。

体外受精が広まってきた初期の頃の話しで、症例数も少なかったから出来たことなのかとも思いますが、入院という安静が効いた方も多かったのかなと思います。女性の場合、自宅だと安静がなかなか難しいですからね。

 

☆☆ご相談:心拍確認が出来ない流産を2回もしています。

話しがだいぶ長くなってしまいました。ここからはページを変えてお話ししていきますね。